TEXT & PHOTOGRAPHS BY JUNKO AMANO
丸太町「草とワイン|grass and glass」

ハーブやエディブルフラワーが入ったグラスにワインを注ぎ、スワリング。植物の香りをワインに移していく
2026年6月にオープンした「草とワイン|grass and glass」は日本で唯一、いや世界初の体験ができるワインサロンだ。
通常のワインバーとはまったく異なり、メニューは一斉スタートのコースのみ。町家の4つの部屋を回遊しながら、野草と香り、自然派ワインを掛け合わせた体験ができる。

ゲストみんなで円卓を囲む「調律の間」。奥は庭を望む「重香の間」
ワインにとって香りは、重要な要素であり、薫香をワインにまとわせたり、野草とアッサンブラージュするなんて前代未聞。それも、ナチュラルワイン愛溢れる注ぎ手が始めたとあって、京都のナチュラルワイン好きの間では話題になっている。
「例えるなら絵画作品。絵をいじるのではなく、額装をするイメージです」と、店主の奥山ひろゆきさん。
一つ目の「調律の間」では、ウェルカムワインを飲みながら、ハーブやエディブルフラワー、スパイスが入った4つのガラス瓶から好みの香りを選ぶ。

ハーブや花はドライとフレッシュに分けて使用。それぞれに陰と陽の香りをガラス瓶に閉じ込めている
二つ目の「重香の間」にはカウンター席を配して。「調律の間」のガラス瓶には、食べられない植物も含まれていて、選んだ香りのイメージに合わせて、奥山さんがまるでいけ花のようにハーブや野草、エディブルフラワーをグラスにいけていく。

京都・大原の野草ハンターが採集した野草や広島「梶谷農園」のエディブルフラワーが入った木箱
植物が入ったグラスに白ワインを加え、アッサンブラージュ。植物の香りが加わったワインを飲んでみても、違和感がまったくないのに驚く。ワインによっては、元からスパイスやハーブ、花の香りがするものがあるが、言われなかったら、ワイン本来の香りのようにも感じられる。

植物の香りをワインに移した後、グラスに注ぐ。手を加えていないワインとの飲み比べも楽しめる
三つ目の「火香の間」では、茶香炉でドライにした野草やハーブ、スパイスを焚き、その薫香をまとわせたグラスにワインを注ぐ。薪火料理と赤ワインをいただいた時のように、口の中でスモーキーな香りと赤ワインのペアリングが広がっていく。

グラスに薫香をまとわせてから、赤ワインが注がれる
最後の「余韻の間」は、この日の体験を振り返る部屋。お茶がわりに、焼酎とハーブティーの前割りが供される。

元宮大工の木工作家・北田浩次郎の作品をベンチやテーブルに使用。ワインと向き合っていた自分を解放し、ほっとひと息つける「余韻の間」
奥山さんは、2012年、修業先の東京のイタリア料理店でナチュラルワインに出会い、傾倒。2021年に、京都祇園で、カラオケが歌えるワインバー「vino tagiri」をオープンした。ナチュラルワイン好きとカラオケ好きは相まみえないように思われたが、すぐさま大人気に。2025年に惜しまれつつ幕を下ろした。

町家の構造や陰影を活かし、4つの部屋を巡ることができる
「今の世の中、スマホがあれば、ワインの情報が簡単に手に入り、購入もできてしまうでしょ。カウンターで注ぎ手が生産者や造り方についてプレゼンする必要性を感じられなくなってしまって」と、新しい風景として「草とワイン|grass and glass」を始動。
ロングコースで約2時間、香りや所作、空間の静けさまでも含めてワインを味わう没入体験に浸ることができる。

空間設計は、京都を拠点に建築、家具の設計施工を手がける「ikken」が担当
「草とワイン|grass and glass」
住所:京都市中京区 釜座通二条上る大黒町695
営業時間:14:00〜21:30
4つの部屋を回遊するロングコース(約2時間)¥11,000、「調律の間」と「重香の間」を巡るショートコース(約1時間)¥5,500、各コース共に1日2回開催、各回6名限定の一斉スタート
完全予約制
定休日:日曜
TEL. なし
公式インスタグラムはこちら

天野準子
生まれてこの方、碁盤の目と呼ばれる京都の街中暮らし。雑誌やWEBで京都にまつわるライティングやコーディネートを行っている。プライベートでは、強靱な胃袋を武器に日々、おいしいものをハント
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