BY MASANOBU MATSUMOTO, EDITED BY T JAPAN
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』
アーティゾン美術館が毎年開催している「ジャム・セッション」は、同美術館が所有する石橋財団コレクションと、本展のために選出された現代美術家の“共演”がみどころの展覧会。作家が特定の収蔵作品から着想を得た新作を含め、アーティストの作品とコレクション作品を一緒に展示し新しい視点を拓く。シリーズ第4弾の参加作家は、山口晃。大和絵に見られる「洛中洛外図」の様式を引用し、時に過去や現在、未来的なモチーフをミックスしながら、ユーモラスに描いた作品などで知られる美術家だ。
今回、山口が目を向けたコレクションは、雪舟の《四季山水図》とセザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》。前者は日本の伝統的な絵画の系譜にあるもの。後者は、西洋のモダニズム絵画の代表作だ。ちなみに、日本において「美術」という概念は、明治時代に西洋から輸入されたものだと言われているが、当時、多くの画家が模範としたものがまさにセザンヌだった。山口は、そうした日本的なコードや日本の絵画の本来性、また外的要因によって起こった日本のモダニズムとは何かを、本展を通じて問い直すという。なお、山口は「洛中洛外図」や「合戦図」など日本的な絵画様式を、西洋的な油絵の具で描いてきた。山口自身の作家性について自己言及する展覧会にもなりそうだ。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』
@アーティゾン美術館
9月9日から11月19日まで。
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『アルフレド・ジャー「終³」』
アルフレド・ジャーは世界各地で起きた歴史的な事件や悲劇、社会的な不均衡について、綿密な調査を行い、それらの現実の周縁にまで光をあてるようなプロジェクトを展開してきた美術家、建築家、映像作家。「ドクメンタ」や「ベネチア・ビエンナーレ」など国際展にも参加し、MoMAやテートなどにも作品が収蔵されている現代の重要作家のひとりでもある。
本展は、広島市現代美術館で開催中の『第11回ヒロシマ賞受賞記念展』(10月15日まで)、およびアルフレドの母国チリの国立サンティアゴ美術館で9月14日から始まる回顧展にあわせて企画されたもの。3章で構成される本展では、それぞれ、ヒューマニティ、写真というメディア、世界の終焉を暗示する作品が並ぶ。見どころのひとつは、アルフレドの友人でもある写真家・森山大道とのコラボレーション作品。また、《The End of the World》と題された彫刻作品も本展で世界初公開になる。
『アルフレド・ジャー「終³」』
@スカイピラミデ
開催中。10月14日まで。
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『開館60周年記念 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代』
この数十年前から、もの派や具体美術といった日本における戦後の前衛美術が、国際的に再評価されてきた。欧米からアジアへアート市場が拡大したことを背景に、戦後日本ではどのようなアートの前衛的ムーブメントが起こったのか、が検証されてきたわけだが、その関心は近年、工芸にも向けられている。本展がフォーカスする「走泥社」は、戦後1948年、八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の5人によって結成された前衛陶芸集団。焼き物の技法に基づきながら、器だけでなく、彫刻的な造形性を追求した「オブジェ焼き」などを提案し、日本の陶芸界に変革を起こした。
この展覧会では、1998年に解散することになる「走泥社」の、特に前期、1973年ごろまでの活動や作品を重点的に紹介。また、同時代のパブロ・ピカソやイサム・ノグチなどの作品も合わせて展示し、前衛陶芸が生まれた時代性、あるいはその時代が有していた前衛性の意味や意義も詳らかにする。
『開館60周年記念 走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代』
@京都国立近代美術館
開催中。9月24日まで。
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