BY NAOKO ANDO

都内にある森のアトリエ内に設えられた茶室にて。光を無限に反射するかのような真っ白な空間だ。
古代文明から仏教、宇宙物理学まで、壮大なレンジで思索を深め、科学者やエンジニアと協働しながらリサーチや実験を繰り返し、新たな表現を追求しつづける森万里子の回顧展が開催される。日本では2002年の東京都現代美術館における個展『ピュアランド』以来24年ぶり。都内のアトリエで話を聞いた。
「今回の展覧会の展示リストを見ながら、改めて初期の作品と今の自分とのつながりを感じました。さまざまなリサーチなどを始める前の作品は成長過程にありますが、原点みたいなものはあまり変わらずにここまで来ていると思います。繰り返し螺ら旋せんのように回りながら、本質的なところに近づいているようにも感じています」
1992年のデビュー時から自身を作品のモチーフとしてきた森。自らが登場しない初めての作品が、1999年にミラノのプラダ財団で発表した《ドリーム・テンプル(夢殿)》だ。法隆寺の夢殿から着想されたこの大型作品は、前述の『ピュアランド』でも展示され、大きな話題となった。
「内的な旅の始まりのような作品で、自分の内側を掘り下げる作業に集中していく分岐点だったのだろうと思います。その後は海外での展覧会がほとんどで、大型のインスタレーションが 旅のディティネーションとして、アートや建築、食といった街の魅力を掲げる場所が増えている。注目度も、その充実度も高まるなか、前橋は2016年に市が策定したまちづくりビジョン〈めぶく。〉を起点に、民間主導でアートや建築の街としての魅力を発展させてきた。そして今秋『第一回 前橋国際芸術祭 2026』がスタートした。2年に一度のビエンナーレ形式で開催される芸術祭には、現代アート、建築、音楽、演劇、詩、食など、さまざまなジャンルから70組のアーティストが参加。地元のクリエイターともタッグを組み、20以上のプログラムを用意している。また、特別な宿泊プランを白井屋ホテルが展開するのも注目だ。大人の探求心をくすぐる前橋の新たな魅力を、この芸術祭を通して発見してみるのはいかがだろうか。多いため、日本で見ていただく機会があまりありませんでした」
それらが一堂に会する本展。ソロモン・R・グッゲンハイム美術館・財団 シニア・キュレーター・アット・ラージのアレクサンドラ・モンローと、森美術館の片岡真実館長による共同キュレーションだ。
「本展の発案者であるアレクサンドラさんはニューヨークのファミリーのような存在なので、大変心強いです。片岡館長は、2024年にヴェネチアでの新作発表を見に来てくださったあと、トリノ駅近くの横断歩道で偶然お会いして、当時トリノで制作中だった作品をご覧いただく機会に恵まれました。まるで何かに導かれたようでした。お二人には、西洋だけでなく、東洋文化の流れをくむ現代美術という視点でも作品をご理解いただいているので、作品の見方がより深まるのではないかと思います。展覧会の構成は、3 人の共同作業のような感じですね」
本展は、ゆるやかな年代順の5 セクションで構成。30年あまりに及ぶ森の活動を俯ふ 瞰かんするとともに、肉体的にも精神的にも、調整、充電の場となっているという宮古島のスタジオで海を見ながら描いたドローイングなども展示される。観覧後は、森が提唱するビジョン「ワンネス」に感応し、生まれ変わったような気分になるかもしれない。
森 万里子
(もり・まりこ)●アーティスト。東京都生まれ。ニューヨーク、東京、宮古島在住。1992年チェルシー・カレッジ・オブ・アート卒業。1997年第47回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展にて優秀賞受賞。2014年ロンドン芸術大学より名誉フェロー授与。2022年宮古島に自身のスタジオ「ユプティラ」をデザイン。
Instagram:@marikomori

『森万里子:燦燦(さんさん)』
この《Wave UFO》(1999-2002年)も本展覧会にて展示予定。
©Richard Learoyd
会期:10月31日(土)〜2027年3月28日(日)
会場:森美術館 東京都港区六本木6 の10の1六本木ヒルズ森タワー53階
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