BY MICHINO OGURA, PHOTOGRAPHS BY SODAI YOKOYAMA, STYLED BY YOSHIE DOHKEN, HAIR & MAKEUP BY SHIHO SAKAMOTO
多くを語らずとも、その印象的な瞳はどこか私の胸に訴えかけてくるものがあった。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、源頼朝と北条政子の娘・大姫役を演じた新進気鋭の女優、南沙良のことだ。若いふたりが恋に落ち、その思いもかなわぬままに「好きに生きるということは、好きに死ぬこと」と遺して世を去った大姫。初となる大役には、柔軟に向かっていったと語る。「大姫の役作りには、共感を抱くというよりも、ああいう不思議な子っているなというところから入りました。演じていくうちに、家族からたくさんの愛を受けて育っていることを理解して、お芝居をしながら、周囲の方からいただいたものを素直に受け止めていこうと思えてきました」。大河出演を喜んでくれた祖父母が毎週「テレビを見たよ」と連絡をくれたとうれしそうに話す彼女は、まさしく愛に包まれている存在だ。
20歳になったばかりだが、独特の落ち着いたムードを醸し出す。ハイブランドの洋服の意図を感じ取り、しなやかに着こなしていく姿は彼女の表現者としてのスタンスとも通じるようだ。「女優を志したきっかけは、自分ではない誰かになってみたかったから。お芝居をしている瞬間って何も考えていないんです。あまり深く考えると、必ずどこかに自分が出てきてしまうものですよね。でも、表現することは好きなので、お芝居以外のことにも挑戦できたらと思っています。文章を書くことやお裁縫も好きなんですよ」
今後出演してみたい作品はと尋ねると「アクションアドベンチャー! 実は恐竜が大好きなんです。恐竜に食べられる役でもいい……恐竜と共演したい」と熱望。小説や少年マンガも大好きというマニアックな一面も、彼女の魅力を形作るレイヤーなのかもしれない。
南沙良(みなみ さら)
女優、モデル。2002年6月11日生まれ、東京都出身。映画『幼な子われらに生まれ』(2017年)で女優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2018年)で、報知映画賞、ブルーリボン賞ほか、数々の映画賞を受賞し、その演技力が高く評価される。本年度は、朝ドラマ『サヨウナラのその前に』(日本テレビ系)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)、映画『女子高生に殺されたい』『沙良ちゃんの休日』に出演のほか、現在公開中の映画『この子は邪悪』では主演を務める。Instagram : @lespros_sara00