INTERVIEWS BY ELLA RILEY-ADAMS, PHOTOGRAPH BY HART LËSHKINA, STYLED BY TESS HERBERT, TRANSLATED BY MIHO NAGANO
ナオミ・ワッツ(女優)
初めてエルに会ったとき、彼女の印象は鮮烈だった(2015年公開の映画『アバウト・レイ 16歳の決断』で、ワッツはファニングの母親を演じた)。彼女は当時16歳だったけれど、自分の感情を上手にコントロールでき、周囲の人々の心の機微を敏感に察知する感受性と知性を持ち合わせていた。私が20代後半でこの業界に挑戦しようとしていた頃は、周囲から「もう遅いよ」と言われた。彼らいわく「急いで役をゲットしないと。残された時間はほんのわずかだ!」と。そんな状況は今では様変わりした――もちろん、いい方向に変わったわけだけど。今、50代の女性たちが映画業界を牽引しているのを、私たちは目の当たりにしている。昔とは逆の方向に潮目が動きつつあり、たとえば年を重ねて老成することが、にわかにトレンドになっている。
どんなときも、女性が「野心」をもつことは醜いことだとされてきた。男性は決してそんなことは言われないのに。私は昔からいつもハングリーだった。だから今の立場にたどり着けた。私の場合、何年もぱっとしない年月が続き、役にありつけず、たまに端役をもらえる程度だった。デヴィッド・リンチが(2001年公開の映画『マルホランド・ドライブ』で)素晴らしい役に私を抜擢してくれるまでは、そんな状況だった。どう形容してもらってもかまわないけど、意地でもやりぬく決意と野心をもし死守していなかったら、きっと俳優の道を諦めて何かほかの仕事を探していただろう。なぜ自分はその仕事が好きなのか、を理解することが大事。これをもっとやり続けたいと、あなたを焚きつけるものは何なのか?
エル・ファニング(女優)
ナオミは特定のジャンルにおさまらない存在。彼女は自らの手でキャリアを切り開いて、独自の道を築き上げてきた。私もいつかそんなふうに人から評されるような仕事をしていきたい。私は人々を常に驚かせたいし、みんなが私に対して抱いているイメージを覆すような活躍をしたい。
『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』(Huluで2020年から放映されているドラマシリーズで、間もなくシーズン3が放送開始予定。ファニングは、女帝エカチェリーナ役で主演)のシーズン1の撮影中に、私は初めてプロデューサーとしても同番組にかかわった。それまで裏方の仕事や、製作上の決定を下したりする経験はほとんどしてこなかったけれど、いつも細部をどう積み重ねて作品としてまとめ上げるのかという点に興味があった。いま自分が進化しているという実感があるし、これまで自分にとってなじみがなかった場所でも、それほど恐れずに自分の意見が言えるようになってきた。私は年齢的にはまだ若いけれど、自分にこう言い聞かせるようにしている。「私は2 歳のときから演技をしてきた――これまでたくさんの撮影現場を経験してきたし、そこで起きたさまざまな出来事をこの目で見てきたんだから」
INTERVIEWS HAVE BEEN EDITED AND CONDENSED. MANICURIST: JULIE KANDALEC. PRODUCTION: RESIN PROJECTS. TAILOR: CHA CHA ZUTIC