BY MASANOBU MATSUMOTO
ソフィ・カル個展
『私の母、私の猫、私の父、この順に』|ペロタン東京
『なぜなら』|ギャラリー小柳
ソフィ・カルは、写真とテキストで構成される自伝的作品、あるいは他者へのインタビューをもとにした作品で知られる、フランスを代表するアーティストだ。1月5日より原美術館での開催中の展覧会に続き、ギャラリー小柳、ペロタン東京でも彼女の個展が始まっている。
ギャラリー小柳で展示されるのは、国内初公開となる《なぜなら》シリーズ。一風変わったコンセプチャルな写真作品群だ。それぞれの写真は、「なぜなら」で始まる、カルがその写真を撮った理由を印字したカーテンで覆われており、鑑賞者はそれをめくって写真を眺めることになる。本来、作品の裏側に隠されている「なぜなら」をあらかじめ知らせることで、写真を観るという行為を一新させるもくろみだ。
一方、ペロタン東京では、「Autobiographies(自伝)」シリーズから、家族の「死別」をテーマにした近年の3部作をメインに展示。最愛の母、猫、父の死に直面した時のカルの現実感を、写真と日記から引用したテキストなどで表現している。
特にユニークなのは、愛猫の死についての作品《スーリー・カル》。カルは愛猫スーリー(フランス語で“ねずみ”の意味)の死後、友人であるミュージシャン、カミーユとローリー・アンダーソンに愛猫へのオマージュ・ソングを依頼した。その“レクイエム制作の輪”に、ボノやクリストフ、ファレル・ウィリアムス、また新人のミュージシャンやメタルロック系のバンドも加わっていき、結果、30ものアーティストによる追悼コンピレーション・アルバムが仕上がったのである。ギャラリーでは、カルがミュージシャンらに資料として渡したスーリーに関するテキストとポートレイト、また愛らしいスーリーの写真をプリントしたレコードを展示。その音源も視聴することができる。