東京から新幹線で1時間ほど北西へ向かうと山あいの町「軽井沢」に到着する。道中の車窓には、ここを訪れる旅行者なら誰もが知っているハッとするほど美しい風景が小さく現れては消えてゆく。そこここに柿の木が見え、黒い枝はオレンジ色に熟した実の重さで今にも折れそうだ。ひび割れた朱色の鳥居はピンクがかった肌色に色あせ、トタン屋根の工場が続き、低層アパートのベランダには洗濯物が並んでいる。



ランドアート

日本画家の千住博の依頼を受けて、建築家の西沢立衛が設計した「軽井沢千住博美術館」。
千住の代表作「ウォーターフォール」は、日本の多くの公共施設に展示されている


  

 人々は列車から見える田舎町の風景を軽井沢に期待する。だが、そこで目にするのは実用本位のこぎれいなコンクリートの駅。明るい照明に照らされたコンビニエンスストアがあちこちにあり、アイスクリームから着圧ソックスまで売っている。まさに現代日本の縮図のような街並みだ。とはいえ、どこか日本ではないような、外国にいるような感じがする。まるでヨーロッパ中央部やニューイングランドにあるような、こざっぱりした中産階級の通勤者たちの住む町。ジョン・チーヴァーの小説に出てくる、グレーのスーツ姿のビジネスマンたちが、金曜の晩には、そのジャケットをたたんで腕にかけて列車から降りてくる郊外の町を思わせる。