TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
和食
御所南「末廣」の蒸し寿司

カニ身や穴子がのった豪華版、「末廣」の蒸し寿司・上¥2,310(11/1~3/31)
京都人が冬になると食べたくなるものと言えば「蒸し寿司」。棒寿司や巻き寿司を出す京寿司の名店では冬になると登場するメニューで、200年の歴史を持つ「末廣」でも毎年11月から3月まで提供されている。
蒸し寿司を知らない遠方からの客人に「ちらし寿司を蒸したもの」と簡単に説明すると、たいていの人が「熱々の酢飯っておいしいの?」と、実際食べるまではおっかなびっくりだったりだ。
末廣の酢飯はもともと酢がきつくなく、甘みもある優しい味わいが特徴。さらに一晩冷蔵庫で寝かせることで、酢の角が取れ、温かくしても、ツンと鼻を差すような刺激はなく、むしろまろやかな香りに食欲がそそられる。
テーブルに運ばれた丼の蓋を開けると、湯気がふわりと立ち上り、錦糸玉子の上には、海老や生麩、桜でんぶなど、色とりどりの具材がのっていて、箸を入れると、錦糸玉子の下からは刻んだ焼き穴子と酢飯が現れる。酢飯自体にも、干瓢としいたけを甘辛く炊いたものやイカのそぼろ、キクラゲが混ざっていて、それだけでいただいてもおいしく、錦糸玉子や焼き穴子、トッピングされた具材と一緒に食べると、一口ごとに違った味のコンビネーションが生まれる。

冬は注文の半分以上が蒸し寿司という人気ぶり

イートインは6席のみ。何十年と変わっていないノスタルジックな雰囲気がたまらない
蒸し寿司がいつどこで生まれたかは諸説あり、「末廣」でも100年以上前から出していることはわかっているが、厳密にいつから出しているかは不明だそう。「ハレの日にご家庭でようけちらし寿司を作って、次の日に残ったちらし寿司を寒い日やったから、温めて食べたらおいしくて、それが広まったとも言われています」と、8代目当主、柴田十起夫さん。

蒸し寿司は電子レンジ対応の容器に入った持ち帰り用もあり。¥2,052
この冬は、食材や物をムダにせず、有効利用する京都人の“始末の心”から生まれた「蒸し寿司」で、京都の底冷えで冷えた体を温めてはいかが。

鯖寿司や箱寿司など、持ち帰り注文も多く、新幹線で帰路につく前に立ち寄る旅行者も増えているそう

京都御苑のほど近く、骨董店が建ち並ぶ寺町通に天保年間創業
末廣
住所:京都府京都市中京区寺町通二条上ル要法寺前町711
営業時間:11:00~18:00(イートインはL.O.15:00)
定休日:月・火曜
TEL. 075(231)1353
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御所南「ととよし」

¥13,000のコースは水物を含む10品前後。炭火で焼いた香ばしさと柚子の香りが鼻をくすぐる、カマスの柚庵焼
三条新町のバー「酒陶 柳野」の新展開となる「ととよし」。「バーが開いた和食店!?」と驚かれるかもしれないが、「酒陶 柳野」は奥の厨房に料理人が控えているバーである。カウンターには酒瓶ひとつなく、土壁には花一輪が掛けられた、まるで茶室のようなミニマルな空間ながら、「きずし(鯖の酢〆)が食べたい」、「今日のお勧めの天ぷらを」などと言うと、奥から運ばれてくる。さらに予約すればコース料理をいただくことも。「ととよし」は、「酒陶 柳野」で10年以上勤めた料理人、杉井雄大さんが店長を務めている。

カウンター6席のみのプライベート空間。町家を改装し「酒陶 柳野」同様、京都の割烹や飲食店を手掛ける木島徹さんによる設計
“和食”と一口に言っても、雅やかな懐石料理もあれば、イノベーティブ系日本料理もあり幅広いが、「ととよし」は毎年その時期が来たら京都で食べたくなる旬の料理と食材を大切にした正統派和食店だ。

¥13,000のコースは水物を含む10品前後。蕪をすりおろし、卵白と合わせ、中にぐじ(甘鯛)を忍ばせて蒸し上げた京都の冬のご馳走、かぶら蒸し
「冬になったらかぶら蒸し、夏が来たら鱧が食べたなるでしょ。奇をてらわず、旬の食材をシンプルな調理法で、素材のおいしさを伝えていきたいです」と、杉井さん。

杉井さんの実家の鮮魚店「魚よし」の屋号にあやかり、店名は「ととよし」に
さくっと軽い色白の衣をまとった天ぷらや、絶妙な火入れの魚や肉の炭火焼きなど、コースでは、派手さはないがしみじみおいしい料理を小ポーションで品数多く提供。
杉井さんの実家は錦市場の鮮魚店「魚よし」であり、淡路島や明石など瀬戸内で採れたお造りも自慢だ。〆にはおにぎりと味噌汁が登場。ふっくら柔らかめに炊かれたごはんでふんわりにぎられていて、心とおなかをほっこりと満たしてくれる。本店のバーは、ナチュラルワインを得意としていて、こちらでも食事のお供に楽しむことができる。

ふっくら柔らかく握られ、米の甘みを感じるおにぎり
地元の大人たちが、気負わず、ちょこちょこおいしものを食べたい夜に訪れる一軒。京都旅をした際の和食の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。

