韓流エンタメの第一人者、田代親世さんが、韓国ドラマの魅力を様々な独自の切り口でご紹介。今回は、かつて主流だった“清純可憐”なヒロイン像の変化に注目。近年、存在感を増している“ダークヒロイン”が魅力の作品をセレクト。

TEXT BY CHIKAYO TASHIRO

シン・ヘソンの存在感で魅せる傑作ミステリー
『サラ・キムという女』

 これは、一瞬たりとも目が離せない、スリルと虚飾に満ちた衝撃作です。顔の潰れた無惨な遺体が見つかるところから始まるミステリーですが、もう幕開けからしてゾクゾクします。一体この女は何者なのか……。そこから「サラ・キム」という謎めいた存在が浮かび上がってくるのですが、物語は私たちの予想を遥かに超える、とんでもない方向へと突き進んでいきます!

画像: Netflixシリーズ「サラ・キムという女」独占配信中

Netflixシリーズ「サラ・キムという女」独占配信中

 見ていくうちに、「えっ、これって世の中を丸ごと騙すような、大胆不敵な大博打の話なの⁉」と気づかされるわけですが、そこからの二転三転がもうお見事! わずか8話という疾走感の中に、これでもかと衝撃の展開が詰め込まれていて、一気見必至の面白さです。何より深く考えさせられるのが、「見栄の文化」や「格付け社会」の闇。「ブランドって一体何なんだろう?」という問いが、ずしんと胸に響きます。実態がなくても、噂やキラキラした表面に人々が熱狂し、吸い寄せられていく……。そんな現代社会の空虚さを、皮肉たっぷりに、かつドラマチックに描き出しているのが本当に素晴らしいです。

画像: 主演のシン・ヘソン Netflixシリーズ「サラ・キムという女」独占配信中

主演のシン・ヘソン Netflixシリーズ「サラ・キムという女」独占配信中

 そして主演のシン・ヘソン! 彼女が演じる主人公が名前を変えるたびに、どんどんステージを上げていく、その演技が神がかっています。ブランドというきらびやかな世界を自らの手で作り上げ、それを何が何でも守り抜こうとする執念。その大胆不敵さと、ふとした瞬間に見せる人間の業、怖さ。彼女の圧倒的な存在感があるからこそ、この無謀ともいえる大勝負に説得力が生まれます。さらに、物語を盛り上げるのが刑事役のイ・ジュニョクとの対決シーンです。この2人の、一騎打ちのような、一歩も引かない攻防戦! 互いの腹を探り合い、ギリギリのところで火花を散らす空気感。もう、見ていて心臓がバクバクするほどの緊張感で、ゾクゾクが止まりません! 華やかなファッション業界の裏側に潜む人間の醜さと、美しさへの渇望。「何が本物で、何が偽物なのか?」その境界線が揺らぎ、崩れ去る瞬間を、ぜひ皆さまにも目撃していただきたいです。

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清純派を覆すキム・ユジョンの鬼気迫る演技が圧巻
『親愛なるX』

 こちらは、類まれなる美貌と明晰な頭脳、そして他人を操る冷徹な本性を隠し持つソシオパスのヒロインが、自身の地獄のような不遇な生い立ちを背景に、のし上がっていく姿を描いた、ダークで退廃的な物語です。彼女は俳優として成功していく過程で、表向きは清純な美少女という「完璧な仮面」を被りながら、次々と関わる人々を破滅に追いやるという恐ろしさを持っています。主演を務めるのは、子役時代から活躍し『雲が描いた月明り』などでも知られるキム・ユジョンですが、本作ではこれまでの清純なイメージを覆す驚愕の「悪女」を演じています。闇を抱えたキム・ユジョンのダークな美貌と鬼気迫る演技は底気味悪く、目の見開き具合も怖いし笑顔すら恐ろしさを感じさせる圧巻の凄みで、その変貌ぶりに釘付けです。

