BY LINDSAY TALBOT, PHOTOGRAPH BY SHARON RADISCH, SET DESIGN BY VICTORIA PETRO-CONROY, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
1800年代後半、ティーンエイジャーだったグッチオ・グッチは、フィレンツェからロンドンへ向かい、サヴォイ・ホテルのポーターとして働き始めた。そこで世界各地から訪れる宿泊客のライフスタイルに魅了された彼は、レザーグッズ専門のブランドを立ち上げようと思い立つ。ミラノの歴史あるバッグメーカー、フランツィでの見習い期間を経て、1921年、フィレンツェのヴィーニャ・ヌオーヴァ通りに最初のアトリエをオープン。トスカーナ産や外国産のレザーを使用した最高級の大型旅行かばんの製作を始め、ステッキや傘のデザインも手がけた。
1930年代に自動車が普及すると、大きな旅行かばんの需要は減少。そこでグッチはハンドバッグも手がけることに。1947年、今ではアイコンである、ハンドルが竹でできた「バンブー バッグ」が登場。数年後にはシグネチャーとなる赤と緑の縦縞をグログランテープにあしらった「ウェブ ストライプ」を発表。これは馬の胴体に巻く織り紐、腹帯をイメージしたものだった。
現在もグッチは、1981年に初披露した乗馬モチーフのショルダーバッグを繰り返し提案している。アーカイブのオリジナルには、サドル(鞍)のような形をしたフラップと、金属製のあぶみを模した留め具が備わっている。最新作は9種のデザインで展開されている。精緻なフラワーモチーフの刺しゅうをあしらい、細部にオストリッチとリザードレザーを使用したモデルから、緑と赤のパイピングを施し、かつて使われていた小さなGGパターンを強調したモデルまでさまざまだ(※日本では4型を展開。前述モデルの扱いはなし)。このバッグは今もひと目見ればわかるアイデンティティを保ちつつ、タイムレスな魅力を放つ。