34歳の料理人、杉井雄大さん。料理は1人で切り盛り。現在はコースのみだが、今後はアラカルトも提供予定
ととよし
住所:京都市中京区竹屋町通寺町西入ル甘露町666
営業時間:17:00~22:00
定休日:水曜、他不定休あり
TEL. 075-741-6434
下木屋町の「suba」

紅しょうがと白味噌のペーストを添えた「国産牛ホルモンと黄ニラのそば」¥1,300
2021年大晦日にオープンして以来、連日賑わう立ち食いそば店「suba」。京都でわざわざ立ち食いそば?と思う方もいると思いますが、京都に来た友人たちが、食いしん坊のみならず、感度の高い大人たちもこぞって”今、行きたい店”として名前を挙げる話題の店です。

簡素ながら目を惹く店構え
店を開いたのは京都で飲食店を展開する鈴木弘二さん。食×カルチャーの融合を得意とし、7年前に開いた「sour」はフレッシュフルーツを使ったサワーブームの火付け役となり、東京のアパレルショップやホテルなどでもポップアップショップが開催されるほど話題になりました。
最新店舗となる「suba」も、従来の立ち食いそば屋とはまったく違ったスタイルに。店舗は建築家・関祐介氏がデザイン、そばの鉢は滋賀県の「NOTA_SHOP」が制作、ユニフォームである法被はデザイナー尾崎雄飛氏が担当と、ミニマルな店に見えて計算づくのかっこよさ。

サイドも必見。テーブルがわりに置かれた橋本知成氏の陶芸作品
極めつけはテーブルがわりに置かれた陶芸作家・橋本知成氏の作品。「美術作品を飾るんじゃなく、その上で食すっておもしろいじゃないですか」と、鈴木さん。美術館に展示されていてもおかしくない大作を知らない人同士で囲んでそばをすする光景は斬新すぎる。

陶芸作品ゆえ表面もフラットではなく、鉢を置くとつゆがこぼれそうなほど傾いてしまうのもご愛敬
さらに出てきたそばも、オリジナリティーあふれる食材使いや大胆な盛りつけ方で、フォトジェニック。

器からはみ出すほど、大ぶりエノキの天ぷらがのった「エノキダケ天そば」¥700
一般的な立ち食いそばはさっと食べて店を出ていく人が多いため、つゆを残すことが前提で色も味も濃く作られているという説もあるが、こちらのそばつゆは、昆布と数種類の削り節で取った出汁がベースの、飲み干したくなるおいしさ。京都のうどんに通じるしみじみとした味わいだ。

コンビニのようなフィルム包装された本日のおにぎり。玄米焼き鮭や季節の炊き込みご飯など、4種類ほど各¥300
suba(すば)
住所:京都市下京区木屋町通松原上る美濃屋町182番地10東
営業時間:12:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:不定休
TEL. 075-708-5623
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御所南「而今 平たて」

デザートに見えて実は白和え。季節の白和えはフルーツや野菜をかえて毎日オンリスト。豆腐を攪拌した後、裏ごしし、クリームのようなふわふわの口当たり。この日は、イチゴとうるい¥1,200
京都には値段もスタイルもさまざまに星の数ほど和食店があり、「和食のオススメ店は?」と、ばっくり質問されると正直、答えるのが難しい。今回紹介する「而今 平たて」は、「昔ながらの割烹のように店主と相談しながら好きなものをいろいろ食べたい」という方や、日帰り出張や旅の最終日にディナーを早めにとりたい方にぴったりな一軒です。

お客さんに合わせて料理の内容や量を柔軟に対応する店主・平舘亮祐さん
店は、15時からオープンという割烹には珍しい営業時間に。15時から17時は”酒と肴”の時間、17時以降は”一品料理とおまかせコース”の時間と銘打っているが、15時から17時はコースがいただけないだけで、一品料理に関しては夜と同じラインナップになっている。「早い時間は一品料理をアテに軽く一杯という酒場遣いでも来て欲しい」という思いから、”酒と肴”とあえて謳っているそう。
店主・平舘亮祐さんは、昨年4月に独立する前は、先斗町の名割烹「余志屋」で別館の料理長を任されていた和食歴18年の料理人だ。

新玉ねぎのムースとホタルイカ¥1,400。新玉ねぎは甘みを引き出すため、半日かけてお出汁で炊き、攪拌。ゼラチンと卵白を混ぜ、ムース仕立てに。玉ねぎの甘さが凝縮したムースと酸味がしっかりとした土佐酢のジュレ、こっくりとした黄身酢のソースが絶妙なコンビネーション
自身の店では、素材の味をストレートに味わえる正統な割烹料理もあれば、新玉ねぎのムースや土佐酢のジュレを添えたホタルイカや、ふわふわの白衣とフルーツを合わせた白和えといった趣向を凝らした一品もあり。人数やリクエストに合わせて量や内容を調整してもらえ、「ローストビーフは2枚でいいけど、付け合わせの浅漬けはたっぷり添えて」なんて言うわがままにも応えてもらえる。

昆布とかつおの出汁にハマグリの旨みが加わった吸い地がしみじみおいしい。上にのった木の芽やワラビも名脇役。ハマグリと竹の子の椀物¥2,300(写真は大ぶりのハマグリを使った1.5人前¥3,450)
接待利用の場合は取り分けてから提供されることも多く、キメ細かいサービスも心憎い。
おまかせコースは、あらかじめおおよその内容を決めてはいるが、日本酒好きな方には酒肴をちょこちょこ出したり、逆にお酒が弱い方には手巻き寿司を加えたり、お客さんが店に来てから、内容を変更することも多いそう。

