ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第12回で取り上げるのは、「グランドセイコー」。今年誕生60周年を迎えた日本が誇る高級時計のグローバルブランドは、新たなチャレンジと革新で次の60年へと向かう

BY NORIO TAKAGI

 日本書紀によれば、天智天皇は漏尅(ろうこく)を作って時を計り、鐘鼓を動かして時刻を知らせた、とある。時は天智天皇10年4月25日、グレゴリオ暦換算で671年6月10日。日本初の時計が鐘を打ったから、6月10日は、時の記念日……と、1920年に定められた。一方、同じく日本書紀には、斉明天皇6年(グレゴリオ暦660年)に中大兄皇子が漏尅を作ったとの記述がある。そしていずれの漏尅にも、初めてと記されている。どちらが本当の初であるかは、知る由もないが、この時代に始まった日本の時計の歴史は、長く漏尅の時代が続き、江戸時代に独自の機構を持つ和時計が誕生。そして明治維新後の1887年に国産初の掛時計が名古屋で、1895年に初の懐中時計が大阪で作られ、時計産業が萌芽した。

 同じ頃、「セイコー」も、産声を上げた。始まりは、創業者の服部金太郎が1881年に開いた時計の修理・販売を行う服部時計店。その11年後の1892年に精工舎を設立して、まず掛時計の製造をスタートし、1895年には同社初の懐中時計「タイムキーパー」の開発に成功する。そして1913年、国産初の腕時計「ローレル」を発表。以来、社名に込めた「精巧な時計を作る」との信念を貫き、技術を研鑽してきた。そのすべてを注ぎ込み、1960年に誕生したのが「グランドセイコー」である。目指したのは、「世界に挑戦する最高級の腕時計」。当時、国産時計として最高峰の精度を誇っていた「クラウン」用のムーブメントをベースとし、加工精度に優れたパーツのみを厳選して組み立て、入念に調整したキャリバー3180を搭載した初代グランドセイコーは、スイス・クロノメーター検査基準優秀級規格に国産で初めて準拠したモデルとして、世に送り出された。その技術を実証するため、セイコーは1964年から68年の間、スイスの天文台が開催する精度コンクールに参戦。輝かしい実績を残してきた。

画像: THE STORY of KINTARO HATTORI(創業者、服部金太郎の足跡) © SEIKO youtu.be

THE STORY of KINTARO HATTORI(創業者、服部金太郎の足跡)
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 そんな世界に誇れる国産時計の最高峰は今年、誕生60周年を迎えた。60は、時計における1周期。秒針は60秒で1周して新たな分へ、分針も60分で1周して次の時刻へ、バトンをつなぐ。グランドセイコーは60周年を重要な節目とし、次の60年につながる新たなチャレンジをスタートさせた。

画像: 「グランドセイコーブティックフラッグシップ和光」 インテリアのコンセプトは、グランドセイコーを愛するオーナーの住空間。店内はライブラリー、ラウンジ、ウォッチバー、リビングの4つの空間から成る グランドセイコーブティックフラッグシップ和光 東京都中央区銀座4-5-11 和光本館 TEL. 03(3562)2111 営業時間:10:30~19:00 無休(年末年始を除く)

「グランドセイコーブティックフラッグシップ和光」
インテリアのコンセプトは、グランドセイコーを愛するオーナーの住空間。店内はライブラリー、ラウンジ、ウォッチバー、リビングの4つの空間から成る

グランドセイコーブティックフラッグシップ和光
東京都中央区銀座4-5-11 和光本館
TEL. 03(3562)2111
営業時間:10:30~19:00
無休(年末年始を除く)

 この6月には、「グランドセイコーブティック」を、名だたる高級宝飾・時計ブランドが軒を連ねるパリ・ヴァンドーム広場に開業。ここに日本の時計ブランドがブティックを構えるのは、初である。また創業の地・銀座にあるグループ会社「和光」に8月6日、「グランドセイコーブティックフラッグシップ和光」をオープン。全ラインナップを取り揃えるのに加え、ブランド歴史をたどる貴重な資料も展示され、さらにオリジナルモデルをオーダーできるサービスも導入された。

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