デンマークの国営ラジオ局のビッグバンドの指揮者に就任した挾間美帆。その音楽の魅力はどこから生まれるのか?「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇」の準備で東京滞在中の彼女を直撃インタビュー

BY MAKIKO HARAGA, PHOTOGRAPHS BY KIKUKO USUYAMA

 挾間美帆さんは現在、ニューヨークを拠点に世界のジャズシーンで作曲家、指揮者、プロデューサーとして活躍している。「いつか、ふたつのジャンルの架け橋となる活動をしたい」というのが彼女の夢。ひとつは、もちろんジャズ。もうひとつは、幼少期から大学を卒業するまで専門的に学び、今もこよなく愛するクラシックだ。

画像: 挾間美帆(MIHO HAZAMA) 1986年生まれ。ジャズ作曲家、指揮者。国立音楽大学卒業後、マンハッタン音楽院大学院でジャズの作曲法を学ぶ。2012年にジャズ作曲家としてメジャーデビュー。自身のジャズ室内楽団「m_unit」で「Dancer in Nowhere」(2018年)をはじめ3枚のアルバムをリリースしている。2016年、米ダウンビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」に選ばれる。2017年、シエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンスに就任。これまで、多数のアーティストに作曲作品や編曲作品を提供している。音楽を担当したテレビドラマに「ランチのアッコちゃん」(NHK)などがある

挾間美帆(MIHO HAZAMA)
1986年生まれ。ジャズ作曲家、指揮者。国立音楽大学卒業後、マンハッタン音楽院大学院でジャズの作曲法を学ぶ。2012年にジャズ作曲家としてメジャーデビュー。自身のジャズ室内楽団「m_unit」で「Dancer in Nowhere」(2018年)をはじめ3枚のアルバムをリリースしている。2016年、米ダウンビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」に選ばれる。2017年、シエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンスに就任。これまで、多数のアーティストに作曲作品や編曲作品を提供している。音楽を担当したテレビドラマに「ランチのアッコちゃん」(NHK)などがある

「人生をかけて実現できたらいいな」と思っていた夢が、早くもこの夏の終わりに叶う。その舞台は、「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇」だ。シンフォニック・ジャズとは、平たく言えばクラシックのオーケストラが演奏するジャズ。ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」が、その代表例だ。ビッグバンドは多くても20人だが、当公演では二管編成の70人のオーケストラがジャズを奏でる。

 この公演で挾間さんはプロデュースを担い、指揮はオーケストラ専門の原田慶太楼さんに委ねる。演奏は、東京フィルハーモニー交響楽団だ。第一部ではガーシュインやバーンスタインなど、よく知られた作曲家の作品と、クラウス・オガーマンやヴィンス・メンドーサが作曲した、知られざるシンフォニック・ジャズの名曲を演奏。第二部ではジャズピアニストのシャイ・マエストロを迎え、彼自身の作品を挾間さんが編曲したものや、挾間さんの新作「ピアノ協奏曲第1番」が演奏される。

 音楽をつくるとき、挾間さんの頭の中で鳴る「初期設定」の音はビッグバンドではなく、子どもの頃から大好きだったオーケストラだ。だから、自身が主宰する13人編成の「m_unit」はオーケストラを縮小したイメージに近い。通常のビッグバンドには含まれないストリングスが4人もいて、トロンボーンの代わりにフレンチホルンを置く。リズムセクションにビブラフォンが入るのも、珍しい。

画像: 自身のジャズ室内楽団「m_unit」を指揮する挾間さん COURTESY OF MIHO HAZAMA

自身のジャズ室内楽団「m_unit」を指揮する挾間さん
COURTESY OF MIHO HAZAMA

 音楽教室に通っていた小学生のとき、作曲家になると決めたと言う。ピアノやエレクトーンで弾きたい曲は交響曲ばかりで、当時のお気に入りは誰もが知る定番ではなく、レスピーギの「ローマ三部作」。大人になったら大河ドラマなどテレビの音楽をつくるような仕事ができたらいいな、と思っていた。

 国立音大ではクラシックの作曲法を専攻したが、ビッグバンドのサークルに入ってジャズピアノを弾くうちに、「ここでやっている音楽が、自分がつくってみたかった音楽にいちばん近い」と感じた。クラシックの平均律とは異なる音列を使ったスケールがあって、「そこにどういう飾りをつけるとカッコいいか」「どう裏をかくとカッコいいか」を考える。そんなジャズに求められる創造性について、挾間さんは次のように熱く語る。「先人たちがやってきた音楽の会話を、いかに自分の身にしみこませることができるか、その中で自分がカッコいいと思ったものを、どれだけ自分のものにしていけるか、ということなんです」。

 憧れの作曲家が教鞭をとる米国のマンハッタン音楽院大学院のジャズ科に留学すると、同期30人のうち、ジャズの学位を持たずに入学したのは挾間さんだけ。隣に座った同級生は「ぼくは3歳のとき、オスカー・ピーターソンとジャムセッションをやったよ」。そんな精鋭たちに囲まれて、自分にはジャズピアニストの道はないと悟った。「『どうすればここで生き残れるのか?』と思ったら、やっぱり自分には作曲しかない、と」。挾間さんは当時をそう振り返る。「自分の強みやアイデンティティを考えさせられたことが、いま自分自身をプロデュースするうえで、活きています」。

画像: 作曲するときは主にピアノを使用する。「電子ではなく生ピアノであることは大切。倍音が聴こえますから。ピアノはひとりでできるオーケストラですね。」

作曲するときは主にピアノを使用する。「電子ではなく生ピアノであることは大切。倍音が聴こえますから。ピアノはひとりでできるオーケストラですね。」

 同級生や先輩たちが自力でアルバムを制作し、有名なミュージシャンに躊躇なく演奏を依頼する姿を見て、「そんなこと、やっていいの?」と戸惑いつつ、「自分もやるしかない」と覚悟を決めた。キャンパスですれ違った先生に「吹いてほしいです」と声をかけ、メールで曲を送ると、「OK」の返事が来た。デビューアルバム「Journey to Journey」でゲストに迎えた、著名なサックス奏者のスティーブ・ウィルソンだ。

 今年の10月からは、デンマーク・ラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任する。クラシックの指揮法は日本で習ったが、ジャズは独学でやってきた。リードするというよりも、奏者たちと「一緒にコラボする」というのが挾間さんのスタンスだ。「リハーサルのプロセスも含め、どういうふうに一緒に音楽をつくっていくか、音を出す彼らと同じ目線で考える。それが私の仕事です」。

「NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇」
日時:8月30日(金)18:00ロビー開場/19:00開演
会場:東京芸術劇場 コンサートホール
住所:東京都豊島区西池袋1-8-1
料金:S席 ¥8,000、A席¥6,500、B席¥5,000、高校生以下¥1,000
公式サイト
※18:40より、挾間美帆によるプレトークを開催

問い合わせ先
東京芸術劇場ボックスオフィス
TEL. 0570-010-296(休館日を除く10:00-19:00)

 

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