京都御苑のほど近く。地下鉄丸太町駅より徒歩2分
単品注文の場合も、まず2、3品がおまかせで供されるスタイルだが、ビール党には揚げ物からスタートしたり、女性二人組には女性に人気の高い白和えを出すなど、おまかせの内容も臨機応変だ。
最近は割烹と言っても、お決まりのコースのみという店も増えているが、こちらでは、店主がそれぞれの客に合わせて料理を作る、昔ながらの割烹のもてなしを味わうことができるのが醍醐味だ。

カウンター7席のほか、半個室もあり
而今 平たて(じこん ひらたて)
住所:京都市中京区車屋通夷川上ル少将井御旅町352の1
営業時間:酒と肴15:00~17:00、一品料理とおまかせコース17:00~(L.O.21:00)
定休日:月曜(月1回連休あり)
TEL. 075-221-2288
おまかせコース¥14,300~(前日までの要予約)
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お弁当・手土産
五条富小路「アロウネノ」のうね乃弁当

ふたを開けると、だし巻き玉子が1本まるごと現れる。「うね乃弁当」¥1,620
「うね乃」は創業以来120年、添加物を一切使わず、昆布や鰹節といった上質な天然だし一筋の老舗である。販売されている惣菜やお弁当もすべて無添加だ。さらに、商品すべてに天然の旨みが詰まっただしが惜しみなく使用されている。

すべての商品に天然だしを使用。だしの老舗だからなせる技
おひたしや煮炊きものなど、京都の家庭で昔から食べられているおばんざいもあれば、洋食惣菜もラインアップ。メンチカツやポテトコロッケ、ハンバーグにもだしが使われていて、旨みの底上げがされている。

だし巻き玉子はもちろんのこと、海苔の下に隠れているおばんざい、ごはんにまでもだしが効いた「うね乃弁当」
多彩な商品のなかでもお勧めは「うね乃弁当」。海苔弁当の上に、形を保つことができる限界ギリギリまでだしを加えただし巻き玉子が1本まるごとのっていて、ビジュアルもかなりのインパクト。海苔をめくると、だしを浸してから昆布をからめて揚げた鶏の唐揚げやさばそぼろ、おひたし、きんぴらごぼうが現れ、さらにごはんまでだしで炊いてあり、だしづくし。
時間が経つとだし巻きからだしがジワリと溢れ出し、具材や海苔がごはんに馴染んでからいただくのもおいしい。
新幹線に乗る前に立ち寄り、駅弁がわりに購入するのがおすすめ。店のほど近くには桜並木が美しい鴨川もあり、春にはお花見のお供にも。京都が誇るだし文化を気軽に味わってみてください。

手軽なだしパックや便利なだし調味料など、自社製品が並ぶコーナーも。

イートインコーナーもあり。ワインや日本酒も楽しむことができる。

五条通に面したガラス張りのショップ。京都駅までは車で約5分ほど
アロウネノ(ALLOUNENO)
住所:京都市下京区本塩竈町557メゾンドール五条1F
営業時間:11:00~20:00
定休日:火曜
TEL. 075-354-1600
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烏丸「YOLOs(ヨロズ)」

「YOLOs」は”You Only Live Once”を略した言葉。「人生は一度きり。食事は1日3回きり。だったら愉しみましょう」という想いが込められている
2022年7月にオープンした食のセレクトショップ「YOLOs」。実はこちらは、小説家の原田マハさんが発起人となり、5人の食いしん坊仲間によって開かれた店だ。

街中に位置し、阪急・烏丸駅、地下鉄・四条駅から徒歩5分と、帰路につく前に立ち寄りやすい
コロナ禍で外出がままならなくなった時、家族と囲む食卓やひとりで嗜むワイン、ちょっとご褒美なスイーツなど、「世界を元気にするのはうまいものなんだ」と実感したことが店をオープンするきっかけになったそう。
扱う商品はすべて、ストーリーがある、人に贈った時や食卓を囲んだ際に会話が生まれるものに。

全国の有名レストランから支持される岡山「吉田牧場」のチーズは、カチョカバロやコンテタイプなど、数種類用意。ラクレット1カット約¥1,300
小売りはほぼしていない岡山「吉田牧場」のチーズや、滋賀県でバラ作りに取り組む「WABARAローズファームケイジ」の和ばらの花びら茶など、日本各地の生産者と直接話し、ほかでは手に入りにくい菓子や加工品、酒、お茶をセレクト。

「食堂おがわ」の柚子胡椒。辛いだけでなく、柚子の風味がしっかり楽しめる澄んだ味わい柚子胡椒¥1,200
京都屈指の予約が取れない店「食堂おがわ」の柚子胡椒をはじめ、レアな京都土産も見つかる。なかでも、日本料理「木山」がYOLOsのために作るソフトクッキーは週1回、金曜のみ数量限定で入荷する逸品だ。

毎週金曜に入荷する日本料理「木山」製ソフトクッキー「香ノ実寄せ」¥2,160
元々、「木山」のコースの最後に薄茶と共に出されていた菓子で、オレンジピールや松の実、さらには山椒入りで、和のアクセントが効いている。

