BY T JAPAN

2025年2月28日のソウルを皮切りにスタートしたJ-HOPE のソロ・コンサート『j-hope Tour ‘HOPE ON THE STAGE’ 』。アメリカ、日本、フィリピン、シンガポール、インドネシア、タイ、マカオ、台湾の15都市を巡り、6月13日・14日、高陽市の高陽総合運動場メインスタジアムで完了。全33回で約52.4万人を動員した
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
2025年6月13日夜7時。J-HOPE!J-HOPE!と怒涛のコールに高陽総合運動場メインスタジアが沸き、揺れる。白煙を上げるステージの中央のキューブが赤く染まり、遂にJ-HOPE登場。真紅のコートにサングラス、マイクもきらめく真紅。「What if...」「Pandora's Box」、ポケットからライターを取り出し点火して「Arson」を熱唱、唯一無二の声質とフローで会場のボルテージは端から一気呵成に最高潮へ。歓声のうねりのなか、発光するキューブのエッジを真紅のJ-HOPEが進んでいく。スパンコール刺繍が施されたグローブも真紅。その指先の動きに呼応して、さらに歓声が高波のようにあがり、広がっていく。続いて「STOP」のあと、「ARMY(BTSファンの呼称)!ついにファイナルです!」と笑顔で語りかけるJ-HOPE。この日の高陽市は雨。「雨か汗かわからなくなるほど一緒に楽しましょう!」「でも安全第一ですから」「ファイナルですので、そして6月13日ですので、楽しみましょう!」

ステージで圧倒的な存在感を放つJ-HOPE。2024年10月17日に除隊し、直後から自身の重要な音楽作品の制作に取り組み、このコンサートの準備に注力してきた
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
続いて「MORE」、キューブの頂上に立つJ-HOPE、そのまわりをダンサーたちが囲む。豊かで多彩な声色のラップ、力強いシャウト、躍動。J-HOPEが全神経を集中させながらも、今この瞬間を楽しんでいる様子が見てとれる。そして暗転──。赤い部屋の中のベッドで目を覚ますJ-HOPE。トレイラーが映し出され、2023年4月18日の日付が浮かぶ。画面が切り替わり、粉雪舞う闇のなか、黒いコートに身を包み、23という数字が描かれた箱を抱えて歩くJ-HOPE。再び赤い部屋、ベッドの脇の引き出しを探り、警報が響くなか赤い扉を見つめるJ-HOPE。そしてまた雪が舞う闇、箱を抱えて車に乗り込む。凍てつく道を走りながら、やがて見せる安らかな表情。進行方向を示す標識の文字はSAFETY ZONE──。
映像から再びステージへと繋がり、歓声とともに一転ラフなスタイルでJ-HOPE登場、白いTシャツにベスト、ハーフパンツ、ハットの下にはたなびくタイ、ベージュのブーツ。ルイ・ヴィトンをこれほどまでに軽やかに着こなすおしゃれ番長に感服! バックスクリーンに映し出された街を背に「on the street(solo version)」。ダンサーたちが登場し、ストリートダンスが繰り広げられる光景にJ-HOPEの原点が想起される。

(P)&(C) BIGHIT MUSIC
ルイ・ヴィトンのモノグラムのトランクを手にさげ、再びJ-HOPEが登場。表に白い文字でJ-HOPE、HOPE ON THE STAGE、TOUR、背面には今回のソロツアーで訪れた都市名のグラフティ。トランクから純白のカセットテープが現れると同時に、バックスクリーンも巨大なカセットテープに。「lock / unlock (with benny blanco, Nile Rodgers)」、 J-HOPEとダンサーのニールの息の合ったダンスにスクリーンのビジュアルが融合し、見事。アーティスティックなステージに息を飲む。
そして「i wonder...」。サビの呼応し合う甘いメロディーを、大阪・京セラドームではARMYが歌った。だが! 紛れもないあの甘やかな歌声とともにステージに現れたのは、一昨日に除隊したばかりのJUNG KOOK!会場もオンライン配信のチャットもどよめく。

