BY JOHN ORTVED, PHOTOGRAPH BY RAFAEL RIOS, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

メゾン キツネの共同設立者 兼 クリエイティブ・ディレクターの黒木理也(右)とジルダ・ロアエック。NY・ソーホーにオープンした彼らのブランドのショップにて
「よく聞かれるんだ。『フランス風アイビー・ルックみたいなものを目指しているんですか?』って」と言うのは、メゾン キツネを率いるデュオのひとり、黒木理也(くろき まさや)だ。メゾン キツネはパリ発のファッションブランドであり、ミュージックのレコードレーベルでもある。2017年8月、ソーホーのラファイエット通り248番地に、NY3店舗め(先の2店舗は既にクローズ)となるショップをオープンした。
黒木理也とジルダ・ロアエックが2002年に立ち上げたメゾン キツネは、仕立てのいいオックスフォードシャツ、チルデンニット、ポロシャツなどが有名で、それらのアイテムにはすべてトリコロールカラーのキツネのロゴマークがついている。今シーズンのコレクションでは、ブランドのグローバル展開を鑑みてアメリカの星条旗柄も加わった。メゾン キツネのブティックはほかに、パリ、香港、東京に9店舗ある。
「NYはいつだってせわしない」と黒木理也。「僕らは大騒ぎされる対象にも、流行りの存在にもなりたくない。自分たちらしくいたいのです。ちょっとナイーブすぎるかな」
――この店のいいところは、ちゃんと店らしく見えるところですね。たとえばブティックのことを「ギャラリー」と呼ばせるなど、店とは別の空間のように見せたがるのが最近のトレンドですが、そうしなかった理由は?
僕らは音楽が好き。ファッションも、コーヒーも好きで、それをブランドでもやっています。なぜそれをやっているかって? 顧客のためです。純粋に、100%クリエイター志向、アーティスト志向だと、ときにやりすぎてしまうことがある。そうなると人々はついてきません。僕らの目標は、香港から東京、パリ、そしてNYに至るまで、僕らのブランドの顧客のみなさんに満足してもらうことですから。
――なぜ「キツネ」をアイコンに?
ワニは使われているし、馬もすでに有名なものがある。“じゃあ、キツネは?”というわけです。今シーズンのコレクションでは、キツネのロゴをアメリカの国旗柄にしてみました。いつか、メキシコ国旗柄、イタリア国旗柄、中国の国旗柄にすることもあるかもしれません。パリのブランドではありますが、結局のところ多彩なブランドなのですから。
――秋冬コレクションでイチ押しのアイテムは?
カムフラージュ柄のナイロンジャケット。メゾン キツネはスポーツウェア専門のブランドじゃないけど、僕らはスポーツが大好き。スポーツウェアは日常的に着る服です。カムフラージュ柄は、あらゆるブランドが何らかの形で取り入れています。僕らにはアイコンと言うべきキツネのロゴマークがあるから、それとカムフラージュ柄をリミックスしてみたかったのです。アーティストと契約して、そのリミックスバージョンを公開する感じかな。
――今、売れているのはストリートウェア。その流れに沿った、ストリートウェア的なアイテムをもっとつくりたくはなりませんか?
ストリートウェアとは何か? 僕は、サイズ感、そしてどう着るかの問題だと思っています。じゃあ、ストリートウェアの特徴とは? すごく強いビジュアルをもっていることだ、と僕は思います。だから、必ずしもナイキやオフホワイトでないといけないわけじゃない。コンバースとメゾン キツネの服だっていいわけです。僕らはフーディトップスも、スタジアムジャンパーもつくっています。自分たちがヒップホップだと言うつもりはないけど、ラッパーのフューチャーやジェイ・Zがメゾン キツネの服を着ていることは知っている。だからメゾン キツネはストリートウェアだし、僕らは、すでにその一部になっているんです。