原田マハさん著「風のマジム」(講談社刊)と作品に登場するラム酒のモデルになった「CORCOR
アグリコール」¥720ml¥4,505
原田マハさんの著作物を含め、食にまつわる本も取り扱っている。マハさんの小説と共に小説に登場した沖縄・南大東島のラム酒を購入することもできる。
商品点数は決して多くない、少数精鋭の品ぞろえだが、大切な人に贈ったり、口福に浸れる自分用土産に見つかるはずだ。
YOLOs(よろず)
住所:京都市中京区蛸薬師通烏丸西入ル橋弁慶町228 101号
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜、他不定休あり
TEL.075-252-5900
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カフェ・スイーツ
西陣「焼き菓子工房コレット」のタルトタタン

この日のタルトタタンは、紅玉、スミスサイダー、アニーエリザベス、ピンクレディー、グラニースミス、春紅玉の全6品種。1台に800g(5〜6個分)のリンゴを使ったタルトタタン各¥600
「京都でわざわざタルトタタン?」と思われるかも知れないが、「焼き菓子工房コレット」は多い時で6種類のタルトタタンが並ぶ、全国的にも珍しい品種違いのタルトタタンを持ち帰って、食べ比べができる。

リンゴのタルト。この日はアップルパイもグラニースミスと紅玉の2品種。各¥600
「焼き菓子工房コレット」は、オープンして13年。焼き込むことでフルーツの旨みをギュッと凝縮したタルトをはじめ、クッキーやバナナブレッドが並ぶ、焼き菓子専門店だ。菓子はすべて店主の三井素子さんがひとりで作っているため、週末2日間のみ営業している。
三井さんはパティシエになる前はフレンチレストランに勤めていたこともあり、菓子作りも、料理人らしい素材を生かすことをモットーにしている。しっかり焼き込んだ粉の風味を感じるタルトや、フルールドセルで塩気を効かせたワインに合う塩サブレなど、ただ甘くおいしいだけでなく、キャラや味の輪郭がキリッと際立っている

ビターなキャラメルとナッツ、ドライフルーツを用いた「秋のタルト」¥600。"秋"と名付けられているが通年販売されている
リンゴをキャラメリゼしてからタルト型に入れて焼くタルトタタンもあるが、こちらでは、リンゴの持ち味を生かすため、フランスの伝統的な製法に則り、生の状態でバターと砂糖を敷いたタルト型に入れて焼かれる。途中、パートプリゼをのせてさらに焼き込まれる。その後、リンゴと生地をなじませるため寝かせ、完成までに半日以上を要する。タルトタタンは、甘ったるさが一切なく、品種ごとの味の違いも明確に。食感も、甘露煮のようにトロトロにしていず、ゴロッとしたリンゴの食感が残っている。「同じ品種でも農家さんや時期によって味や食感が変わるんですが、今日のタルトタタンで言うと、春紅玉は身が固めで味が濃く、グラニースミスは口に入れるととろける食感、ピンクレディーは弾ける酸味と華やかな香りが楽しめます」。
タルトタタンはリンゴが出てくる8月末から作り始められ、ストックがなくなる5月頃まで作られる。晩秋から冬にかけては20品種を使い分け、多い時で6品種が店頭に並ぶ。
ひとりで2個、3個食べ比べることもあるが(甘さが控えめでペロリといける)、家族が集まった時は、お行儀悪いけど、大皿にのせて、みんなでフォークでつつき合って感想を言い合うのも楽しい。
ホールは、数量限定で取り寄せ可能なので、京都旅の予定がない方もタルトタタン好きはぜひ。

タルトタタン・ホール¥4,200(箱代込み)
COURTESY OF COLETTE

西陣織で知られる織物の街、西陣エリアに店を構える。地下鉄今出川駅から徒歩22分。京都市営バス乾隆校前から徒歩4分
焼き菓子工房コレット
住所:京都府京都市上京区新猪熊東町350 グランドムール西陣103
営業時間:土日13:00~17:00(売り切れ次第終了)
定休日:月~金
TEL.075(406)1284
ig@colette_kyoto
烏丸丸太町の「YUGEN」

「無花果と胡桃の炙り餅とお茶」¥1,900。お茶は、京都・和束の最高級煎茶、さえみどりを合わせて。さえみどりは、お茶を収穫する前に覆いをかけて遮光するかぶせ茶で、渋みが少なく、甘味や旨みを凝縮。3煎目まで楽しめる
宇治茶は日本三大銘茶の一つと呼ばれ、京都市内でも、日本茶をさまざまなスタイルで楽しめる店に出会える。日本茶を製造・販売する茶舗は、長い歴史を持つ老舗が大半を占めるなか、「YUGEN」は2018年に誕生。昨年2月に店舗を移転拡大し、注目を集める日本茶ブランドだ。

目の前で点ててもらえる薄茶
「YUGEN」で製造・販売されている茶葉は、宇治や宇治田原、和束、京田辺など、京都近郊の産地に限定されている。仲買い問屋を挟まず、生産者から直接仕入れることで、高品質な茶葉を低コストで提供。煎茶は、単一農園で収穫されたシングルオリジンも人気が高い。
店舗展開としては、「おいしい日本茶をコーヒーのように気軽に楽しめる場所があれば」との思いから2018年、わずか2.5坪の日本茶スタンドからスタートした。ここ数年で、日本茶を提供するカフェやカジュアルな茶処も増えたことから「YUGEN」は次のステージに進み、2022年2月に、築50年弱のビル1棟に移転オープンした。
新店舗の1階は、カウンターのみのカフェに。「茶の湯の文化は戦国時代に広がりました。茶室には刀を持って入ることが許されず、戦国武将にとって、茶室は唯一心が安らげる場所だったとも言われています。多忙を極めるストレスフルな今の時代にも、そんな場所や時間が必要だと思うんです」と、代表・須藤惟行さん。

