ウォッチジャーナリスト高木教雄が、最新作からマニアックなトリビアまで、腕時計にまつわるトピックを深く熱く語る。第12回で取り上げるのは、「グランドセイコー」。今年誕生60周年を迎えた日本が誇る高級時計のグローバルブランドは、新たなチャレンジと革新で次の60年へと向かう

BY NORIO TAKAGI

 60周年を記念する多彩な限定モデルも、リリース。その中の2つのモデルには、グランドセイコーの新たな時代を開く、それぞれに異なる革新的なムーブメントが搭載されている。

 ひとつは「ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 80 Hours」に潜む、「キャリバー9SA5」。これには極めて革新的な「デュアルインパルス脱進機」が、初採用された。機械式時計の動力源であるゼンマイから駆動力は、いくつかの歯車を経て、特殊な歯型を持つガンギ車へと伝達される。ガンギ車の歯先は、T字の上部の両端に爪石が突き出す形のアンクルの一方の石を打ってシーソーのように運動させて、その動きが時をカウントするテンプを振動させる。

画像: グランドセイコー「ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 80 Hours」¥4,500,000 <ケース径40mm / 18KYG、自動巻き、クロコダイルストラップ>(限定100本) 大型の植字インデックスと針とで力強い印象を高めたダイヤルに、革新的ムーブメントが潜む。ゼンマイを収めた香箱を2つ積み、80時間のロングパワーリザーブを実現

グランドセイコー「ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 80 Hours」¥4,500,000
<ケース径40mm / 18KYG、自動巻き、クロコダイルストラップ>(限定100本)
大型の植字インデックスと針とで力強い印象を高めたダイヤルに、革新的ムーブメントが潜む。ゼンマイを収めた香箱を2つ積み、80時間のロングパワーリザーブを実現

同時にテンプの振動でアンクルはまたシーソーのように逆方向に動き、他方の爪石がガンギ車の動きを止める。これを繰り返すことで、ゼンマイが巻き戻る速度を調整し、正確な時の流れへと変換しているのである。このガンギ車とアンクルとを称して脱進機。新たに開発したデュアルインパルス脱進機は、テンプの軸に第3の爪石が備わり、通常よりも長く設えられたガンギ車の歯先がこれを直接打って駆動力を伝える、かつてない設計を持つ。結果、駆動効率は格段に向上し、かつ精度も安定する。セイコーは新たな脱進機の開発で、機械式時計を進化させたのである。

画像: 新開発のデュアルインパルス脱進機。テンプの軸上に第3の爪石があり、その左側のガンギ車の歯先が、これを打って駆動力を伝える

新開発のデュアルインパルス脱進機。テンプの軸上に第3の爪石があり、その左側のガンギ車の歯先が、これを打って駆動力を伝える

 これまでもセイコーは、数々の革新を腕時計にもたらしてきた。1959年には自動巻きローターがどちらの方向に回転してもゼンマイが巻き上げられる切り替え装置マジックレバーを開発。1969年に世界初のクォーツ式腕時計を生み出したのも、セイコーである。そして1999年には、機械式と同じゼンマイを動力源とし、その力で発電ローター動かして得た電力でクォーツ式と同じ水晶振動子とICとを機能させて制御する唯一無二スプリングドライブを発明。11月下旬の発売される新製品「スポーツコレクション スプリングドライブ 5Days」は、新たに開発したマジックレバー式の自動巻きスプリングドライブ、「キャリバー9RA5」を搭載する。マジックレバー式は効率性に優れるが、構造上、自動巻きローターの中心近くにしか置けなかった。

画像: グランドセイコー「スポーツコレクション スプリングドライブ 5Days」SLGA001¥1,150,000 <ケース径46.9mm / チタン、自動巻きスプリングドライブ、チタンブレスレット、シリコンストラップ付属>(限定700本)※11月下旬発売、グランドセイコーブティックフラッグシップ、グランドセイコーブティック、グランドセイコーサロンおよびマスターショップ限定 600m飽和潜水に対応した頑強なプロ用ダイバーズでありながら、薄型ムーブメントの恩恵でケース厚は16mmに抑えられている。ダイヤルはブランドを象徴する「グランドセイコーブルー」を採用

グランドセイコー「スポーツコレクション スプリングドライブ 5Days」SLGA001¥1,150,000
<ケース径46.9mm / チタン、自動巻きスプリングドライブ、チタンブレスレット、シリコンストラップ付属>(限定700本)※11月下旬発売、グランドセイコーブティックフラッグシップ、グランドセイコーブティック、グランドセイコーサロンおよびマスターショップ限定

600m飽和潜水に対応した頑強なプロ用ダイバーズでありながら、薄型ムーブメントの恩恵でケース厚は16mmに抑えられている。ダイヤルはブランドを象徴する「グランドセイコーブルー」を採用

画像: 搭載する「キャリバー9RA5」の動力源部の機構図。自動巻きローターの回転軸の左下にあるのが、軸を折り曲げオフセット化したマジックレバー車。そこから突き出す2つのレバーが、巻き上げ方向を切り替える PHOTOGRAPHS:COURTESY OF SEIKO WATCH

搭載する「キャリバー9RA5」の動力源部の機構図。自動巻きローターの回転軸の左下にあるのが、軸を折り曲げオフセット化したマジックレバー車。そこから突き出す2つのレバーが、巻き上げ方向を切り替える
PHOTOGRAPHS:COURTESY OF SEIKO WATCH

 しかし今回、マジックレバーを載せる歯車の回転軸を曲げることで、中心近くからオフセット化することに成功。ムーブメントの薄型化をかなえたのだ。前述の機械式キャリバー9SA5も、薄型設計である。何故グランドセイコーは、新型ムーブメントに薄さを求めたのか? 薄いムーブメントは、ケースに収めた際、重心が低くなるため、腕の上で安定する。つまり装着感を向上させるのである。グランドセイコーは誕生以来、「正確さ」「美しさ」「見やすさ」を追求してきた。そしてこれら2つの60周年記念モデルには、新たに“着け心地の良さ”との価値がもたらされ、次なる60周年の指針を示した。

問い合わせ先
セイコーウオッチ お客様相談室
TEL. 0120-061-012(通話料金無料)
公式サイト

高木教雄(NORIO TAKAGI)
ウォッチジャーナリスト。1962年愛知県生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアなどライフスタイルプロダクトを取材対象に、各誌で執筆。スイスの新作時計発表会の取材は、1999年から続ける。著書に『「世界一」美しい、キッチンツール』(世界文化社刊)があり、時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ著『偏屈のすすめ』(幻冬舎刊)も監修

 

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