クチュリエの「スキャパレリ」のパリのブティックや、「ホテル・モンタナ」の幻想的なインテリアデザインで知られるヴァンソン・ダレ。自身の仕事をまとめた作品集の発表のために来日した彼に、そのファンタジーに満ちた創作について聞いた

BY KANAE HASEGAWA

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。サンジェルマン地区のホテル「モンタナ」内、キュビストの芸術家、ピカソとブラックに捧げる客室

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。サンジェルマン地区のホテル「モンタナ」内、キュビストの芸術家、ピカソとブラックに捧げる客室

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。ホテル「モンタナ」内、セルジュ・ゲンスブールをイメージした客室

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。ホテル「モンタナ」内、セルジュ・ゲンスブールをイメージした客室

 しかし、エマニュエル・ウンガロのもとでウィメンズウェアを手がけていたとき、転機が訪れる。2006年、2つのコレクションに関わった後、解雇されたのだ。「まるで烙印を押されたようでした」。傷心のダレを救ったのは、当時、ポンピドゥーセンターで開かれていた前衛芸術運動、ダダイスムをテーマにした展覧会だったという。「ダダイスムが生まれた第一次世界大戦中、未来は自分たちの手中にあると信じた青年たちはあらゆる社会規範を疑い、価値観を一掃する表現を模索したのでしょう。その溢れるエネルギーに魅了されました」。そして、その前衛的な時代を、ダレはこう解釈する。「当時、ピカソやコクトーたちはまだ成功しているとはいえず、お金はないけれど、いつも夢だけはたくさん持っていました。毎日のようにカフェに入り浸り、夢を語り合い、その結果、バレエ・リュスなどの幻想的な舞台制作でコラボレーションを実現させたのです。彼らは夢の中で生きていたのかもしれません」

 ダレ自身も夢を見続けている。幼い頃からタップダンスに憧れていたダレは60歳になった今もジーン・ケリーのようにステップを踏み、時にはテーブルの上で舞い踊る。周囲の目も気にせず、現実から解放されたかのように。「夢を見ていたいんです。それは、社会を大きく変える発明のような、壮大な夢だけでなく、一人ひとりが毎日見ることができる小さな夢を。そうやって、夢やファンタジーを日々の暮らしに投影すると、ぐっと人生は楽しくなると思いませんか?」

画像: 伊勢丹新宿店で開催されたFREDのポップアップストア

伊勢丹新宿店で開催されたFREDのポップアップストア

画像: 作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。1970年代、パリの伝説的クラブ「ル・パラス」で夜な夜な常軌を逸したハプニングを起こしたダレと友人たち。写真のコラージュはダレが心酔する前衛芸術運動ダダからの影響

作品集『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』より。1970年代、パリの伝説的クラブ「ル・パラス」で夜な夜な常軌を逸したハプニングを起こしたダレと友人たち。写真のコラージュはダレが心酔する前衛芸術運動ダダからの影響

 そんな愉快でダンディなダレの周りには自然と人が集まってくる。役者や哲学者、芸術家、ミュージシャンなど。個性的な友人に囲まれ、インスピレーションは尽きることはないようだ。“放浪のプリンス”ともいえるダレはこう言う。「いつもエキセントリックでありたいんです。エキセントリックとは単なる変わり者という意味ではありません。“エレガントな風変わり”が私にとってのエキセントリック。さらに大切なのは、風変わりであると同時にウィットを感じさせること。夢を与えるウィットでなくては。ピエロは切ないですから」

画像: 『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』¥7,700/RIZZOLI PHOTOGRAPHS: © VINCENT DARRÉ

『Vincent Darré Surreal Interiors of Paris』¥7,700/RIZZOLI
PHOTOGRAPHS: © VINCENT DARRÉ

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