レディー・ガガやリアーナも目をとめた、ファッション界注目の若手が語る服づくりへの想い

BY MERRELL HAMBLETON, PHOTOGRAPHS BY NINA WESTERVELT, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

画像: NYファッションウィークでショーを開催するため、最後の準備に追われるマシュー・アダムス・ドーランとアシスタント

NYファッションウィークでショーを開催するため、最後の準備に追われるマシュー・アダムス・ドーランとアシスタント

 彼の成功の一因は、アメリカンスタイルにおける“高級感とカジュアル感の共存”の本質をはっきり表現していることにあるだろう。彼の服を着るには、一見、自分にあまりフィットしなそうな服をあえて着てみようとする努力が必要になる。「大事なのは、欲しいと思った服を手に入れて、その服を自分らしいものにすること」だという。こうして彼の服はリアーナの完璧なユニフォームとなった。リアーナはこの数年で、ファッションの世界とセレブリティの関係性を刷新する存在になりつつある。

 マシューが最近のコレクションで、明らかにテーラリングを強調している理由のひとつに、彼女の存在がある。「リアーナのためにスーツを作るまで、ちゃんとしたスーツを作ったことがなかったんだ」。彼が言うのは、リアーナが昨年の5月のパーソンズ美術大学のチャリティイベント――第69回パーソンズ・ベネフィットでの名誉賞の受賞スピーチで着用し、たくさん写真に撮られたベージュ色のスーツのことだ。

「今シーズンは、ビッグシルエットをどうやって取り入れるか、それをどうやって、もう少し構築的な雰囲気に作り変えるかを考えていた」と彼は言う。「それはでき上がったアイテムに生かされている。コートの広がった裾や、テーラードジャケットの袖の形にね。単にやたら大きいというのじゃなくて、しっかりとした意図があるんだ」

画像: マシューの成功の一因は、アメリカンスタイルにおける「高級感とカジュアル感の共存」の本質をはっきり表現していることにあるだろう

マシューの成功の一因は、アメリカンスタイルにおける「高級感とカジュアル感の共存」の本質をはっきり表現していることにあるだろう

 今シーズンに向け、マシューはジャクリーン・ケネディの伝記を読んでいたそうで、彼女の影響は明らかだ。「チェック柄に夢中になった。そしてテーラリングには60年代のクチュールからの影響もかすかにある」と彼。 コレクションに登場したのは、フューシャピンクやコバルトブルー、鮮やかなグリーンのケーブルニットのアンサンブル。丈の短い、ダブルボタンのジャケットは、ジョン・F・ケネディの葬儀の際に彼の息子が着ていたブレザーを彷彿させる(アイコン的なこの写真を、マシューはアトリエのドアの後ろに貼り付けている)。

 これらを「アメリカンスタイルの主要アイテム」とする考え方と、昔からあるストリートウェア、例えば90年代のラップグループ、ダ・ヤングスタズにインスパイアされた超ラージサイズのカーハートのベストといったアイテムに関する彼の見解は、一対のものとなっている。「アメリカンスタイルのもつ二重性、エリート主義と大衆主義という二重性が、いつだって僕を魅了するんだ」とマシューは言う。

 デニムこそ、この対比を完璧に表現するアイテムだと言えるだろう。マシューは今シーズン、再びデニムを提案することにしたのだ。「デニムは本当にたくさんのものを象徴している」と彼は、ワイドシルエットのデニムパンツを示しながら言う。「ウェスタン風であると同時に、ヒップホップ風でもある。(カントリーシンガーの)ドリー・パートン的でもあり、(R&Bシンガーの)アリーヤ的でもあるんだ」

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