日本が誇る最高品質の真珠。その輝きはいかにして生まれるのか。長崎県の九十九島、豊かでおだやかな海を臨む、TASAKIの真珠養殖場を訪ねた

BY HIROKO NARUSE, PHOTOGRAPHS BY HIROAKI HORIGUCHI

画像: 養生中のあこや貝の確認作業。目視で貝の状態を把握する

養生中のあこや貝の確認作業。目視で貝の状態を把握する

 養殖場での作業は、あこや貝の人工採苗に始まり、生育から仕立て、核入れ、養生、沖出しといった工程に分かれている。つまりここでは、真珠を生み出す母貝の誕生から手がけているのだ。建物内でおこなわれているあこや貝の人工採苗や、生育過程で餌となるプランクトンの管理にはデジタル技術が活用され、現場の雰囲気は研究室のよう。この様子を見るまでは、養殖作業全体を通して、職人の勘に頼る部分が大きいのではとイメージしていたが、実際はまったく違っていた。いっぽうで熟練の技術が必要な、手作業による工程もある。とくに核入れのような緻密な作業では、携わる人の腕によって真珠の出来に大きな差が出る。技術を完全に習得するには、5~6年かかるそうだ。いずれの作業も、すべての工程にスタッフの目が行き届いているのがわかる。

画像: 沖合に出すあこや貝は、手作業でひとつずつネットに並べる

沖合に出すあこや貝は、手作業でひとつずつネットに並べる

 核入れの済んだ貝は、養生といって、施設内の海中で文字通り体力をつける。その後沖合に出され、海中で真珠を育むステップに進む。真珠を収穫するまでの1~2年間、スタッフはあこや貝を並べたネットを海中につるし、海の水温や酸素量、プランクトン量などのデータに気を配りながら管理する。その間は数か月ごとに貝の様子を確認し、カキやフジツボなどの付着物を取り除く。作業にあたっては、できるだけ貝に負担をかけないように、細心の注意が払われる。このような過程を、順を追って見るうちに、ここでは経験とテクノロジーを融合して、安定した品質を保つためのさまざまなノウハウが実行されている、と肌で感じた。

画像: TASAKIクオリティを満たすあこや真珠の、圧巻のきらめき

TASAKIクオリティを満たすあこや真珠の、圧巻のきらめき

 真珠のクオリティは、「巻き」「照り」「色目」「形」「キズ」「大きさ」という6要素によって決まる。TASAKIの基準は厳しいことで知られ、ジュエリーに使われる真珠は、品質の高さで分類すると、三角形の頂点から1割程度までの粒ぞろい。この高品質の真珠を安定的に供給するため、予測不能な部分が多い自然を相手に、現場スタッフは連日知恵を絞りながら作業に取り組んでいる。その姿にふれたプラバル グルン氏は、彼らの技と物づくりへの思いに驚嘆し、「全員が自身の仕事に誇りを持っていることに感動した」と語っている。彼の心を動かした、スタッフの情熱。その一端に触れるべく、3人の方に、この仕事にかける思いをうかがった。

 養殖場を案内してくださった近藤真之さんは、海上でのあこや貝の生育と管理を担当。あこや貝の日々の変化をいち早く察知して対処するには、自分の目で確認するしかないため、苦労が絶えないという。そんな彼の原動力は、「初めて珠出しをした時の感動です。真珠がとても美しく輝いていたことが、忘れられません。それを超える珠をまだ生み出せていないように思えます。目標にして追いかけています」。この思いを胸に、彼は毎日海上で黙々と確認作業を続けている。このような人知れぬ苦労の結果、生み出した真珠のクオリティには、強い自負がある。「TASAKIの真珠は、ひと目でわかるほど、他とくらべて珠の巻きと色目が大きく違っています。その点をぜひ見ていただきたいですね」。

 あこや採苗の管理を担当する金子克彰さんは、「研究室の試験管の中とは違い、年・季節・天候・人的要素といった移り変わる条件の中で、常に安定した結果を求められることに、重い責任を感じます」と語る。同時に、「生物が生み出す唯一の宝石、真珠の生成のすべての過程を目の当たりにできるのは、この上なく楽しいこと」とも。「あこや真珠と南洋真珠の母貝は、まったく異なった性質を持ち合わせています。その2種類の貝を相手に、日本とミャンマーで、貝と環境(海)のポテンシャルを最大限に引き出そうと試行錯誤を続けています」と、スタッフの苦労を代弁。「場所は違っても、良質の珠を生み出すという共通の目標に向かって、全員で努力を積み重ねた結果生まれるのが、TASAKIの真珠です」

画像: 沖合での点検作業に余念のないスタッフ

沖合での点検作業に余念のないスタッフ

 あこや養殖部門の責任者を務める山下正人さんは、前ミャンマー養殖所長。「スマトラ大地震の時は、津波によって現地の施設が破壊され、存続の危機を感じました。修復作業は数か月にも及び、連日少しずつコツコツと進めて、ようやく正常な状態に戻した時は、心身ともに疲れはてました」。山下さんの言葉にできないほどの苦労に、しかし海は報いてくれた。「つらい経験もしましたが、ミャンマーでの最後の年の収穫は過去最高の成績をあげ、忘れられない思い出になっています」と、顔をほころばせる。じつは彼は、現地のジャングルを切り開いて、真珠養殖場を一から作った人なのだ。南洋真珠には、格別な思い入れがあるという。「ミャンマーで養殖する南洋真珠は、ほんの米粒レベルの核が、2年ほどで信じられない大きさの真珠になります。そのすばらしい輝きと迫力は、一見の価値があります」。現在は九十九島の養殖場で、自らあこや真珠の核入れに取り組む。「恵まれた自然の中での日々の作業は、新しい発見の連続です。この環境から生まれるあこや真珠の美しさと品質の高さを、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています」

画像: 自然環境が保たれた九十九島の海。海上に浮かぶブイの下に、養殖用ネットがつるされている

自然環境が保たれた九十九島の海。海上に浮かぶブイの下に、養殖用ネットがつるされている

 現在の真珠養殖の技術は、20世紀にくらべて格段の進歩をとげている。そしてこれからも、進化し続けていくだろう。「どんなに新しい技術が導入されても、先人が作り上げてきた経験と知識の集積が大きな糧となることは、間違いありません」との金子さんの言葉が、全員に共通する思いを代弁している。良質の真珠を生み出すというひとつの目標に向かって、養殖場では毎日、自然と向き合いながら、共存する道が模索されている。そこにこめられたスタッフの熱意とプロフェッショナル魂が、TASAKIの真珠を特別なものにしているのに違いない。

問い合わせ先
TASAKI
フリーダイヤル: 0120-111-446
公式サイト

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