BY CHIZURU ATSUTA, PHOTOGRAPHS BY MIE MORIMOTO, EDITED BY JUN ISHIDA
オーガニックコットンとの出会いから、現代社会のストレスや体調不良の改善をナイトウェアを通して提案するのが、「ナナデェコール」を主宰する編集者の神田恵実。ブランドをスタートしたのは2005年。15年たった今も変わらず伝えているのは「睡眠の大切さと、心地よい眠りかた」だ。
「それまで私は夜中まで働く生活を続けていて、とことん働いて、疲れて、マッサージやエステへ行く。自分の中に疲れやストレスがたまると、それを癒やすものを外に求めていく生活でした。でもいつも何か満たされない。年を追うごとに疲れが取れなくなっていく。そんなとき、仕事先でオーガニックコットンと出会いました。さわるだけでふわっとしていて、とろけるように柔らかい。私が疲れていたこともあってか、妙にほっとしたんですね。この肌ざわりで寝たらどれくらい気持ちいいのかなって。それで自分でパジャマをつくって着てみたんです。それが思った以上に効果的でした」
人間は夜眠ることによって治癒力を高め、エネルギーがチャージされる。深く寝ることで、その日の疲れが取れれば、蓄積されることもなくなる。「ぐっすり眠ると最初のノンレム睡眠時にホルモンが分泌され、細胞の修復と脳のストレスリリースが始まります。深く眠るだけで、心と体が蘇る。私の場合は、オーガニックコットンのパジャマに替えただけで眠りが深くなりました。最近は部屋着のまま寝る方も多いようですが、お風呂に入って、きちんと好きな肌ざわりのものに着替えて寝る。体のスイッチをしっかりオフにするということが大事なんだと気づかされました」
そもそもオーガニックコットンとは、3年以上農薬や化学合成の肥料、殺虫剤、除草剤などを使用せず自然のサイクルに従って栽培、収穫された綿花のこと。自然の循環システムを守り、環境への負荷をできる限り軽くしたものだ。肌ざわりのよさはもちろんだが、ケミカルな成分を使わないことで、労働背景もクリアになっている場合が多いという。
「一番の問題は児童労働。窓もない劣悪な環境の下で働かされている子どもたちもまだ多いです。しかも枯葉剤を使用するコットンは、薬剤が強いので生産過程で畑の汚染や砂漠化が広がってしまいます」
オーガニックコットンは、土にそのまま還せるのもよいところ。つくって売りっぱなしではなく、自分たちが責任をもって処理できることも大きい。「世界でも先進国の中で日本の女性は睡眠時間が短い傾向があって、一方で、男性も社会の中のストレスが多い。特に東京は情報量も多く、脳はいつもフル活動。オーガニックコットンの心地よさは身にまとうだけで、緊張感もゆるめてくれる。今のストレス社会で、癒やしのひとつになるはずです」