BY CHIZURU ATSUTA, PHOTOGRAPHS BY MIE MORIMOTO, EDITED BY JUN ISHIDA
ハーブの効能は、食や医療の面でも注目を集めるが、その力で新しい美容に取り組んでいるのが、ヘアサロン「エポ ヘアスタジオ」(以下エポ)を主宰するヘアスタイリストのKENSHINだ。現在、自社製のエッセンシャルオイルを使った新しいヘアケアプロダクトの開発研究を進めている。長年ニューヨークを拠点に、世界各国のファッション誌や広告などで活躍してきたKENSHIN。なぜ今、日本で始めたのか?
「21世紀にふさわしいニュービューティとは何か、それを形にしたいと思ったんです。なるべく自然のもので、環境破壊しないもの。浮かんだのがハーブの存在でした。実は20年ほど前、カリフォルニアで集めたハーブを抽出してオイルにしている人と出会い、これを美容に使えないかと思ったのがきっかけ。当時から構想としてはあったのですが、ようやく日本で実現できるタイミングが来ました。香りのいいヘアサロンって、あまりないでしょう」
確かに、「エポ」には美容室によくある鼻にツンとくるケミカル臭は一切ない。ハーブの香りが充満していて、足を一歩踏み入れただけで心がほぐれていく。「エポ」の最大の特徴は、ファクトリーとラボを併設したサロンであること。店内にある大きな窯では、直接採ってきた植物などを自分たちで蒸留精製する。その隣のラボはいわゆる実験室で、窯で抽出したエッセンシャルオイルとテクノロジーを駆使して新たなビューティメニューやプロダクトを開発。それらを実際にサロンで使用し、ラボにフィードバックする。
「納得できるプロダクトがなかったら自分たちで原材料からつくればいい、という考えからファクトリーとラボを持つことにしました。サロンでは、カラーやパーマはケミカルでないとできないこともあるので使っていますが、それを補い、修復させるようなケアができたらと開発しているのが、香りにこだわったシャンプーやトリートメントです」
もともと専門知識があるわけではなかったので、すべて独学で身につけた。オイルづくり、農家探し、ハーブ探し。本を読み、専門家に話を聞きに行き、すべて試行錯誤しながら。サロンは、原料抽出などのためにしばらくの間プレオープンという形にして、2019年9月に正式にオープンした。2009年に日本で初めてのヘアドネーション(髪の寄付)団体を立ち上げたファウンダーでもあるKENSHIN。
「美の追求には、心身の健康状態が大きく関係するので、いろいろな面からサポートしたい。つまりはコミュニケーションがキーだと思うんです。21世紀型の新しい美をつくるのは技術だけでなく、どのような製品を使うか、環境に配慮されたものか、社会貢献につながるか、店構えや香り、雰囲気も含めたエシカルなコミュニケーションが大切になってくるのだと思います」
Epo Hair Studio
原材料のハーブを自社工場で蒸留精製してオイルを抽出し、ラボではメニューや商品開発、サロンではつくり立てのヘアケアプロダクトを提案する。ファクトリー、ラボ、サロンの三位一体の空間による、新しいヘアサロン。季節に応じて、スタッフ全員でのフィールドワークも欠かせない。野山に分け入り、薬草やハーブを採取。アーカイブを積み重ね、知識や経験を日々アップデートしている。
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-15
営業時間:11:00〜20:00(土・日曜、祝日の場合の月曜は8:00〜17:00)
定休日: 火曜(第2日曜はワークショップクラスのみ)
電話:03(6407)9970
公式サイト