地位や実績のあるレジェンドが、豊かな経験や過去の失敗からの学びを若い世代へ伝えていくことで実りある社会が育まれる──各界で第一線を歩む女性たちの珠玉の対話集第4回は、デザイナーの巨頭と気鋭アーティストが登場

INTERVIEWS BY LAURA MAY TODD, PHOTOGRAPH BY HANNAH STARKEY, TRANSLATED BY MIHO NAGANO

画像: (左から)ディオールでクリエイティブ ディレクターを務めるマリア・グラツィア・キウリ(59歳)と、幅広いジャンルで活躍するアーティスト、ゼディ・チャ(39歳)。パリ8区にあるディオール本社で、2022年12月12日に撮影。ふたりが着用しているのはディオールの衣装。

(左から)ディオールでクリエイティブ ディレクターを務めるマリア・グラツィア・キウリ(59歳)と、幅広いジャンルで活躍するアーティスト、ゼディ・チャ(39歳)。パリ8区にあるディオール本社で、2022年12月12日に撮影。ふたりが着用しているのはディオールの衣装。

マリア・グラツィア・キウリ(ファッションデザイナー)

 私の美術への愛はすごく個人的なものだ。感動を与えてくれる作品を見たとき、それを作った人に直接会おうとする。私は美術史の学位はもっていないけれど、美術展に行くのが大好きだ。そして協業するアーティストを選ぶときには、自分の直感を信じることにしている。あまりに多くの場合、女性たち、特に私の年代の女性たちは、心の底で思っていることを行動に移す勇気がない。それは大きな間違いだ。

 ゼディの作品を初めて見たのは2019年のヴェネチア・ビエンナーレだった(この展覧会で、チャは『Grandmother Mago』と題したパフォーマンスを行った。先祖から伝わる太鼓の演奏や舞踏、韓国の伝統からインスパイアされて製作した衣装を身につけ、シャチの仮面を着用したダンサーが舞う様子など)。私は彼女のテキスタイルの使い方に感銘を受け、彼女が作り上げた想像上の物語のスピリチュアルな側面に魅了された。彼女がロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーで個展を開催中だと知ると(2022年から行われていた彫刻と絵画を融合したこの展示のタイトルは『Zadie Xa: House Gods, Animal Guides and FiveWays 2 Forgiveness』)、私はディオールにこの個展を支援してほしいと思った。

 私はフェミニスト・アートに興味津々だ。自分自身の作品を思い起こさせてくれるからだ。美術を通して、ファッションの領域をはるかに超えた数々のトピックに触れることができ、自分が手がけている仕事をより解像度の高い視点から振り返ることができる。さらに、いまだに「天才」というものは男性特有の資質だと思われている。だからこそ私たちはシスターフッドを構築するのだ。

ゼディ・チャ(インターディシプリナリー・アーティスト)

 ファッションの世界は美術の世界と隣り合わせで存在している。でも、ファッションはいつだって美術よりも光り輝いていて、よりセクシーで、そしてちょっと怖い感じがする。私の作品は、多くの人々に広く受け入れられるようなものではないから、マリア・グラツィアから連絡がきたときは驚いた。でも、彼女と話してみると、彼女は私と同類で、文化的な仕事に携わる人なのだとすぐにわかった――地位と権力をもつ多くの人々とは違って、彼女は私の話をじっくりと聴いてくれた。

 彼女は私の展示に裏方として協力してくれた。クリエイティブ ディレクターとしての彼女のスタンスはこうだ。「私たちは、わが社とは何の関係もないこの公共の美術展示を支援する。理由は、私たちがそうしたいから」。彼女はブランドの影響力によって、この展示に一定以上の注目が集まることを承知したうえで、援助してくれているのだ――これは、信じられないほど、ありがたいことだ。

 美術学校の学生だった頃、ネットワーク作りをしなさいと教わった。私はいつも「それって一体どういうこと?」と思っていた。だが今、私は自分を支援してくれたほかのアーティストたちを目の当たりにしている。私が今まで得てきた成功はすべて、彼らの助けがあって初めて実現したものだ。キュレーターの友人たちやほかのアーティストたちが私の作品を推薦してくれたから、チャンスをつかむことができた。そのことを考えると胸がいっぱいになる。

INTERVIEWS HAVE BEEN EDITED AND CONDENSED. HAIR: MAYU MORIMOTO. MAKEUP: NOEMIE LABORDE. PRODUCTION: KITTEN

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