シャネルのこの美しいハイジュエリー・ネックレスは、今年の2月、ニューヨークにアメリカ初のウォッチとファインジュエリーの旗艦店をオープンさせたことを記念し、制作されたものである。

BY LINDSAY TALBOT, STILL LIFE BY AM + PM, SET DESIGN BY CAMILLE LICHTENSTERN, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

画像: マンハッタン5番街にオープンした旗艦店での限定販売。エターナル シャネル N°5 ネックレス〈WG、センターにエメラルドカットダイヤモンド20.09ct〉(日本展開未定)/シャネル シャネル カスタマーケア TEL.0120-525-519

マンハッタン5番街にオープンした旗艦店での限定販売。エターナル シャネル N°5 ネックレス〈WG、センターにエメラルドカットダイヤモンド20.09ct〉(日本展開未定)/シャネル

シャネル カスタマーケア
TEL.0120-525-519

 フランス・ビアリッツでクチュールハウスを立ち上げ、のちに旗艦店となる店を開いたパリのカンボン通りに移った、"ココ" ことガブリエル・シャネルは1921年、初のフレグランスを発表する。初代の専属調香師エルネスト・ボーに彼女はこう依頼した、「女性そのものを感じさせる、女性のための香水」を、と。それは、当時主流の単一な香りではなく、豊かなフローラル ブーケの香りだった。ボーはフランス・グラース産のジャスミンやローズ・ドゥ・メ、コモロ諸島のイランイランの花、ベネズエラのトンカビーンズ、サンダルウッドなど世界中から原材料を集め、合成香料のアルデヒドと大胆に組み合わせ、80種類以上の香りを調合した。数カ月後、試香用の小瓶を並べてガブリエルに見せると、彼女はそこから5 番のラベルのものを選んだ。それが理由か、ドレスのコレクションを月の5 番目の日に発表するのと同じように縁起を担いで彼女のラッキーナンバーをつけたいと思ったからなのか、真偽は不明だが、彼女はその香水を「N°5」とだけ命名した。

 ボトルのデザインに、ガブリエルはパステル調で装飾的な競合製品とは真逆のものを求め、薬瓶を彷彿とさせる無駄をそぎ落とした容器を採用した。この1921年のオリジナルデザインのボトルは、繊細なガラス製で、四角いシルエットと高い透明度により、目に見えないかのごとく─それによ
り香水自体の赤みを帯びた琥珀色を、鮮やかに示してみせた。四角いガラス製のボトルストッパーには、重なった二つのサンセリフ体の「C 」がついている。1924年に四隅が斜めにカットされた八角形に変更されたが、それ以外、このデザインは過去1世紀、ほぼ変わらなかった。

この着色石版画はフランスの風刺画家、"セム"ことジョルジュ・グルサによるもので、シャネル N°5のボトルが描かれている。


 そしてこの2月、ニューヨークにアメリカ初のウォッチとファインジュエリーの旗艦店がオープンしたのを記念して、シャネルはN°5のボトルデザインにちなんだハイジュエリー・ネックレスを制作。パヴェダイヤモンドを配したホワイトゴールドの5の数字の下にあしらわれた、20.09カラットのエメラルドカットダイヤモンドのペンダントトップは、取りはずしてリングとしても着用できる。香水のボトルストッパーを模したこのダイヤモンドは、その発想源であるヴァンドーム広場を上空から見た形同様、八角形だ。この広場は、ガブリエルがかつて暮らしたオテル・リッツのスイートルームからもよく見えたはず。挑発的にまばゆく光るこのジュエリーは、まるでシャネル N°5の香りそのもののように、首元に輝きを漂わせるだろう。

PHOTO ASSISTANT: LUCAS MATHON. ARCHIVAL PHOTO: GEORGES GOURSAT (A.K.A SEM), “N° 5 CHANEL PARIS,” CHROMOLITHOGRAPH HEIGHTENED WITH GOUACHE, PLATE 35 OF THE ALBUM “WHITE BOTTOMS,” CHANEL PATRIMOINE COLLECTION, PARIS

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