TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
四条河原町「そば 酒 まつもと」

「もりそば」¥950。そばは、もりとかけの2種類のみ
「そば 酒 まつもと」は普通の蕎麦屋ではない。店名通り“そばと酒”の店だ。予約の電話やウォークスルーで訪れた場合も「お酒は飲まれますか」とまずは聞かれる。

毎回、ひっくり返すのが楽しみな箸置き。「素面」と書かれた駒を裏を返すと「酩酊」、「笑上戸」、「千鳥足」など、酔い方を案ずる熟語が現れる
店内も蕎麦屋には珍しいカウンター席のみで、黒板メニューには、そばを食べる前に、お酒と楽しめる肴が並んでいる。
店主・松本宏之さんが、そば好きになったのは小学生の頃。東京から来た江戸っ子な転校生と出会い、塾帰りによく2人でそば屋に立ち寄っていたという(ませてる!!)。
大学時代は東京、長野、福井など、全国のそばを食べ歩き、お酒が飲めるようになってからは、そばを食べる前に酒と肴を楽しむそば前の楽しさに開眼。そして、大学卒業後は京都「蕎麦屋 じん六」で修行し、2013年に独立を果たした。

「きずし」¥1,400前後(仕入れによって変動)。通常は酢で締めるが、こちらでは酢締めせず、合わせ酢をかけて提供。塩で締める際もベタ塩ではなく、うっすら身が見えるぐらいの塩の量で締め、レア感が楽しめる
今でこそ京都にもそば前を楽しめる店は増えてきてはいるが、店を開いた当時は、まだ少なかった頃。そば屋の一品料理といえば、板わさ、かまぼこ、玉子焼きが定番だが、こちらには一切なく、「自分がお酒を飲む時に食べたいものを作っています」と、松本さん。この日の黒板メニューも、さわら焼霜造りやカニ味噌豆腐、あげとなっぱ煮など、しっかり手をかけた料理が並び、居酒屋のようなラインナップだ。

鶏のキモは2時間半〜3時間かけてじっくり低温で火入れ。ねっとり食感で卵黄とからめるとさらに良き日本酒の相棒に。「鶏肝ニラ玉」¥900
〆にいただくそばは、朝に手打ちした十割の細切り。京都の昔ながらの蕎麦屋にはつけつゆが甘いところが多いが、こちらのつけつゆは砂糖を使わず、キリリッとした味わいで、そばの甘味をしっかり感じることができる。

器のセレクトもセンス抜群。高島大樹さんの蕎麦ちょことそば湯を入れたアンティークのピッチャー
日本酒は派手な香りのしないものをセレクト。主張しすぎず、そばや料理に寄り添ってくれる。ナチュラルワインも同じく、香りが華やかすぎず、個性的すぎないものが用意されている。

柳が揺れる石畳の柳小路沿い
店を構える四条河原町裏には、昼から飲める酒場も多く、はしご酒の一軒にもオススメだ。

人気店ゆえ予約がベター。そばが売り切れ、早じまいすることも多いので、訪れる前に電話で確認を

店内はカウンター7席のみ。1人客も多い
「そば 酒 まつもと」
住所:京都府京都市中京区中之町577
営業時間:12:00〜14:00閉店、16:00〜20:00LO (日曜13:00 ~ 18:00LO、売り切れ次第終了)
定休日:火曜、ほか不定休あり
TEL. 075-256-5053

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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