映画監督の安藤桃子と女優・安藤サクラ。映画の世界に生まれ落ちたふたりは、それぞれの道を見つけ、輝き、母ともなった。人生のひとつの節目に立つ姉妹を、篠山紀信が激写

BY JUN ISHIDA, PHOTOGRAPHS BY KISHIN SHINOYAMA, STYLED BY NAOKO SHIINA, HAIR & MAKEUP BY KANAKO HOSHINO

「なぜか、いつも人生の節目といえるタイミングで篠山さんに撮影していただいているんです」。そう語るのは、映画監督の安藤桃子と女優・安藤サクラの姉妹。ふたりは今、どんなターニングポイントに立っているのか? 近未来の展望は? それぞれの現在について聞いた。

画像: (左)ニット¥356,000、スカート¥730,000(ともにヴァレンティノ)、 ブーツ¥154,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ) (右)ドレス¥1,100,000 <参考価格>(ヴァレンティノ) 、 靴 ¥116,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ) ヴァレンティノ インフォメーションデスク TEL. 03(6384)3512

(左)ニット¥356,000、スカート¥730,000(ともにヴァレンティノ)、
ブーツ¥154,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)

(右)ドレス¥1,100,000 <参考価格>(ヴァレンティノ) 、
靴 ¥116,000(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)
ヴァレンティノ インフォメーションデスク
TEL. 03(6384)3512

―― 篠山さんがおふたりを撮るのは三度目ですね。

安藤桃子(以下M) 自分たちの波がぐっと変わってゆくときに、必ず写真を撮っていただくご縁に恵まれています。最初は七五三で、次は姉妹が映画界に出たタイミングでした。

―― 桃子さんにとって、サクラさんはどういう存在ですか?

M 幼い頃から姉の私が観察人で、サクラが被写体という感じです。子どもを産んで、自分が異常な母性の持ち主であることに気づきましたが、子育てしていても、この感じすでに知ってる!と思うことが多くて。そうした母性をサクラに対して抱いていたんですよね。親が子どもの写真をたくさん撮るように、サクラの瞬間、すべてを撮りたいとひたすらカメラのシャッターを押していました

―― 2014年に、映画『0.5ミリ』のロケ地でもある高知に移住されました。昨年、現地で立ち上げた「桃子塾」について教えていただけますか?

M 今、37歳なのですが、ちょっとずつ渡せるものができてきました。老若男女みんなで膝を突き合わせて、子どもたちの未来に向かって、一緒に種をまいてゆきたい。そのためにはまず子どもたちがどんな感性をもっているのかを知らないといけないなと思い、話し合うことから始めました。

―― 子どもたちと対話することで発見は?

M 子どもたちからは真理と哲学ばかりが出てきます。彼らには未来のビジョンがインプットされていて、それを形にするカギをもっている。一年間語り合った結果、やっぱり映画を撮ることにしました。映画の現場は、社会の縮図なんです。主役も脇役も必要で、裏方の人たちも各自の持ち場で光っている。子どもたちを見ていても、前に出ることで輝く子もいればそうでない子もいます。でも輝きの光量は一緒なんですよね。

―― 高知でイベントを企画されているとか?

M 『~未来の子供たちへ~カーニバル 00 in 高知(仮)』という文化フェスを秋に行う予定です。農業、食育から映画、音楽までさまざまな分野の文化人、専門家を招き、課題解決に向け未来をイマジンするフェス。問題や課題というとネガティブに思えますが、理想や夢と置き換え、子どもたちの未来のために想像する。クリエイティブに課題を解決する新しいスタイルを、高知ならではのやり方で生み出せればと思います。

― 桃子さんの行動力に脱帽します。

M アイデアは出し惜しみしてはいけないと思うんです。使うとアイデアの神様はまた降りてくる。移住して5年になりますが、このイベントは高知への愛の集大成です。高知は「全部ハートにあるよ」ということを教えてくれました。幸せはここ(ハート)にあるのであって、数字では測れない。

画像: (左)ジャケット¥225,000、チェーンつき シャツ¥75,000、パンツ¥41,000、スニーカー¥39,000 コム デ ギャルソン リング/本人私物 (右)ワンピース¥90,000、スニーカー¥39,000 コム デ ギャルソン TEL. 03(3486)7611