風炉釜を備えたカウンター席
カウンターには風炉釜が備えられ、まるで茶室でお点前を拝見するかのように、目の前でお茶を淹れてもらうところから楽しめ、しばし日常を忘れ、ホッと一息つける場所になっている。

「桜餅とお茶」¥2,000(0月までの期間限定)。お茶は約6種類から選べる。大納言小豆のこしあんを道明寺粉の衣で包んで。中にはさくらんぼを忍ばせて
日本茶と共に供される菓子もお楽しみ。甘い菓子を日本茶で流すペアリングではなく、どちらの風味も引き立つよう、菓子は甘さ控えめに。大納言小豆を使ったこしあんを包んだ桜餅や白小豆の汁粉など、通常は上生菓子に使われるような最上級の素材を贅沢に使い、香りや味わいも格別だ。
2階ではワークショップやイベントが開催され、3階では現代作家の器の展示販売もあり。「暮らしのなかにお茶がある」と考え、店で使用している茶器をはじめ、暮らしにまつわるあれこれが並んでいる。

2階や3階は、コンクリートむき出しの壁と水面のような床のコントラストが美しい
ミニマルで凛と美しい1階とは打って変わり、2、3階は古いビルの面影を残しつつ、スタイリッシュにリノベーションされていて、まるで水を張っているように見える床も印象的だ。
行きたいところや見たいものが多すぎて、京都旅はスケジュールを詰め込みがちですが、ひと息ついて、ゆっくりお茶で一服してみてはいかがでしょうか。

抹茶は(30g)¥890〜¥4,100。数字が上がるほどグレードがアップ

1階のカフェはカウンター11席。週末や3時のおやつ時間は予約がオススメ
YUGEN(ゆうげん)
住所:京都市中京区亀屋町146
営業時間:11:00~18:00
定休日:不定休
TEL. 075-708-7770
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祇園「ハーモニカ」

直径12cmのタルトは1人で頬張っても、シェアしても。「イチゴのタルト」¥2,100
「タルトがおいしい店が祇園にできてるよ」と、友人に教えてもらい、「ハーモニカ」を初めて訪れたのが数ヶ月前。電柱には”この先行き止まり”の注意書きが貼られ、地元の人も入ったことないような路地を進む。”焼き菓子とデザート”と書かれた立て看板はあるものの、紋入りの暖簾がかけられた入口で靴を脱ぐというスタイルに、一瞬たじろいでしまうが、恐る恐る店に入ると、そこには色とりどりのサンダルが並んでいた。

複合空間「Gion Naito 123 market」の入口には「祇園 ない藤」が手掛けるぞうり形のサンダルJOJOのショップがある
元々こちらは老舗の履物匠「祇園 ない藤」の工房だった場所。昨年5月、「祇園 ない藤」のオリジナルサンダルJOJOのショップを含む複合空間「Gion Naito 123 market」に生まれ変わり、焼き菓子とデザートの店「ハーモニカ」はJOJOショップの奥で営業されている。

ライチのブランマンジェとミルクの泡が苦みのある日向夏をおいしく引き立てる「日向夏・ライチ・ヘーゼルナッツ」¥1,700
メニューには、季節のフルーツを使ったタルトが6種類ほど並ぶほか、趣向を凝らしたパーツを美しく盛りつけたアシェットデセールも10種類近くラインアップ。
店主・松本泰さんは、元フランス料理のシェフであり、菓子も素材ありきな料理人視点から作られている。

「香りは、味に奥行きをもたらす大切な要素です」と、松本シェフ。味と酸味はあるが、ほかのフルーツに比べ香りが少ないキウイは、仕上げにローズマリーとライムの皮をトッピング。「キウイのタルト」¥1,500
例えばタルトは、通常1人用は直径5、6cmのタルト型で作られることが多いが、「ハーモニカ」では直径12cmのものを使用。あくまでもフルーツとタルトが主役で、カスタードクリームはそのつなぎ役と捉え、カスタードクリームはタルト生地の上に薄くのばす程度に控えめに使われている。「小さい型だとクリームをこんもりと高く盛りつけることになるので、口に運んだ時にフルーツのみずみずしさが際立たず、味のバランスが崩れてしまうのもイヤなんです」。フルーツによってはフレッシュだったり、焼き込んだり、柑橘のタルトは、バーナーで炙ってみずみずしさはそのままに、苦みを和らげることも。カスタードクリームの濃さやクリームに使うリキュール、上にのせるハーブなどもフルーツによって巧みに変えられている。

デセールは、オープンキッチンのカウンター前に配された大テーブルでいただける
「直径が大きいとフルーツの個性を生かして盛りつけられるのも魅力」と、松本シェフが言うように、フルーツ本来の形や色を生かしたデコレーションは、まるで大輪の花のような美しさ。直径12cmと聞くと1人では大きいかと思うが、甘ったるさがなく、軽やかで、気づけばペロリ。遠方から来るファンは、アシェットデセールを交え1人3、4皿食べる人もいるとか。
タルト類は持ち帰るほか、カヌレやフィナンシェなどの焼き菓子もあり。京都通のなかには、”お土産は京都らしさよりおいしさ重視で選ぶ”派が増えているが、そんな方にもお勧めの一軒だ。