(P)&(C) BIGHIT MUSIC

(P)&(C) BIGHIT MUSIC
満面の笑みのJ-HOPEのMCに導かれ、JUNG KOOKの「Seven (feat. Latto)」へ。ラップのパートをJ-HOPEが担当し、ふたりで躍るスペシャルなコラボレーションに、ARMYの歓声は高陽の空をも揺らさんばかり。JUNG KOOKがステージをおりたあとは、J-HOPEの「このテンションのまま一緒に踊ってみましょう!JUST DANCE!」の叫びで「Trivia 起 : Just Dance」へ突入。
「J-HOPE!J-HOPE!」のコールが満潮に達するなか、J-HOPEもステージを後にする。暗転し、再びトレイラーが映し出される。──時刻は2時18分。赤い部屋。“Every cloud has a silver lining(※どんな困難やネガティブな状況でも、そこから得られる学びや希望がある)”と書かれた紙を幾度も見つめるJ-HOPE。鍵(刻印はMORE)を見つけ、排気口のようなところにもぐりこみ、ARSONという文字が入ったライターを灯し、シルバーの狭い管の中を這うように進むJ-HOPE。が、たどりついた先は元の赤い部屋。そして粉雪舞う闇。焦燥、憔悴、切迫した心象風景が巧みに描かれる。やがて意を決したように赤い扉を押して白煙のあがる外へ──。
ステージの後半は、まさにこの日リリースされた新曲「Killin' It Girl (feat. GloRilla」でスタート。プロジェクト・マッピングでスタジアム全体が1~10の数字を記した“照準”と化す。黒い衣裳のダンサーたちを従えてセクシーかつ鮮やかなダンスで圧巻のパフォーマンスを放つJ-HOPEは、白いスパンコールのタンクトップに白いパンツ。シルバーのネックレスとカラビナチェーンが揺れてきらめく。「MONA LISA」「Sweet Dreams (feat. Miguel)」と最新3曲が繰り出され、見せる魅せる盛り上がる!
そのあとは「ここからはJ-HOPEのヒストリーを一緒にたどってみましょう!」と、「1 VERSE +Base Line + HANGSANG(Feat. Supreme Boi)」「Airplane」「MIC Drop」「Chicken Noodle Soup (feat. Becky G)」 etc…。雨足が強まるなか花道を駆けめぐり、歌い、パワフルに踊るJ-HOPE。横殴りの雨を全身に受けてなお軽やかに跳躍、優雅に回転。1ミリもぶれることのない体軸、どんな瞬間にも端正で指先まで華麗なダンス。寸分の狂いもないキレのよさと精緻さだが隙がないのとは違い、羽があるかのようにのびやかでしなやか。1点の曇りもないその笑顔に、雨雲の向こうに常にある太陽を連想する。

(P)&(C) BIGHIT MUSIC
J-HOPEはマイクを持ち、明るい表情で語り始めた。「大阪公演で今までの過程を思い出して盛り上がって泣いてしまったんですが」──(6月1日の京セラドームでの最終公演で「今回のツアーは、僕にとって挑戦でもあり夢でもありました。世界中からたくさんの愛情をもらっているんだな、と実感しました。本当にありがとう。(中略)二度と戻らない瞬間だと思って、体がこわれんばかりにやってきました。本当にどの公演も….…本当に死に物狂いでやってきました。本当に大切な公演なので、ここまで頑張ってきました。ARMYの皆さん、本当にありがとうございます」と言って涙をこぼした)──、「今日は6月13日、楽しい日ですよね?」「僕にとってもARMYにとってもそして今日来てくれたメンバーにとってもそうですし」。
ここで会場内にいるRM,V,SUGA,JIMINがスクリーンに映し出され、怒涛の歓声爆発、「BTS!BTS!……」。チャットではARMYたちの「ありがとう~」という言葉が滝のよう。2013年6月13日、BTSはデビューした。世界的躍進を遂げるも、コロナ禍、メンバー全員のソロ活動、そして兵役服務で、“完全体”での活動が待ち望まれていた。
「今日ここにメンバー達が来てくれました。愛してる! みんなにとって特別な日です。 メンバーたちがみんな、軍服務を終えて 帰ってくるタイミングになりました。これからお見せできることが多いでしょう。一生懸命に準備してお見せしますので、楽しみにしていてください。メンバーたちへ、拍手をお願いします。 お疲れ様! 僕がさっき、「HANGSANG」を歌う時、メンバーたちを見ながら歌いました。とても大切な存在で……。彼らがいなかったら僕もいなかったし、皆さんがいなかったらグループも存在しませんでした。いろいろな意味で僕たちはつながっていると思います。本当にありがとうございます。 僕はいつも同じです。 体が動く限り、良いステージをお見せします。 ずっといい音楽をお聞かせしたいと思います。ありがとうございます。」興奮の坩堝のなか、お待ちかねの「I am your HOPE! You are my HOPE! I am J-HOPE!!! 」、そして多幸感あふれる「Hope World」へ──。

