それぞれの分野で成功を収めたふたり、女優のサラ・ジェシカ・パーカーとジャーナリストのタネヒシ・コーテスが、未知なる文学に挑戦する

BY SARAH NICOLE PRICKETT AND JODY ROSEN, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 コーテスは、象牙の塔であるアカデミックな世界から、路上生活者の暮らしまで、幅広い範囲を網羅するきわめて珍しい、大衆のためのインテリとして、名誉ある地位を築いた。 さらに、トニー・モリソンからジェームズ・ボールドウィンの後継者としてのお墨つきももらい、チャンス・ ザ・ラッパーはコーテスをミックステープの中で大声で讃えている。コーテスには、ほとんどのジャーナリストが一生かかっても得られないような素晴らしい仕事のオファーが舞い込むが、彼は最近ではその多くを断っている。だが、マーベルがこの話を持ってきたとき、彼は躊躇しなかった。「これは今まで打診された中でもいちばんクレイジーな話だった」と彼は言う。そして、アーティストのブライアン・ステルフリーズと組むことになった。「考える間もなく、すぐOKしたよ」。

画像: PHOTOGRAPH BY GREGORY HALPERN

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 コミック本の原作を書くという仕事は、コーテスの仕事の方向性を劇的に変えることを意味しているのかもしれない。だが、それは同時にルーツに還ることでもあった。ボルチモアの西部で育った日々の中で、コ ーテスは『スパイダーマン』と『アンキャニィX-MEN』 をむさぼるように読んでいた。「当時の自分の人生にとって、この2作はまさに象徴的だったんだ」とコーテスは言う。

『ブラック・パンサー』にはファンが期待するとおりに、あっと驚くアクションとチープな展開が満載だ。 だが、その筋書きには、コーテスが自らを映し出しているのが見え隠れする。彼の『ブラック・パンサー』 には、人生の苦しさや政治権力の下で虐げられる存在、ジェンダーの関係性や、恵まれた階層で育つ者たちの力関係などについての考察があふれている。彼の言葉には、コーテス特有の響きがある。それはジャーナリストらしい緻密な計算と、みずみずしい感情の発露が融合したものだ。「ジャーナリストになる前には、真剣に詩人になりたいと思っていたんだ」と彼は言う。「『ブラック・パンサー』は詩を書こうとしていた昔のことを思い出させる。意味がちゃんと通じるように表現したいけど、あまり文字数を使えない制限があるし」。

 コーテスは『ブラック・パンサー』本をあと12冊書く契約を結んだ。さらに彼はコミックブックのプロデューサーのような役割も務めることになり、エッセイストのロクサーヌ・ゲイと詩人のヨナ・ハーヴェイというふたりの有力な黒人ライターを『ブラック・パンサー』の姉妹シリーズである『World of Wakanda(ワールド・オブ・ワカンダ)』の執筆者に抜擢するのを助けたりした。

 コーテスにとっては、コミックスの世界で仕事をすることは、単にインスピレーションを沸き立たせる別の手段を見つけたというだけではなく、本業から、つかの間解放されることを意味する。「『Between the World and Me』を書くのはものすごく大変な作業だ った。文章を書くことが大変だったという意味ではないんだ。いや、それもかなりしんどい作業だったけど、書くことによって、精神的にかなりダメージを受ける仕事だった。ときには別のものも書かないとね」と彼は静かに笑った。「『ブラック・パンサー』は自分を解放して遊ぶことができる場所なんだ」

 

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