大通りと打って変わってひっそり。祇園の路地奥の一軒家。暖簾が目印
ハーモニカ
住所:京都市東山区亀井町43-2 Gion Naito 123 market内
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:火曜
TEL. 050-3551-8625
公式サイトはこちら
祇園「ZEN CAFE」

上生菓子¥800。4月の上生菓子はきんとん製の遠山(えんざん)。桜に加え新緑が増える4月の山が表現され、4月も末に近づくほど緑の分量が増えるそう
和菓子屋さんと一言に言っても、菓子司もあれば、饅頭屋さんや餅屋さんもあり。菓子司のなかには上生菓子の予約販売をメインにしている店もまだまだ多く、持ち帰り専門店が主流に。そのため「イートインで上生菓子を食べたい」と、リクエストを受けると、祇園の「鍵善良房」が手掛ける「ZEN CAFE」をお勧めすることが多い。
「鍵善良房」は、江戸享保年間創業、京都の花街・祇園で京菓子を作り続ける菓子司。最近は京都以外でも商品を買える和菓子店が増えてきたが、「鍵善良房」は京都のデパートにすら出店されていない、昔ながらの真摯な仕事と一対一の商いにこだわる店だ。

祇園の路地裏に建つビルをリノベーション。お向かいには鍵善良房が手掛ける美術館「ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM」もあり
2012年にオープンした「ZEN CAFE」は、本店とはまったく違う菓子のラインナップになっていて、上生菓子もここでしか食べられないものに。上生菓子は季節がわりだが、きんとんが出されることが多く、初めてこちらのきんとんに出会った時、その繊細で儚げな姿に驚いた。通常、きんとんのそぼろあんは、馬毛の裏ごし器を使って作られるが、こちらの裏ごし器は、馬毛の目が細かく、そぼろあんも糸のような細さだ。このそぼろあんを崩さず、あん玉に纏わせる職人技もすばらしく、持ち帰り不可だからこそ出せる上生菓子になっている。見た目もさることながら、口に含むとふわっと崩れる、柔らかな食感もたまらない。

吉野葛と水、砂糖のみで作るくずもち¥1,000。葛の風味を味わえ、そのままでもおいしいが、途中で黒蜜やきなこを加えると、また違った味が楽しめる
また、通年で出されているくずもちもファンが多いメニューに。本店でいただける名物のくずきりと、砂糖を使う以外は、吉野葛と水というまったく同じ材料なのに、食感が全然違っている。つるんとのどごしを楽しむくずきりと違い、こちらのくずもちは、ぷるんとしていて、口に含むとむっちり、とろけていく。葛の風味もしっかり感じ、そのままでもおいしい。

本棚の前には1人掛けのイスとテーブルを置かれ、書斎のような雰囲気に。奥にはテーブル席も。
金澤富(IAT STUDIO/Architecs)設計によるミニマルモダンな店内は、北欧の家具を配し、アートを飾った上質な空間に。書斎のような1人席や半個室のテーブル席も備え、しばし喧噪を忘れ、ゆったりお茶の時間を楽しむことができる。

目の前に緑を望むカウンター席

彫刻家・樂雅臣氏の作品をはじめ、アートは和洋、新旧織り交ぜて飾られている
ZEN CAFE
住所:京都市東山区祇園町南側570-210
営業時間:11:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
TEL. 075-533-8686
公式サイトはこちら
バー
京都駅南「ALKAA(アルカー)」

オレンジの果汁や皮、カラマンシービネガーを使った柑橘香るキャロットラペを添えた自家製ロースハム¥770。豚の脂に負けない厚みのある白、アルザスのピノグリグラス¥1,500
2022年3月、京都駅の南側にオープンしたナチュラルワインに特化したワインバー「ALKAA」。京都駅の新幹線八条口まで徒歩4分という立地に加え、午後2時オープンという営業時間も、旅行者がホテルのチェックイン前や帰路につく前に立ち寄りやすい一軒だ。

飲食店不毛の地と呼ばれる京都駅の南に、2022年3月オープン
看板に”ワインとおやつ”と書かれているように、ナチュラルワインの相棒には、シャルキュトリーや前菜だけでなく、焼き菓子やプリンを推奨。夫婦二人で切り盛りされていて、パティシエの妻・堅田恵子さんがおやつ作りを担当している。
とはいえ、”カフェ使いもできる”ワインバーではなく、コーヒーをはじめ、ソフトドリンクは一切ない。カヌレは、少し皮が厚く、外カリッ、中むっちりな理想の仕上がりでファンも多いが、持ち帰りはできず、あくまでもワインのお供というスタンスを貫いている。

「辛口だけどドライフルーツのような甘味があり、カヌレの甘味とよく合います」と、店主・堅田さん。発酵が終わったアマローネの澱や絞りかすを混ぜて発酵させたヴァルポリチェッラ・リパッソ・グラス¥1,400。カヌレ¥250。定番菓子にはほかにフィナンシェ、プリン、ガトーショコラがある
「カヌレには、同じボルドー地方の酸味が強くないコクのある赤や酸化熟成させて造るヴァンジョーヌがよく合います。フィナンシェにはバターの油分を受けとめてくれるオレンジワインがオススメです」と、ソムリエである夫・善孝さん。
グラスワインは白・赤それぞれ常時5種類、スパークリング2種類、食後酒も数種類用意。自分でボトルを見て選ぶこともできるほか、善孝さんにお任せすれば、出合ったことがないペアリングの妙を堪能できる。

