「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」がいち早く日本でお披露目された。醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏が新ヴィンテージを通じて伝えたかった思いとは何なのか。話を聞いた

BY KIMIKO ANZAI

 ワインとは天と地との間に生まれる美しい飲み物――。「ドン ペリニヨン」醸造最高責任者のヴァンサン・シャプロン氏は、かつて本誌にそう語った。「自然と人間との関係というのは、自然の上に人間が立つものではなく、自然の一部として、そこに人間が存在する」というのがシャプロン氏の考え方だ。人間は、天に与えられた知恵を使ってブドウの生命をワインに変容させているにすぎない。ワイン(シャンパーニュ)は、あくまでも自然からの贈り物なのだと。

画像: オーヴィレール大修道院から眺めるブドウ畑の夏の風景。ここで生まれた命が、多くの人の手を経て、新たな”光”となる COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

オーヴィレール大修道院から眺めるブドウ畑の夏の風景。ここで生まれた命が、多くの人の手を経て、新たな”光”となる

COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

 シャプロン氏のそんな哲学をあらためて理解したのが、この6月に京都で開催された「ドン ペリニヨン レベレーションズ 2023」だ。天台宗青蓮将軍院 将軍塚青龍殿を舞台としたこのイベントは「From Matter Light~物質から光へ~」をテーマに、「すべての始まりは自然であり、自然は物質を生み出す。そして人間の創造の力により、物質は変化を経て、光へと昇華する」というシャプロン氏の哲学をビジュアル化したもの。

 将軍塚青龍殿内に展示されたのは、「ドン ペリニヨン」が誕生するまでの物語をていねいに切り取った写真の数々。かつてドン・ピエール・ペリニヨン修道士が神に仕えつつ、素晴らしいシャンパーニュを生み出していたオーヴィレール大修道院から眺めた美しいブドウ畑の風景や、ミネラル豊かなブドウを育む石灰質土壌、冬枯れの畑で剪定作業にいそしむスタッフ、そして太陽の光にきらめくブドウの葉や完熟したブドウ。そこには、畑でブドウの出来を確認するシャプロン氏もいた。写真が語るのは、ブドウがシャンパーニュに変容していくまでの道程だ。それらの写真1枚1枚が、パワーを持ってブドウの生命力や造り手の熱い思いを伝えていた。

画像: 暑い夏の日、ブドウを収穫する。ブドウはていねいに手摘みされ、醸造所に運ばれる。「シャンパーニュを造るのは醸造チームだけではない。彼らも、私たちのチーム」とシャプロン氏 COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

暑い夏の日、ブドウを収穫する。ブドウはていねいに手摘みされ、醸造所に運ばれる。「シャンパーニュを造るのは醸造チームだけではない。彼らも、私たちのチーム」とシャプロン氏

COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

 シャプロン氏は語る。
「『ドン ペリニヨン』はパラドックスに満ちたシャンパーニュであると評されますが、私は、それは闇と光の間で引き合うテンションが存在するからだと思っています。闇というとネガティブに捉えられがちですが、私はここに奥深さ、深さを見出しています。いわば、闇は、『まだ何者でもない、何かのスタート地点』なのです。ですが、この闇の中にはブドウという物質があります。この闇の中からバーティカルに垂直の線が伸びていることをイメージしてください。闇のベクトルの先で待っているのは光です。闇はいつまでも闇ではない。淡い光が差し込み、それは少しずつ眩い光へと変化していくのです。これをブドウがシャンパーニュへと変容していく様とみなせば、理解しやすいのではないでしょうか。シャンパーニュに生まれ変わるまでのブドウは、まだ“闇の中の神秘”です。その神秘のエレメントを人の知恵と手で昇華させて誕生するのが『ドン ペリニヨン』なのだと、私たちは信じています」。

画像: ブドウをテイスティングするシャプロン氏。「かつては熟度をどう上げるか苦心していました。温暖化が進んでからはブドウのフレッシュさをどう保つか、常に考えています」 COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

ブドウをテイスティングするシャプロン氏。「かつては熟度をどう上げるか苦心していました。温暖化が進んでからはブドウのフレッシュさをどう保つか、常に考えています」

COURTESY OF ALEXANDRE GUIRKINGER – ROSE PARIS

 今年9月に登場予定の「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」は、まさに光そのものと言っても過言ではない。2009年は太陽に恵まれ、夏に完熟したブドウは豊かな果実味と凛とした酸を備え、風格あるワインの輪郭を描き出していたという。実際に「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」を口にしてみると、チェリーやフランボワーズ、黒コショウ、リコリスなどの華やかで複雑な香りがグラスを飛び出し、果実味と酸味の美しいハーモニーに圧倒される。そして、その味わいの奥に感じられたのが、静謐さと上品さ、華やかさとセンシュアリティといった「ドン ペリニヨン」ならではの相反するエレメントだ。

画像: 「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」。シャルドネとピノ・ノワールをブレンド。フランボワーズやレッドカラント、リコリス、バラ、スパイスの香り。豊かな果実味に美しい酸としなやかなミネラルが溶け込み、ハーモニーを奏でる。優雅さとセンシュアリティを備え、華やかな味わい。750ml ¥63,180(ボックス付き) COURTESY OF DOM PÉRIGNON

「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」。シャルドネとピノ・ノワールをブレンド。フランボワーズやレッドカラント、リコリス、バラ、スパイスの香り。豊かな果実味に美しい酸としなやかなミネラルが溶け込み、ハーモニーを奏でる。優雅さとセンシュアリティを備え、華やかな味わい。750ml ¥63,180(ボックス付き)

COURTESY OF DOM PÉRIGNON

 「ドン ペリニヨン ロゼというのは、ペリニヨン修道士の精神を最も具現化したものだと私は思っています。なぜなら、ペリニヨン修道士が生きた時代、シャンパーニュ造りにおけるブレンディングの技は当時の大きな改革であり、クリエイションにおける限界を超えるものでした。ペリニヨン修道士が、スティルワイン(泡が立たないワイン)をシャンパーニュとして生み出すというトランスフォーメーションをしたように、ロゼは、今までの白のシャンパーニュの境界線を押し広げたのだと言っていい。つまりロゼは、『ドン ペリニヨン』の白にさらなる自由を与えた存在なのです。だが、忘れてはいけないのは、‟調和“です。ブレンドされたワイン同士が長い熟成の間に美しく溶け合い、『ドン ペリニヨン』らしいハーモニーを奏でなくてはいけません。それを皆様に感じていただけたら、私たちはとても幸福です」。

 「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2009」は、飲む人の心に長い余韻を残す。それはたとえ消えたとしても、ある時、ふと蘇る瞬間がある。その一瞬の余韻こそが‟光“であり、ブドウの生命が永遠に生きている証なのだ。

MHD モエ ヘネシー ディアジオ
TEL. 03-5217-9732

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