ジャコモ・ブレリは、田舎料理を作って人々にふるまうことに生涯をかけてきた。だが、そんな彼の運命を変えたのは、建築家のレンゾ・モンジャルディーノだった

BY DEBORAH NEEDLEMAN, PHOTOGRAPHS BY BERT TEUNISSEN, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

画像: ドラマティックなアールデコ時代を彷彿とさせる「ジャコモ・アレンガリオ」のエントランス。スタジオ・ペレガリが 2010年にデザインしたこのレストランの紫色をした合成樹脂の床は、火山の噴火で固まった火成岩や斑岩をイメージしている

ドラマティックなアールデコ時代を彷彿とさせる「ジャコモ・アレンガリオ」のエントランス。スタジオ・ペレガリが 2010年にデザインしたこのレストランの紫色をした合成樹脂の床は、火山の噴火で固まった火成岩や斑岩をイメージしている

 これらのレストランのほか、ブレリは、すべてスタ ジオ・ペレガリのデザインで、煙草ショップ、ペストリーショップ、カフェをオープンさせた。この春にはテイクアウト専門の店も出す予定だ。どの店も、それ ぞれの分野への強い情熱とロマンが込められた造りになっている。振り返ってみれば、智恵の宝庫である建築家と、彼に庇護された弟子たち、そして田舎出身のシェフ――もしくは彼自身がいうところの“がんこなトスカーナのわんぱく小僧”――に共通するものは明らかだ。品質にこだわるだけでなく、彼らはみな、過去なしには、現在はその豊かさと意味を失ってしまうという信念の持ち主なのだ。

 モンジャルディーノは、人間が過去と現在のあいだにつくりだす壁は不自然なものだという信念をもっていた。その証拠に、どこであれブレリの店に足を踏み入れると、別の時代にタイムスリップするような体験を味わえる。美しいビストロの中で、ペレガリはこう説明した。彼とサトリ・リミニは、現代にもふさわしく、かつ喜びにあふれた“プルーストの白昼夢”のような空間を創ろうとしたのだと。一方、ブレリはナポレオン3世スタイルのワインレッド色のベルベットの椅子に座って、子ども時代、貴重だった肉を大人数で少しずつ分け合って食べたことを回想していた。彼はふっと宙を見上げ、人さし指と親指を鼻の前でこすり合わせた。香りと情熱が溶け合ってひとつになっているという、イタリア人特有の表現だ。「カルネ・ブオナ(いい肉だ)」と彼は言葉をもらした。「あの肉のいい香りをいま味わっているよ」

 

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