BY MICHINO OGURA, PHOTOGRAPHS BY TAKEMI YABUKI(W), HAIR & MAKEUP BY JUNKO KANEDA
「撮影に使ったカンペをもらってスケッチしたり、セットの小道具のPCで描いたり。場所も画材も選ばない。描きたいときが描きどき。いつでも描けるのが僕なりのスタイル」という香取。<後編>では、アーティストとしての“作品との向き合い方”を語る。
『TANK 100』のために制作した作品、アートとの向き合い方について語る ©T JAPAN
香取は絵を描く感覚をまるで“ゲームのよう”と表現する。まずは白いキャンバスを用意し、トランクの中に大量にストックしてある絵の具の中から、色を確認せずにひとつをつかみ出す。そして、自然と思いついた線やモチーフを描き進めて、「なんで、この色がここでくる?」「いやいや、この色のとなりに、この色はないでしょ」「色がこうくるなら、ここは塗らないでおこう」と自問自答しながらルールづくりをするのだと打ち明けてくれた。このルールは無限大の組み合わせがあり、毎回違った着地点になる。色やモチーフが増殖していくうちに楽しくなってきて、筆は止まらない。描いている瞬間は完全に“自由”でいるのだろう。

いつでも絵を描きだせるように、アトリエの机の下の引き出しやトランクに大量のアクリル絵の具を常備している

筆はほとんど使わない。絵の具を簡単に持ち運べるよう、箱に収納している

絵の具のしたたりを面白く感じたところから増殖していった作品
© SHINGO KATORI