良質な展覧会は、いつだって新しいインスピレーションを与えてくれる。美術館や博物館、ギャラリーで現在開催中のものから、ぜひ訪れたい展覧会をT JAPANが厳選。2月のリストは、成熟した女性アーティストたちの個展

BY MASANOBU MATSUMOTO

『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇跡』|
東京都庭園美術館

 日本におけるシュルリアリスムの第一人者、滝口修造に見出され、1950年代に彗星のように登場した女性アーティストがいる。コラージュアーティストの岡上淑子だ。目黒にある東京都庭園美術館では、彼女の大規模な回顧展が開催中だ。

 彼女は、第二次世界大戦後に連合国軍が持ち込んだ『VOGUE』や『Harper’s BAZAAR』といったモード誌、『LIFE』などの掲載写真を素材に、幻想的で耽美的なコラージュ作品を制作。もともと服作りを学んでいたこともあって、優美的でファッショナブルな写真を引用した作品が多いのも特徴だ。会場には、50年代初頭のバレンシアガやクリスチャン ディオールのオートクチュール・ドレスも特別に展示され、彼女が制作に励んだ当時のファッションにもスポットが当てられている。

画像: 《夜間訪問》 c.1952 コラージュ、写真網目版印刷 東京国立近代美術館蔵

《夜間訪問》 c.1952 コラージュ、写真網目版印刷 東京国立近代美術館蔵

画像: (左) 《幻想》 c.1954 コラージュ、写真網目版印刷 個人蔵 (右) 《マスク》 1952 コラージュ、写真網目版印刷、紙 個人蔵 PHOTOGRAPHS: © OKANOUE TOSHIKO

(左)《幻想》 c.1954 コラージュ、写真網目版印刷 個人蔵
(右)《マスク》 1952 コラージュ、写真網目版印刷、紙 個人蔵
PHOTOGRAPHS: © OKANOUE TOSHIKO

 50年代半ばを過ぎると、岡上はコラージュ制作に限界を感じるようになり、写真作品や日本画にも挑戦している。そういったコラージュ以外の作品も、本展の見どころのひとつである。特に印象深いのは、花のスケッチ(会期中、展示替えあり)。花がつぼみから開花していくさまを連続して描いたスケッチには、幻想の世界に入り浸るようにコラージュ作品を生み出してきた彼女が、虚構ではなく、目の前にある現実世界を丁寧に観察し、そこに独自の美を発見していった様子がうかがい知れる。

 最近は岡上の作品集も出版されているが、ぜひともこの会場で観賞してほしい。というのも、東京都庭園美術館の本館である旧朝香宮邸は、アール・デコ様式の意匠が施された建物。写真の中の、川や海が作る曲線や地平線、また部屋の扉や丸窓など建築的な造形を活かした岡上のコラージュ作品は、この空間と共鳴するかのように、いっそう美しく見えるのである。

『岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇跡』
会期:〜4月7日(日)
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00〜18:00
(3月29日、30日、4月5日、6日は〜20:00)
休館日:第2・第4水曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
入場料:一般 ¥900、大学生 ¥720、高校・中学生 ¥450、65歳以上 ¥450
電話: 03(5777)8600(ハローダイヤル)
公式サイト

 

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