(左)ジャケット¥225,000、チェーンつき シャツ¥75,000、パンツ¥41,000、スニーカー¥39,000
コム デ ギャルソン
リング/本人私物

(右)ワンピース¥90,000、スニーカー¥39,000
コム デ ギャルソン
TEL. 03(3486)7611

―― 今日の撮影では、カメラの前で次々にポーズを変えてゆく姿に圧倒されました。

安藤サクラ(以下S) 私は自分をきれいに撮ってほしいと思ってカメラの前に立つことはないんです。よい形になろうと思うだけです。今日は篠山さんに撮影していただくので、気合を入れました。普段はちょっと疲れた主婦なので、リラックスしすぎるとそのまま出てしまいますから。カメラの前でどうすればいいかはその場でわかります。小さい頃から姉と一緒に、父に写真を撮られていたからかも。父はポーズにうるさい人なんです。

―― サクラさんにとって、桃子さんはどういう存在ですか?

S 姉の歩む道を見て自分の道を決めてきたところはありますね。道標だし、憧れもあります。姉は子どもの頃から優秀で、今も自分の道を切り開いている。生まれたときから違うタイプで、姉の姿を見ながら違う自分を出し、違う道を選んできました。姉は自ら生み出すことができるけれど、私は生まれたものにああしてこうしてと言われて乗っかることしかできない。でも、自分が経験する前に、姉が経験し教えてくれるので、それを基準にいろいろなことに挑戦している気がします。

―― 映画『万引き家族』で最優秀主演女優賞を受賞した日本アカデミー賞のスピーチで、役者を続けることと母親業の両立に苦悩していることを話され、最後にまたこの場に戻ってきたいとおっしゃっていました。あの言葉に込めた想いは?

S あのときは、何も考えずにしゃべり始めました。自分の中では、辞めるか続けるかという極端な考えだったのですが、映画界の大先輩を目の前に自分の正直な気持ちを話していて、志もしっかりしていない自分が情けなくなり、奮い立たせるように出た言葉です。映画を作ることがどれだけ困難かを見ながら育ってきたので、だからこそ憧れもあるし、中途半端な形でそこに参加することができないのもわかっている。自分の生活が整えられたら、それがいつかはわからないけれど、また戻ってこられるようになりたいという気持ちでした。

―― いつか演じてみたい役はありますか?

S ありがたいことに、やってみたいと思ったことを実現できているんです。まさか自分が朝ドラのヒロインになれると思っていなかったけど。でも実現できていないことが一つあって。それをこのあと、姉にプレゼンするつもりです。ずっとサーカスの映画を作りたいと思っていました。サーカスはファンタジーであり、家族の話でもあります。自分が生み出したいと思ったものを誰かに一緒に作ろうと言ったことは今までないのですが、姉とならできる気がします。

画像: (左)ベスト¥444,000、中のトップス¥276,000 (ともに予定価格) ルイ・ヴィトン クライアントサービス (ルイ・ヴィトン) リング/本人私物 (右)ジャケット¥383,000、シャツ¥138,000(ともに予定価格) ルイ・ヴィトン クライアントサービス (ルイ・ヴィトン) フリーダイヤル:0120-00-1854

(左)ベスト¥444,000、中のトップス¥276,000 (ともに予定価格)
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
(ルイ・ヴィトン)
リング/本人私物

(右)ジャケット¥383,000、シャツ¥138,000(ともに予定価格)
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
(ルイ・ヴィトン)
フリーダイヤル:0120-00-1854

安藤桃子(MOMOKO ANDO)
1982年東京都生まれ。2010年『カケラ』で監督・脚本デビュー。翌年、初の長編小説『0.5ミリ』を出版し、2013年に映画化。報知映画賞作品賞など多数の賞を受賞。2014年より高知に移住し、映画館「ウィークエンド キネマM」の代表および「表現集団・桃子塾」塾長を務める。最新作はオムニバスのショートフィルム『アエイオウ』(2018年)

安藤サクラ(SAKURA ANDO)
1986年東京都生まれ。2007年『風の外側』で映画デビュー。『愛のむきだし』(2009年)でヨコハマ映画祭助演女優賞などを受賞する。『百円の恋』(2014年)、『万引き家族』(2018年)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。2017年に第一子を出産。2018年、NHK連続テレビ小説『まんぷく』で主演を務める

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