1階はカウンター7席
路地奥の一軒家という隠れ家的なロケーションで、1階はミニマルながら木の温かみを感じるカウンター席。そして2階はアンティークの照明や家具を配した北欧のリビングのようなテーブル席になっていて、どちらも居心地抜群。新幹線の時間までちょっと一杯のつもりが、一本、二本と新幹線の時間を遅らせる人が多いというのもうなづける。

2階はテーブル席。家のリビングのようなくつろげる雰囲気

小窓からちらりと覗くことができる階段下のワインセラー。ナチュラルワインはイタリアやフランスが中心。グラス¥1,200~¥2,200

ALKAA(アルカー)
住所:京都市南区東九条西山王町15-7
営業時間:14:00~24:00(休みの日の翌日は18:00~)
定休日:不定休(Instagramでお知らせ)
TEL. 070(9017)1507
公式サイトはこちら
モーニング・朝食
銀閣寺「酒菓喫茶 かしはて」の朝菓子の会

「朝菓子の会」一品目は「国産オレンジのサラダ仕立て」。オレンジとカマンベールチーズは熟成バルサミコとオリーブオイルで味付け、柑橘と相性のいいカカオニブとココアをトッピング
2022年9月にオープンした「酒菓喫茶 かしはて」は店名の通り、菓子やお茶、お酒を提供する喫茶店だ。店主・得能めぐみさんは、京都の人気カフェ出身で、チャイニーズ・ガストロノミーでも腕を磨き、季節のフルーツを使ったケーキやパフェを得意としている。

二品目は金柑の甘露煮を忍ばせた「ゴールドキウィとヨーグルトクリーム」。軽やかなヨーグルトクリームの上にはレモンカートをドット柄にあしらい、ディルをトッピングし、ミモザをイメージ
店の周辺には銀閣寺や法然院など、観光名所が点在し、「朝のスタートを切るにはぴったりなロケーションでしょ」と、通常営業の前に、菓子4品をコースで楽しめる「朝菓子の会」も開催されている(3営業日前までの要予約)。
得能さん自身が「しっかり甘い菓子が苦手」ということで、甘ったるさは一切なし。朝をイメージし、巷のアフタヌーンティーやデセールコースよりも軽やかな構成で、4品食べても食べ疲れせず、心とおなかがスーッと満たされていくようだ。

この日のグランデセールは「イチゴとカスタードのパイ」。極薄のパイがエアリーなミルフィーユに、ピスタチオとカルダモンバニラのアイスクリームを添えて。3月は通常営業時間中にも単品で注文することもできる。¥1,450
内容は旬のフルーツの移り変わりと共にどんどん変わっていくが、通常はフルーツサラダからスタートし、軽めのデセール、そしてグランデセールに続く。
コースの最後は、通年を通して白松の木箱が登場。蓋を開けると枯山水の庭が現れ、目を楽しませてくれる。

コースの最後に登場する「食べられる枯山水」。朝菓子の会は¥3,800。3営業日前までの要予約
銀閣寺にある砂盛り、向月台に見立てたフィナンシェや抹茶パウダーで苔を模したチョコレートケーキ、白砂をイメージした砂糖にはミニサイズのレーキで砂紋まで描かれていて、遊び心たっぷり。
桜の名所として名高い哲学の道にもほど近く、まだ人も少ない早朝、南禅寺から哲学の道を散歩してから訪れるのもおすすめだ。

アンティークの家具が配された店内には、中国・ミャオ族の民族衣装や韓国のポジャギ、和花が飾れていたり、ミックス感が素敵

「ひとりでやって切り盛りするため、お待ちいただく時間も眺めて楽しんでいただけるように」と、テーブルには洋書のビジュアルブックが置かれ、メニュー表はその中にそっと忍ばせてある
酒菓喫茶 かしはて
住所:京都市左京区浄土寺上南田町37-1
営業時間:12:00~17:00(LO16:30)、朝菓子の会は10:00スタート
定休日:水曜、他不定休あり
TEL. なし
朝菓子の会は3営業日前までの要予約
※桜の季節の繁忙期は、通常営業時も前日までインスタグラムのDMから予約が可能
予約はインスタのDMより
公式インスタグラムはこちら
河原町「SPICE GATE」の朝カレー

京風スパイス朝定食「カレーリーフ香る魚介出汁カレー」¥1200
「SPICE GATE」は、全国的にも珍しい朝営業を行なっているカレー専門店だ。「朝からカレーは重たい・・・」と思われるかもしれないが、「SPICE GATE」では、「京風スパイス朝定食」と題し、和朝食をイメージした、寝起きのおなかにもあっさり優しいカレーを提供している。
プレートにライスとカレーのほか、副菜がたっぷりのったスタイルは、南インドのミールスを彷彿させるが、その内容は、ニゲラの梅キクラゲやアサリとメースの佃煮、カシミールチリの千枚漬など、和朝食をスパイスを使って再構築。バスマティライスも「祇園 北川半兵衛」の煎茶で炊くことで、グルタミン酸でうま味を加味し、香り高く仕上げている。プレートに添えるカレーは2、3種類から選べるが、今回は、定番の「カレーリーフ香る魚介出汁カレー」をセレクト。