画像: 主演のキム・ユジョン ©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved

主演のキム・ユジョン ©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved

 そしてこのドラマの大きな見どころは、ヒロインを取り巻く「超豪華な俳優陣」です。彼女を幼少期から見守り、何があっても守り抜こうとする役のキム・ヨンデ、彼女の手下として汚れ仕事さえ厭わない役のキム・ドフン、男気が仇になり罠にはめられる役のキム・ジフン、そして同じ俳優事務所の人気俳優を演じるファン・イニョプなど、旬の俳優たちが次々と登場します。彼らがヒロインに魅了され、翻弄され、そして壊れていく様子がドラマに厚みを与えています。さらに、物語の終盤にはホン・ジョンヒョンが登場し、彼が演じるキャラクターの狂気を孕んだ演技も、作品の恐怖と緊張感を高める重要な要素となっていて、サイコパス対サイコパスの展開は斬新です。

画像: キム・ユジョン(左)とキム・ヨンデ(右) ©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved

キム・ユジョン(左)とキム・ヨンデ(右) ©2026 Tving & Studio Dragon All Rights Reserved

 作品全体のトーンについては、東野圭吾の『白夜行』やフランスの小説『危険な関係』を彷彿とさせるような、退廃的でシリアスな雰囲気があります。ヒロインの容赦のなさが一貫していて、逆にあっぱれと思えるほど。独特の雰囲気があって目を離せない作品です。

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スエの悪女っぷりが見どころの愛憎復讐劇
『野王~愛と欲望の果て~』

 「これぞ韓流の醍醐味!」と快哉を叫びたくなるような、愛憎復讐劇です。本作は、どん底の貧しさからファーストレディの座を狙う“歴代最強の悪女”と、彼女に全てを捧げながらも裏切られ、復讐の鬼と化す男の壮絶な物語。何といっても見どころは、主演2人の演技合戦です。ヒロインのダヘを演じるスエは、その代名詞でもあった「清純派」をかなぐり捨て、目的のためには手段を選ばない稀代の悪女っぷりがとにかく圧巻。独特の低音ボイスで放たれる冷徹なセリフには、震えるほどの凄みがあり、「腹をくくった女は本当に恐ろしい!」と思わせます。彼女はあまりにもひどい少女時代を過ごしてきているので、一度、野望をいだいてしまうと後戻りができない。表向きは、“天使”と呼ばれるほど美しく清純なのですが、どんどん悪女になっていくので、放送当時は“国民の悪女”と呼ばれたほどです。

画像: ヒロイン役のスエ ©SBS

ヒロイン役のスエ ©SBS

 対するクォン・サンウは、愛する人のためにホストになってまで尽くす献身的な男を熱演。中盤からは殺された双子の兄になりすます一人2役を演じ分け、切なさと怒りが入り混じった復讐劇を見せてくれます。彼の代名詞でもある見事な肉体美、通称“背神(背中の筋肉の神)”も、物語の扇情的な魅力を引き立てています。このドロドロの愛憎劇の中で、一服の清涼剤であり、最も残酷な犠牲者ともいえるのが、東方神起のユンホ演じる御曹司です。ダヘを純粋に愛し、利用されているとも知らずに突き進む姿は、あまりに危うくて母性本能をくすぐられます。高級スーツに身を包み、乗馬やアイスホッケーを嗜む姿はまさに「リアル貴公子」。ベテラン勢の中で、力みの抜けた自然な演技を見せている点にも注目です。

画像: 主演のクォン・サンウ ©SBS

主演のクォン・サンウ ©SBS

 「愛が憎しみに変わる時、人はどこまで残酷になれるのか」。そんな人間の業を、華やかな大統領府の裏側とともに描き出す『野王』。ダヘの悪女伝説と裏切られた男の執念の復讐に、ぜひどっぷりと浸かってみてください。

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田代親世 韓流ナビゲーター 
韓流解説、韓流イベント司会の第一人者。公式サイト「田代親世の韓国エンタメナビゲート」やYoutube「ちかちゃんねる☆韓流本舗」「韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り」などで韓流情報を発信しているほか、会員制のコミュニティ【韓流ライフナビ】を主宰。ツアーやイベントを企画・開催している。


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