BY KIMIKO ANZAI
レモンや白いバラの花びら、ラベンダー、そしてアーモンド。アロマティックで深い香りがグラスの中からふわりと立ち上る。味わいは芳醇にして限りなくエレガント。「クリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディション」の世界に、一瞬にして引き込まれる。
「クリュッグ」は1843年創業の老舗シャンパーニュメゾンで、創業者ヨーゼフ・クリュッグ氏の「どんな気候にも左右されず、最高品質のシャンパーニュを毎年世に送り出す」という哲学のもと、「クリュッグ グランド・キュヴェ」を誕生させた。複数の年、複数の畑の区画ごとのキュヴェを120種類以上使用、そのブレンディングの妙味は“オーケストラの美しきシンフォニー”にも例えられている。「クリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディション」は、この創業者の夢のスタート時から172番目のキュヴェにあたる。11年間の異なる年の146種類のキュヴェをブレンド、この上なく優美で、複雑かつ奥行きのある味わいだ。
その魅力の一端を見せてくれるのが、10年前から始まった「クリュッグ×単一食材プログラム」だ。これは、畑の区画それぞれが唯一無二の個性を発揮するという考えのもと、“ひとつの食材に光を当てる”という「クリュッグ」ならではのアイディアから生まれたもの。毎年単一の食材をセレクトし、そこから新たなペアリングの可能性を見出そうという試みだ。過去にはレモンやキノコ、ライスなどが単一食材として選ばれ、毎年“クリュッグ・アンバサダー”に任命された世界の有名シェフたちが「クリュッグ グランド・キュヴェ」、「クリュッグ ロゼ」との独創的なペアリングを誕生させてきた。
10周年を迎える今年、テーマに選ばれたのは“エディブルフラワー”。料理を製作したのは、東京・西麻布のモダンフレンチ「マルゴット・エ・バッチャーレ」シェフの加山賢太氏と南青山の日本料理店「宮坂」シェフの宮坂展央氏。加山氏はこう語る。
「フレンチにおいてエディブルフラワーは“料理を彩る華やかなアクセント”。今まで、食材という受け止め方をしていませんでしたが、その分、今回は楽しい挑戦となりました。実際、食材として見てみると、エディブルフラワーには個性的な香りがあり、ほのかな苦みも感じます。これを、たとえば淡白な白身魚に使用し、『クリュッグ』と合わせたらおいしいだろうと予想できました」。一方で、「日本料理では穂紫蘇や菊、桜の塩漬けなどを使うのでなじみがあった」というのは宮坂氏だ。
「エディブルフラワーは季節の彩りなど、日本料理においては身近なもの。食べた時に鼻に抜ける香りも魅力的です。ですが、これを『クリュッグ』と合わせるとなると、なかなかに難しいものがありました」と語る。
そこで二人は、どのような食材に何のエディブルフラワーを合わせるか、個々に考え、料理の際は即興で一皿を仕上げていったという。
「打ち合わせらしい打ち合わせはほとんどしませんでしたが、ともにメゾンを訪れ、『クリュッグ』の哲学に触れたことで、互いにどのような料理を作るのか、基本的な共通認識はできていったように思います」と加山氏は笑顔を見せる。
「具体的な話し合いこそありませんでしたが、ともに『クリュッグ』を飲み、互いの料理観を語り合った。それがよかったのかもしれません」と宮坂氏は続ける。
そして誕生した特別な一皿が「鱧の炙りすだちジュレ掛け」だ。これを「クリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディション」と合わせると、穂紫蘇の苦みと淡白な鱧の甘さがよりエレガントに変化する。“幸福なペアリング”が実感できる一瞬だ。加山氏はこう語る。
「『クリュッグ』の魅力は華やかさと包容力。食材の苦み、えぐみを受け止め、それをおいしくしてくれる。どんな料理にも寄り添ってくれるシャンパーニュだと思います」。
もし、「クリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディション」を開ける機会があれば、料理の傍らにエディブルフラワーを添えてみたい。ナスタチウム、ビオラ、バラ……きっとその美しきシャンパーニュは、花々の魅力をさらに際立たせてくれるはずだ。
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TEL: 03-5217-9777
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