日本におけるオペラ&バレエを牽引する新国立劇場のオペラ部門芸術監督に昨秋、就任した指揮者の大野和士。2月には同劇場で『紫苑物語』を指揮し、7月に新演出の『トゥーランドット』も控える彼が目指す、これからの日本のオペラとは

BY NATSUME DATE, PHOTOGRAPH BY SHINSUKE SATO

画像: 『紫苑物語』の出演歌手とのリハーサルにも力が入る

『紫苑物語』の出演歌手とのリハーサルにも力が入る

 もうひとつ、日本から発信するなかで大野が注力しているのが、「日本人作曲家委嘱作品シリーズ」。日本のすぐれた作曲家にオペラの書き下ろしを依頼し、台本、演出、指揮等のクリエイティブが集まって、いちからオリジナルのオペラを創り上げる、というプロジェクトだ。その第一弾となるのが、2月に世界初演となる『紫苑物語』(西村朗作曲)。石川淳の同名短編小説をもとに、日本のクリエイターとキャストにより、平安の世に生き、迷いを深めてゆく若き芸術家の烈しい人生を描く。昨秋、芸術監督に就任して以来、満を持して大野自身がタクトを振る初めての作品でもある。

「主人公は歌の才能があるのにそれに気づかず、自分の求めるところを見つけようと、ほかの道を目指すが見つからない。そして世界が崩壊し、自らの肉体が潰えたときに初めて、彼の歌が遺るのです。要するに"自分が自分が"、ともがいているうちはダメで、それがなくなることで永遠の価値が生まれるという、芸術家の生きざまそのものの話なんですよ」

画像: 『紫苑物語』の演出を手がける、俳優で演出家の笈田ヨシ。ヨーロッパでのオペラ演出で高い評価を得ており、日本の古典芸能への造詣も深い

『紫苑物語』の演出を手がける、俳優で演出家の笈田ヨシ。ヨーロッパでのオペラ演出で高い評価を得ており、日本の古典芸能への造詣も深い

画像: 息を呑む美しさの『紫苑物語』の装置デザイン。笈田とともに数々のオペラ作品を手がけてきたオランダ出身のトム・シェンクによるもの PHOTOGRAPHS: COURTESY OF NEW NATIONAL THEATRE, TOKYO

息を呑む美しさの『紫苑物語』の装置デザイン。笈田とともに数々のオペラ作品を手がけてきたオランダ出身のトム・シェンクによるもの
PHOTOGRAPHS: COURTESY OF NEW NATIONAL THEATRE, TOKYO

「西村さんの音楽に興味がある人はもちろん、文学者として石川淳を尊敬している人、笈田ヨシさんという、ヨーロッパと日本で活躍されている非常に貴重な方の演出に関心がある人、そして私が初めてピットに入ること。いろいろな部分で興味をもつ方がいると思いますが、これからはもっと不特定多数の人々にも働きかけていかなければいけないと思っています。とにかくとても聴きやすく、美しいオペラですから、ぜひ、みなさんいらしてください」

 自ら積極的にメディアにも登場し、オペラの魅力を伝える努力にも余念がない。その抜群の行動力で、日本のオペラの可能性をビシバシと切り拓いてゆくマエストロに期待したい。

新国立劇場創作委嘱作品・世界初演
『紫苑物語』
作曲:西村朗、原作:石川淳、台本:佐々木幹郎
指揮:大野和士、演出:笈田ヨシ

日時:2月17日(日)14:00、20日(水)19:00、23日(土)14:00、24日(日)14:00
場所:新国立劇場
住所:東京都渋谷区本町1-1-1
料金:S席¥15,000、A席¥12,000、B席¥8,000 ほか
公式サイト

オペラ夏の祭典2019-20 Japan-Tokyo-World
プッチーニ作曲『トゥーランドット』
指揮:大野和士、演出:アレックス・オリエ

日時:7月12日(金)、13日(土)、14日(日)
場所:東京文化会館大ホール
住所:東京都台東区上野公園5-45

日時:7月18(金)、20日(土)、21(日)、22日(月)
場所:新国立劇場オペラパレス
住所:東京都渋谷区本町1-1-1

日時:7月27(土)、28日(日)
場所:滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
住所:滋賀県大津市打出浜15-1

日時:8月3日(土)、4日(日)
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru
住所:札幌市中央区北1条西1丁目

「オペラ夏の祭典2019-20」公式サイト

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