TEXT&PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
宇治茶の主産地と知られる京都。古くからお茶文化が息づく街であり、最近では、日本茶をさまざまなスタイルで楽しめる店が増えている。そこで今月は、上質なお茶時間を過ごせる店を紹介。第1弾はリニューアルしたばかりの「一保堂茶舗 京都本店」へ。
御所南「一保堂茶舗 京都本店」
京都を代表する日本茶専門店「一保堂茶舗 京都本店」が、半年間の改装工事を終え、2023年12月にリニューアルオープンした。
「一保堂茶舗」の創業は1717年。蛤御門の変で店舗を焼失し、1864年に今の場所に再建されたというエピソードも京都っぽく、現在、売り場に使っている母屋は、再建された当時のものだという。
今回の改装工事では母屋の耐震補強も主な目的に。とは言え、売り場は、一見、改装前と全然変わっていないようにも。
しかし実は、漆喰の壁は一度剥がして、補強のための耐震壁を入れて、また漆喰を塗り直し、床をめくって、香川県牟礼で産出される高級石材、庵治石を敷き直すなど、古き良き佇まいをそのままに、隅々にまで手がかけられている。
今回のリニューアルで大きく変わったのが「喫茶室 嘉木」。席数も増え、「奥の間」、「カウンター席」、寺町通を望む「寺町の間」と、趣の異なる3つの空間で構成されている。
カウンター前の壁には、今回のために特注した常滑焼のタイルを敷き詰め、あえて錆びさせた銅をアクセントに用いるなど、お茶や水、土からインスピレーションを得た内装デザインも必見。日本画の巨匠による絵画や掛け軸もさりげなく飾られていて、ミニマルながら随所にこだわりを感じる。
日本茶は、淹れ方次第で味わいが変わるが、喫茶室では、熟練のスタッフが旨みを最大限に引き出し、淹れてくれるので、最上級玉露「天下一」を注文する方も多いそう。口に含むと、出汁を彷彿させるほど、旨みが凝縮していて、衝撃のおいしさ。
お湯の入ったポットも一緒に供され、2煎、3煎、4煎と味と香りの変化を楽しみつつ、ゆっくりお茶を楽しむことができる。
さらに、京都の和菓子店約10軒から日替わりで届く生菓子もお楽しみ。抹茶を注文した場合、茶道経験者の私は、ついつい「菓子を食べきった後に、抹茶は三口半で飲み切らなくて」と思ってしまうが、「礼儀作法を教える場じゃないので、自由にお茶を楽しんでください。抹茶碗を回さなくてもいいですし、菓子と抹茶を行ったり来たりしてください」とのこと。
日本茶を気負わず楽しめるように、売り場奥にはテイクアウトコーナーもあり。
喫茶室が混んでいたり、ゆっくり店内でお茶を飲む時間がない方でも、本店ならではの特別感を味わえるように、テイクアウトコーナーはスタッフとの距離も近いオープンキッチンのカウンターに。茶釜で抹茶を淹れる一連の所作も目の前で行われる。
テイクアウトカップで抹茶を飲めば、ぐんっと気軽さがアップ。口いっぱいに抹茶の旨みが広がり、後味はキリッと、コーヒー感覚で楽しめる。
「お茶の世界への扉になれば」という思いは商品にも表れていて、テトラ型のティーバッグをはじめ、コーヒーのような日本茶のドリップパッグ、ボトルにお湯と共に入れてシャカシャカするだけで抹茶が楽しめる抹茶スティックなど、お茶を手軽に楽しめる商品を展開。
外国人ツーリストも多く、売り場横には、お茶の淹れ方をアドバイスしてもらえたり、お茶のさまざまな相談ができる「つぎの間」もあり。
現代の暮らしに合うよう、お茶のカジュアルな楽しみ方を提案しつつも、茶葉には妥協を許さず、本物のおいしさを再発見できる。
一保堂の茶葉は、東京丸の内の路面店や全国の百貨店でも購入することができるが、日本茶の魅力や一保堂の世界観を堪能できる本店にぜひ足を運んでみてください。
「一保堂茶舗 京都本店」
住所:京都市中京区寺町通二条上ル常盤木町52
営業時間:10:00~17:00(喫茶LO16:30)
定休日:第2水曜
TEL. 075-211-4018
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