BY MASANOBU MATSUMOTO, EDITED BY T JAPAN
『杉本博司 本歌取り 東下り』
和歌の伝統技法「本歌取り」を、日本文化の通奏低音と捉え、自身の作品制作にも援用してきた杉本博司。2022年には、その本歌取りをテーマにした『杉本博司 本歌取り−日本文化の継承と飛翔』展を姫路市立美術館で開き広く話題を集めた。渋谷区立松濤美術館で開かれる本展は、その新展開。新作を交え、杉本の試みを紹介する。
![画像: 杉本博司 《カリフォルニア・コンドル》 1994年 ピグメント・プリント 作家蔵 ©Hiroshi Sugimoto](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/837e3f69fa5d503147e2c70c5719ab7543755c4d_large.jpg#lz:orig)
杉本博司 《カリフォルニア・コンドル》 1994年 ピグメント・プリント 作家蔵
©Hiroshi Sugimoto
たとえば、葛飾北斎の《冨嶽三十六景 凱風快晴》の赤富士を本歌とし、北斎が描いたと推測される山梨県三ツ峠山からの富士山の姿をとらえた新作《富士山図屏風》、中国宋時代の画家である牧谿の水墨画技法を本歌とした《カリフォルニア・コンドル》など。また本展の関連企画として、11月9日には渋谷区文化総合センター大和田で「杉本狂言 本歌取り」も公演に(受付は終了)。演目は、本展に出品されている《法師物語絵巻》を、杉本が独自に解釈した『死に薬~「附子」より』と『茸』。後者に登場する茸の笠は杉本自身がデザインしている。
![画像: 杉本博司 《富士山図屏風》 2023年 ピグメント・プリント 作家蔵 ©Hiroshi Sugimoto](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/da6c2de5e7b2e8de331111b9408ac42d86e9805e_large.jpg#lz:orig)
杉本博司 《富士山図屏風》 2023年 ピグメント・プリント 作家蔵
©Hiroshi Sugimoto
『杉本博司 本歌取り 東下り』
@渋谷区立松濤美術館
11月12日まで
公式サイトはこちら
『DXP (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)ー次のインターフェースへ』
AIやメタバース、ビッグデータなどのテクノロジーよって、人間の生き方や感性はどのように変化していくのか。あるいはそれらによってどのように拡張されたリアリティをもって我々はいま生きているのか。本展はそれらの主題をアートの視点から捉え、その先にあるデジタルと人間社会の未来を考察する企画展。アーティストだけでなく、建築家、科学者、プログラマーなど分野や領域を横断して11カ国23組、参加しているのも特徴だが、衣・食・住を含めた総合的なライフの可能性を提案している点も面白い。
![画像: アンリアレイジ《 =(2023-24年秋冬)》2022 © Koji Hirano](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/708a3321a6f4efd15be87b2ba7ded5b2d811c7ab_large.jpg#lz:orig)
アンリアレイジ《 =(2023-24年秋冬)》2022
© Koji Hirano
衣では、長らくデジタルとファッションの関係について取り組んできたアンリアレイジなど。建築コレクティブGROUPは、XR(クロスリアリティ:ARやVRの総称)を使い、物理的に存在しない建築の可能性を提示。明治大学宮下芳明研究室は、定量的手法を用いてコンピュータ・AIによる味の再現に関する研究を紹介する。
![画像: GROUP《Repair of the water environment in Shibuya》2023 © GROUP](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/8d5ff69d16dcb25d48d3ed86b8b4ffb93b89673c_large.jpg#lz:orig)
GROUP《Repair of the water environment in Shibuya》2023
© GROUP
本展覧会アドバイザーとして、英国のサーペンタインギャラリーのディレクターのハンス・ウルリッヒ・オブリストが参画しているのも注目だ。彼のキュレーションのもと、昨年、開幕したゲームの展覧会『WORLDBUILDING Gaming and Art in the Digital Age』(デュッセルドルフの「JULIA STOSCHEK COLLECTION」で12月10日まで)も広く話題を集めている。
『D X P (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ―次のインターフェースへ』
@金沢21世紀美術館
10月7日から2024年3月17日まで
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『In Praise of Shadows ヴェルサイユ宮殿 森田恭通 写真展』
1682年、ルイ14世の時代に正式に王宮が移されてから、フランス革命が勃発するまで、国王の居城として優雅な宮廷文化が花開いたヴェルサイユ宮殿。バロック・ロココ調の華麗極めたその空間は、長らくアーティストやクリエイターの着想源にもなってきた。インテリアを中心にグラフィック、プロダクトデザインも手がける森田恭通もそのひとり。アーティストとして写真作品も発表してきた彼は、数年にわたり、度々この地を訪れ、黄金と光のきらめきにみちた宮殿をモノクロームの写真に収めてきたという。
![画像: 王室礼拝堂の屋根 © Yasumichi Morita/Château de Versailles](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/816ec93171b156877bf1fa3e4af4bffdfd7d6fb8_large.jpg#lz:xlarge)
王室礼拝堂の屋根
© Yasumichi Morita/Château de Versailles
本展では、そのなかから約100点を選び、“光と陰”“表と裏”“地上と地下”といったさまざまな対比を交えながら展示する。タイトルの『In Praise of Shadows』は、陰影が生む日本的な美のあり方を見つめ直した谷崎潤一郎の名著『陰翳礼讃』にちなんだもので、森田いわく「どの時代にも変わらない人間の“光と陰”を写すために、ヴェルサイユ宮殿ほどふさわしい空間は存在しない」。宮殿内の「鏡の間」や「オペラ劇場」、加えて通常は入れないスペースも写真に写る。
![画像: オペラ劇場 © Yasumichi Morita/Château de Versailles](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783302/rc/2023/09/27/82bdd47e30b15add13b72eb0cd6d452c4df6f9fa_large.jpg#lz:xlarge)
オペラ劇場
『In Praise of Shadows ヴェルサイユ宮殿 森田恭通 写真展』
@CHANEL NEXUS HALL
9月27 日から11月5 日まで
公式サイトはこちら