それぞれの分野で成功を収めたふたり、女優のサラ・ジェシカ・パーカーとジャーナリストのタネヒシ・コーテスが、未知なる文学に挑戦する

BY SARAH NICOLE PRICKETT AND JODY ROSEN, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

 それはキャリアの危機と呼んでもいいかもしれない。いや、それでは控えめすぎる表現かもしれないが。ワカンダ国のティチャラ王が亡命期間を終えて祖国に戻り、王座を奪還した。だが、祖国は度重なる自然災害と政治風 刺と戦争に明け暮れて荒れていた。王の妹であり最も 信頼できる腹心のシュリが、彼不在の間、国を治めていたが、彼女は戦死してしまった。王はカリスマ的な女戦士が率いる王政反対派の抵抗にも悩まされた。激務のうえ、次々に起こる問題にも対処しなければならない。だがこれらは昼間の本業における問題点に過ぎない。ティチャラ王は実は、ブラック・パンサーという名のスーパーヒーローでもあるのだ。そしてそのために、多くのやっかいごとと、彼の存在の根本に関わるような心配事をも抱えていた。

画像: コミコンが行われたサン ディエゴ・コンベンショ ン・センターの前に佇む、ジャーナリストのタネヒシ・コーテス PHOTOGRAPH BY GREGORY HALPERN

コミコンが行われたサン ディエゴ・コンベンショ ン・センターの前に佇む、ジャーナリストのタネヒシ・コーテス
PHOTOGRAPH BY GREGORY HALPERN

 これが、アフリカにある架空の国を舞台にした『ブラック・パンサー』の最新12冊のコミック本の主人公の物語の伏線だ。ブラック・パンサーはあの有名なマーベル・コミックス・シリーズの作品で、新作のストーリーは、ジャーナリストのタネヒシ・コーテスが執筆した。コーテスは雑誌『アトランティック』の特派員であり、彼は近年、アメリカの最も有力な書き手のひとりとして台頭してきていた。コーテスが書く人種と政治の記事は、取材の成果と歴史への深い考察、そして真実に迫り、警鐘を鳴らすという3つをすべて併せ持っている。

その警鐘の鳴らし方は「予言的」という強い形容 詞がふさわしいほどだ。彼が書き、話題を呼んだ「賠償を求めて」というタイトルの2014年のアトランティック誌の巻頭フィーチャー記事は、白人優位主義、そして黒人の財産や身体を奪い取って、彼らを経済活動から閉め出した差別が存在した苦い歴史を踏まえたうえで、アメリカの社会的契約の議論を再構築したものだ。『Between the World and Me』という一冊のエッセイの中で、こうしたテーマはまるで荒々しいブルースの旋律のようにひとつにまとめられている。この本は昨年の全米図書賞を受賞し、ピュリツァー賞の最終候補になった。そして、マッカーサー財団の「ジーニアス・ グラント」という奨学金が、著者のコーテスに与えられた。

画像: タネヒシ・コーテスが書いた新しい『ブラック・パンサー』シリーズのコミック本から COURTESY OF MARVEL

タネヒシ・コーテスが書いた新しい『ブラック・パンサー』シリーズのコミック本から
COURTESY OF MARVEL

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