TEXT BY CHIKAYO TASHIRO
ダークヒーローの痛快劇。ブロマンスにも注目!
『悪魔判事』
すごいタイトルですが、国民参加型のライブショー法廷という奇抜な設定の下で繰り広げられるダークヒーローの活躍を描いた法廷ドラマです。
2年におよぶ疫病の大流行が収まった後の韓国という、まるでコロナ後を思わせる時代背景。そこに、韓国では史上初となる、国民が裁判の行方を見守りながら直接有罪か無罪かに投票できるという参加型の公開裁判が始まることになります。
その裁判長として法廷に立つことになったのが、チソン演じるカン・ヨハン判事。このヨハン判事のやることが結構えぐいし、よからぬ噂も多いので、果たしていい人なのか、悪魔なのか、終始謎めいた存在感でぐいぐいとドラマを引っ張っていきます。
このヨハンとタッグを組む若手裁判官が、ブラックなヨハン判事とは対照的に温かく人好きのする青年で、ヨハンの人間性に疑問を抱き、正体を探りながらもチームメンバーとして働いていくという構図。
キレイごとでは成敗できないと骨身に染みているからブラックにことを運ぼうとする悪魔判事と、まっとうな正義感をもつ清廉な若手判事。この2人の、お互いに相手を信じられるのかどうなのかという境界線をさまよいながらも、とってもブロマンスが感じられるところも大きな見どころです。
醜悪な権力者たちがうようよ出てきますが、そんな奴らに国民の支持を味方にして鉄槌を下していくさまがとっても痛快です。
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チンピラの弟が、エリート判事の兄になりかわり……
『親愛なる判事様』
ユン・シユンが、エリート判事とチンピラの一人二役に挑戦した法廷ドラマです。優秀な判事の兄と前科五犯のチンピラという、双子なのに正反対の人生を歩んでいるスホとガンホ。
でもある時、弟のガンホは追っ手から逃れるために、失踪した兄に成り代わり、にわか判事になりすまします。ほんのいっときの隠れ蓑になればよかったはずなのに、どんどん逃げられなくなってしまい、挙げ句、いくつも裁判をすることに。
こうして不良判事が誕生してしまうんです。でもこのガンホ判事はチンピラだけにふるまいも破天荒で常識が通らなくて、財閥が弁護士と検事と裁判官にわいろを渡して適当なところで手打ちにするはずだった事件の判決も次々とひっくり返していくので、小気味いいったらありません。この人よく判事のまねごとできるなと突っ込みを入れたくなりますが、そこは前科五犯なので裁判は何度も経験済みという実践体験がものをいうわけです。
最近の韓国社会をにぎわせた事件を彷彿させる内容があちこちに出てきますが、毎回、こういう判決であってほしいという願いがこのドラマの判決文に込められているので、荘厳な感動を覚えます。
その一方で、失踪した兄のスホはどうなるのか、そもそもなぜ拉致されたのか、ガンホはいつ身分がバレてしまうのか、司法研修院生の純粋なヒロインとの仲はどうなるのか?と興味はつきません。
ユン・シユンのクールなエリートっぷりと熱い血潮が流れてる不良男の演じ分けも合わせて楽しめます。
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若き判事たちの心の成長がまぶしい
『ハンムラビ法廷~初恋はツンデレ判事⁉~』
あたかもラブコメか?というタイトルになっていますが、テイスト的には、感動のヒューマンドラマにラブストーリーが加わっているという感じの作品です。
裁判って、真ん中に座る主席判事と、その両側に座る右陪席、左陪席という3人の判事がチームを組んで行うのですが、左と右の若き判事たちの心の成長と恋の行方とともに、一つの事件にどのように審判を下すのか、その苦悩と葛藤の過程が描かれていて感動させられます。
右と左の判事を務めるのが、現実主義のちょっとシニカルな青年判事と、この青年の初恋相手の熱血判事なのですが、青年のヒロインに対する在り方が素敵でした。ヒロインが使命感に燃えるタイプで、お年寄りに同情したり弱い者の味方になったりヒューマニストなのですが、思い込みが強すぎて感情的になり、自分が正義と信じたことに突っ走ってしまうんですよね。そんな彼女に、この彼がブレーキをかけてあげるのです。
「君が強硬に唱えれば唱えるほど、僕は異議を唱えます。ほかの側面がないかどうか、見過ごしてないか探ってみます。十分な証拠があるかを見極められるのが判事の仕事だから」と言って、彼女の危なっかしい情熱に手を焼きながらも、でもその熱さを尊敬もしているということが毎回伝わってくるのです。
そして様々な事件が登場しますが、常に双方向の意見や事情を見せてくれて、偏った正義感に流されないのが素晴らしいです。物事にも人にも、表で見えている顔とは違う面があるのだということをいろんなエピソードで伝えてくれるので、物事の捉え方を学べるドラマですね。
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