BY EMI ARITA, PHOTOGRAPHS BY MAKOTO NAKAGAWA
古牧さんが暮らすのは、1970年代初頭に建てられたヴィンテージマンション。フランク・ロイド・ライトに師事した数少ない日本人のひとりである建築家・天野太郎がデザインしたという部屋は、天井がベニア板という面白い作りになっている。南向きのバルコニーの窓からは燦々と陽が差し込み、暖かく気持ちがいい。
無類の旅好きであり、これまで訪れた国は50カ国以上。20代後半から3年間はパリ暮らしも経験した。部屋は旅のムードやパリのエッセンスを感じるモノたちであふれている。趣のある家具、アートで埋め尽くされた壁、ユニークなオブジェが飾られたキャビネット……。どこを切り取っても絵になるが、まず目を奪われるのが、窓辺に置かれたたくさんのグリーンたちだ。ダイナミックで、伸び伸びと、自由な姿でそこに生きている。「カクカクしていたり、だらーんとしていたり。動きがあって、いびつな形をした“子”たちが好き。あと剪定するのも苦手なんです。彼らの自由で気ままな姿を愛でていただいんです」
かれこれ17年一緒に暮らしているというのは、“おばけくん”と呼ぶフィカソウンベラータ。大きく伸びた枝は毛糸でくくり、天井を這わせている。「ここの環境が合っていたようで、気がついたら天井に届いてしまって。『これ以上、上に伸びるのは無理だよ』と声をかけたら横に伸びていきました」
育てるのが難しい多肉植物のミルクブッシュも、すくすくと成長し、天井に頭が到達した。「この子は2代目。水の調整に失敗して、初代は枯らしてしまったんですが、やっぱりミルクブッシュが好きで、再トライしたのがこの子です。おばけくんのように横に伸びるのは難しそうなので、近々友人に枝分けしようと思っています」
キャビネットの上に置かれたモンステラの“モンちゃん”も、大きく立派な葉をつける。「少し大きめの葉っぱの子を置きたくて、最近お迎えしました。最初は3、4枚だった葉っぱが、次から次へと生えてきて、今は9枚くらいかな。夏場は冷房の風が直接当たってしまうので、ダイニングテーブルに移動させています。ダイニングテーブルに置くと、さらに存在感が増して、その光景も楽しいですよ」
部屋には花も欠かさない。キャビネットの上はモンちゃんと共に可憐な花たちが佇む。最近はスワッグも流行っているが、「ドライフラワーは嫌い。生きているものがいい」と言い、必ず生花を飾る。そしてソファに座り、飾った花を愛でるのが日課だ。「モンちゃんがいつも陽の光を浴びるように窓の方を向いているから、花とのバランスもちょうどいいでしょ」
“おばけくん”や“モンちゃん”と呼ばれ、愛情たっぷりと育てられたグリーンたちは生き生きとみずみずしい。陽の光を受ければ青々と輝き、窓から風が舞い込めばそよそよと葉を揺らす。心を潤す景色を日々描き出す彼らを眺め、古牧さんは「みんな仲良しでみんないい」と微笑む。
古牧ゆかり
スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。
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