箱の中にはあるのは“希望”、そして・・・と考えるのもまた醍醐味
(P)&(C) BIGHIT MUSIC
アンコール・タイム、赤いライブTシャツにデニムで、光を放つ箱を手にJ-HOPE登場。「Spring Day」を歌い始める。2017年のBTSの歌で、大切な人との別れや喪失の深い悲しみ、会いたいという気持ちの募る切なさが、粉雪舞う冬から春への季節の流れに寄せて描かれている。J-HOPEが歌いはじめ、サビでJIN登場。時に手を取り合い、ハグし、熱唱するふたり。この光景に胸も目頭も熱くしたARMYの数は知れない。「We Are Back!」。通奏低音が明確に響き、緻密に張り巡らされた多層の伏線のひとつがピタリと重なり合う。彼らが必死に挑み、守り、全身全霊でつくってきたものを思う。

(P)&(C) BIGHIT MUSIC
とはいえ、ふたりのかけあいは息のあったコントみたいな微笑ましく、ARMY歓喜。JINが新曲「Don't Say You Love Me」を熱唱。そして次の「Jamais Vu」ではJUNG KOOKも登場し、3人の声が美しく響き合い、会場を優しく満たした。

新曲「Don't Say You Love Me」を披露するJIN
(P)&(C) BIGHIT MUSIC

(P)&(C) BIGHIT MUSIC
ラストは「= (Equal sign)」「Future」に続き、J-HOPEのスペシャルアルバム「HOPE ON THE STREET vol.1」より「NEURON(with Gaeko, yoonmirae)」。それぞれの名前が映し出されたキューブに乗ったダンサーをJ-HOPEが紹介していく。ダンサー全員とハイタッチ。ダンサー、そしてダンスへの深いリスペクトを感じる。笑顔でスタジアムを縦横無尽に走りながら時おり上を向くのは、今日は涙をこぼすまいとしてだろうか。
「Hope World」に入る直前、J-HOPEは「TMIですが、今朝起きたら、扁桃腺が腫れていてとても驚きました。ARMYの皆さんに会うんだから、頑張らないといけないなと思ったんですが、本当に痛みも消えますね。それだけARMYの力はすごい!J-HOPEを動かします。愛してます! 本当に」と言っていた。アスリートも凌駕するほどの厳しさで鍛錬を重ね、徹底して自らを律すると評判のJ-HOPEの葛藤はいかにと思うが、降りしきる雨のなかの3時間に及ぶ公演はそんな不調を微塵も感じさせることのないパーフェクトなパフォーマンス、エネルギーに満ちたステージであったことに驚嘆する。
12年前のこの日デビューした7人の少年は、誰も想像し得なかったスターダムへと駆け上り、いまやひとりひとりが超越的存在に。それぞれの放つ音色が倍音となり、これからどんなハーモニーが生み出され、響き渡るのか。皆が楽しみに待っている。