クチュリエの「スキャパレリ」のパリのブティックや、「ホテル・モンタナ」の幻想的なインテリアデザインで知られるヴァンソン・ダレ。自身の仕事をまとめた作品集の発表のために来日した彼に、そのファンタジーに満ちた創作について聞いた

BY KANAE HASEGAWA

“ファンタジー”——。インテリアデザイナー、ヴァンソン・ダレが手がける空間を形容するうえでこれほどぴったりくる言葉はない。パリ、サンジェルマン地区の「ホテル・モンタナ」やヴァンドーム広場に面した「スキャパレリ」のブティックなど、彼が手がけた数々のデザインを見れば納得できるだろう。60歳になったダレ本人も、ファンタジーの世界から抜け出してきたようなオーラを放つ。

画像: VINCENT DARRÉ(ヴァンソン・ダレ) 1959年フランス生まれ。1968年、パリで起きた五月革命の際、フェミニストで活動家の母親に手をつながれて、デモを体験。1980年代、ファッションデザインからキャリアをスタートし、数々のメゾンでコレクションに関わった後、2008年にインテリアデザインの世界に。同年、自身のブランド「メゾン・ダレ」を設立。ブティックや個人邸のデコレーションに加え、舞台の空間・美術デザインも手がけている

VINCENT DARRÉ(ヴァンソン・ダレ)
1959年フランス生まれ。1968年、パリで起きた五月革命の際、フェミニストで活動家の母親に手をつながれて、デモを体験。1980年代、ファッションデザインからキャリアをスタートし、数々のメゾンでコレクションに関わった後、2008年にインテリアデザインの世界に。同年、自身のブランド「メゾン・ダレ」を設立。ブティックや個人邸のデコレーションに加え、舞台の空間・美術デザインも手がけている

 インテリアデザインを初めて手がけたのは2008年。パリ、ヴァンドーム広場に面した「スキャパレリ」のブティックのデコレーションだ。今は亡きエルザ・スキャパレリは、前衛芸術家ジャン・コクトーやサルバドール・ダリらと交流し、その卓越したアートセンスで時代を一変させるファッションを発表した。ダリが描いた“体がタンスのようになった人間”の絵に着想を得た「デスク・スーツ(前身頃に、引き出し風のポケットをつけたもの)」。また同じくダリの作品にたびたび登場するロブスターをプリントした「ロブスター・ドレス」など。ダレが担当したスキャパレリのブティックにも、ロブスター型の引き出し付き家具が置かれている。「このブティックは、スキャパレリのファンタジーあふれる世界観を伝えるための舞台です」とダレは言う。

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。「スキャパレリ」のブティックのインテリア。ロブスターの姿をしたドロワーを初め、ファンタジーが忠実に形になった空間

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。「スキャパレリ」のブティックのインテリア。ロブスターの姿をしたドロワーを初め、ファンタジーが忠実に形になった空間

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。「スキャパレリ」のブティック内にダレがデザインした、スキャパレリの書斎をイメージした空間。随所にみられるイラストは今年の9月18日に亡くなったイラストレーターで40年来の友、ピエール・ルタンによるもの

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。「スキャパレリ」のブティック内にダレがデザインした、スキャパレリの書斎をイメージした空間。随所にみられるイラストは今年の9月18日に亡くなったイラストレーターで40年来の友、ピエール・ルタンによるもの

 先ごろ、東京、伊勢丹新宿店で開催されたジュエラー「フレッド」のポップアップストアイベントでも、ブランドのインスピレーション源になっている南仏の海や太陽の輝きをイメージさせる舞台を作り出した。

 無駄な装飾をそぎ落としたミニマルで機能的なデザインが現代のニーズであるとしたら、ダレのデザインはその対極に位置する。自身が空想した生き物をモチーフに、骨董市で見つけてきた18世紀の家具の装飾をミックスしたり、ダレは現代と過去を行き来しながらデコレーションする。それは、ファッションデザイナーが歴史を参照しながら新たなクリエイションを生み出すアプローチにも通じているように思える。

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。ダレの自宅のリビングルーム。18世紀のソファには自身がデザインした張り地を。ピカソの影響を感じるダレがデザインしたカーペットの上にはカルダーのテーブル。奥には草間彌生のアート作品も

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。ダレの自宅のリビングルーム。18世紀のソファには自身がデザインした張り地を。ピカソの影響を感じるダレがデザインしたカーペットの上にはカルダーのテーブル。奥には草間彌生のアート作品も

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。友人のアパルトマンのデコレーション。寝室にはダレがデザインした竜の落とし子の姿が脚になったデスクが置かれている

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。友人のアパルトマンのデコレーション。寝室にはダレがデザインした竜の落とし子の姿が脚になったデスクが置かれている

 実のところ、ダレはインテリアデザイナーとして大成する前、ファッション業界でキャリアを積んだ。映画関係の仕事についていた兄の影響で舞台衣装に興味を持ち、フランスのモード学校ステュディオ・ベルソーでファッションを学んだ。1980年代初頭、型破りなクリエイションをファッション業界が求めた時代だ。ダレはイヴ・サンローランのアシスタントになり、クロード・モンタナの元で働いた後、プラダのファッションコーディネーターであったマニュエラ・パヴェシの誘いを受けてイタリアに渡る。そこでミウッチャ・プラダ、そしてマリオ・ヴァレンチノのもと、ウィメンズウェアのデザインに関わった。1995年には、友人の導きでカール・ラガーフェルドと出会い、フェンディに。そしてモスキーノのクリエーションにも携わった。

「人生はドラマのようなもの」とダレは振り返る。また「私は毎朝、どんなキャラクターになりきろうかを考えて、その日の装いを選んできました。メゾンが変わるたびに、新しいキャラクターを得られた。そのことはいつも私をワクワクさせました」とも。

 

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