男性のジャケットのラペルが、いつから愛国心や出身、教養の高さを示す場所になったのか、はっきりとはわからない。フランスの男性は、ナポレオンの時代にはもう、国家の授ける栄誉の種類で色が異なるメダル、十字架、ピンバッジなどを顕示するのを好んでいた。フリーメイソンの間では長いこと、会員のランクを示すバッジが同志の印でもあった

BY LESLIE CAMHI, PHOTOGRAPH BY GABRIELA WOROSZ, STYLED BY TODD KNOPKE, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

画像: ティファニーブルーブック2019コレクションより。 (左上)スターリングシルバーのフレームとガラスの専用ボックスに入ったブローチ <K18イエローゴールド、プラチナ、ダイヤモンド> (中央)クワガタのブローチ <プラチナ、ダイヤモンド、ブルースピネル> (右下)クワガタのブローチ専用のケース <ゴールドバーメイル、スターリングシルバー>

ティファニーブルーブック2019コレクションより。
(左上)スターリングシルバーのフレームとガラスの専用ボックスに入ったブローチ
<K18イエローゴールド、プラチナ、ダイヤモンド>
(中央)クワガタのブローチ
<プラチナ、ダイヤモンド、ブルースピネル>
(右下)クワガタのブローチ専用のケース
<ゴールドバーメイル、スターリングシルバー>

 この栄誉のバッジに新たな顔ぶれが登場する。ティファニーが、毎年恒例のハイジュエリー・コレクション「ブルーブック」で、初のメンズ向けアイテムを発表した。ブルーブックは「ティファニーのクリエイティブ・ラボであり、実験のための場所、新しいパーツや技術、コンセプトを試す場」なのだと、チーフ・アーティスティック・オフィサーであるリード・クラッコフは言う。今までブランドの顔となるジュエリーは、王妃や映画スターが身につけてきた。しかし今、あえてクラッコフはこう言及する。「ティファニーの顧客の半数は男性です」

 デザインの開発には、2年以上をかけた。ボツワナからロシアまでのあらゆる場所で見つけた稀少な原石を、ティファニーのチーフ・ジェモロジスト(宝石鑑定士)、メルヴィン・カートリーが"オーディションにかけた"のだ。全12アイテムの中には、一列に並んだルビーを片側にさりげなくはめ込んだ、鳥の頭の形をしたゴールドのリングや、エメラルドカットを施した5カラットのダイヤモンドを中心に置き、下に重ねたK18ゴールドのプレートから一列に並んだバゲットカットのダイヤモンドがのぞく「ハンカチーフ」ブローチなどがある――このゴールドプレートの表面はブラッシュ加工され、つけている者にしか見えない裏側は鏡面仕上げで輝いている。クワガタの形をしたプラチナのブローチもある。その体はダイヤモンドで輝き、あごには巨大な7カラットのブルースピネルが挟まっている。

 デザインを担当したのは一風変わった趣味の持ち主に違いない。輝ける生き物たちのいくつかには、それぞれに合わせてデザインされた、収納やディスプレイのための「入れ物」まであるのだ(これはロードアイランド州のティファニーの器などを手がける職人が手作業で制作した。この工房で、スーパーボウルやMLBワールドシリーズのトロフィも作っている)。サファイアとダイヤモンドがあしらわれた、なめらかで抽象的な鳥の形をしたK18ゴールドのピンバッジは、スターリングシルバーとゴールドバーメイルでできた巣箱の中に寝かされている。先述のクワガタは、スターリングシルバーとゴールドバーメイルでできたマッチ箱の中にそっと隠れている。

まるで自宅の裏庭の隅でクワガタを見つけた少年が、それをしまっておこうとして箱に入れたみたいに。「いつだって私は、ナイーブさと奇抜さが並びあっているものに惹かれるのです」と言うクラッコフ。「これはまさにティファニーのDNAの一部だと思います――無造作で自然体の、アメリカ流のラグジュアリーです」。男性用ではあるが、カートリーもクラッコフも指摘するように、ジェンダーが流動的な時代にあって、これは実際には誰でも身につけられるアイテムだ。つけこなせるキャラクターと何か特別な記念日、必要なのはそれだけだ。

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