出汁の効いたサラサラのカレーをかけると、お茶漬け感覚で楽しめる
まずは、プレートにのった汁気のないパラパラとした鶏キーマカレーや副菜を少しづつ混ぜながらいただき、最後は、「カレーリーフ香る魚介出汁カレー」をかけて豪快に。朝はスパイス使いを控えめにしているそうで、昆布やかつお、あさりから取った出汁をかけると、カレーと言うよりも出汁茶漬けを食べている気分に。食べすぎ、飲みすぎた日の翌朝にも、軽くペロリといけるおいしさだ。

一般販売が少ないカシミールチリをはじめ、スパイスや香辛料が勢揃い。20gから購入できるものもあり、試してみたかったスパイスも気軽に買える
「SPICE GATE」は、京都・四条烏丸にあるビリヤニ専門店「INDIA GATE」の2号店として2022年5月にオープン。「INDIA GATE」では、元々、店で使うマニアックなスパイスを取り寄せていて、スパイス好きの常連さんからスパイスを分けほしいという声も多かったため、それならばとスパイス専門店をオープンすることに。店内が広かったので、カレーも提供することになったそう。

バターのかわりにギーを使ったスコーンは「ホウジチャイ」や「シナモンシュガー」など日替わりで3種類。テイクアウトもできる
さらにカレーのほか、パティシエのスタッフが作るギーやスパイスを使ったスイーツやスコーンも楽しむことも。

ギースコーン「キャラメルペッパー」¥300
バターのかわりにギーを使ったスコーンは、サクふんわりな食感に。朝営業の際は、カレーを食べずに、チャイをお供にスコーンやスイーツを注文する人もいたり、甘い朝食派もおさえておきたい一軒だ。

ランチは、朝食とは趣向を変え、鹿モモカツカレーをはじめ、がっつり系カレーを提供される

焼き上がったばかりの「カスリメティ香るベリータルト」。カレーによく使われるスパイス・カスリメティは酸味や甘味と相性よく、ベリーのタルトに使用。1ピース¥650
SPICE GATE
住所:京都市下京区恵美須之町546ー1 しきさい寺町ビル2F
営業時間:7:30~L.O.11:00、11:30~L.O.16:00(水曜・金曜~L.O.21:00)
定休日:火曜
TEL. 075-741-7554
公式サイトはこちら
寺町三条「スマート珈琲店」

ホットケーキは昭和7年の創業時から変わらないメニュー
昔は、京都旅行と言えば、寺社仏閣に湯豆腐、抹茶スイーツ…と、わかりやすく京都らしいものが求められていたが、最近は地元の人に愛される普段着の店や食に注目が集まっている。
街のおうどん屋さんや中華料理店など、以前はご近所ユースだった店が行列必至の人気店になってしまうことも多く、「スマート珈琲店」はまさにその代表格だ。
私の実家は「スマート珈琲店」のご近所にあり、ホットケーキ目当てに、小さい頃から祖母や両親によく連れてってもらったが、その頃はタバコ片手にコーヒーを楽しむおじさんたちで賑わっていて、いつ行っても並ぶことなく入れていた。
「メニューも店もなんにも変わってないんやけど。25年くらい前、兄が修行から戻ってきて、昼だけ2階で洋食ランチをやりだした頃から、雑誌でも取り上げてもらったり、旅行の人がぐんっと増えた気がします」と、3代目店主・元木章さん。

50年前から変わっていないという店内
オープン時間も昔から変わらず朝8時。モーニングメニューはないが、サンドイッチを朝食に楽しむ人で賑わっている。甘い朝食好きには、ホットケーキにするかフレンチトーストにするか悩ましいところだ。

ホットケーキ、フレンチトースト各¥750
「スマート珈琲店」は、昭和7年に食堂として創業し、戦後に喫茶店に転身したが、ホットケーキは食堂時代から出しているメニューだそう。
初代の奥様(現店主の祖母)のレシピで今も作られていて、分厚い鉄板で焼くことでふっくら膨れ上がり、これぞホットケーキのお手本というべき美しい焼き色に。自家製シロップも甘すぎず、ビシャビシャにかけてホットケーキにシロップをたっぷり吸わせて食べるのがおすすめだ。
フレンチトーストは、厚切りの食パンを使い、卵液に漬けこまず、注文を受けてからさっとくぐらせ、揚げ焼きに。とろとろ系とは違う揚げパンのよう軽さが魅力だ。自家製シロップが添えられているが、テーブルに置いてある砂糖をかけて食べるとさらに揚げパン感が増し、懐かしい味わいに。
1日の始まりを幸せな気分でスタートできます。

男女がコーヒーを飲んでいる姿が描かれた店のシンボルマークは初代によるものだそう

重すぎず、軽すぎず、苦すぎず、強すぎず…、「すぎない味」を心がけているという、5種類の豆をブレンドした自家焙煎コーヒー¥600
スマート珈琲店
住所:京都市中京区寺町通三条上ル天性寺前町537
営業時間:8:00~19:00(2Fランチは11:00~14:30L.O.)
定休日:無休(2Fランチは火曜休)
TEL. 075-231-6547

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント