発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選!

BY REIKO KUBO

この夏必見! トム・クルーズ渾身の会心作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

画像: 61歳を超えてなお、ハードなアクションに果敢に挑むトム・クルーズのプロフェッショナル魂に圧倒される ©2023 PARAMOUNT PICTURES.

61歳を超えてなお、ハードなアクションに果敢に挑むトム・クルーズのプロフェッショナル魂に圧倒される
©2023 PARAMOUNT PICTURES.

 ベーリング海峡の水面下、迫り来る魚雷に緊迫する潜水艦内部が映し出される。先の潜水艇タイタンの悲劇の記憶が新しいだけに、いよいよ公開の『ミッション:インポッシブル』最新作は、冷や汗もののオープニングで幕を開ける。タイトルの「デッドレコニング」が意味する推測航法とは、起点、偏流などから過去や現在の位置を推定し、その位置情報をもとにして行う航法だという。かつての監督官から「大義のための戦いは終わりだ」と告げられたIMFエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、過去の行いは正しい選択だったのかと葛藤しながら、アブダビ、イタリア、オーストリアと舞台を変えながら世界を駆け巡る。

画像: 前作から引き続き登場するホワイト・ウィドウ(写真右/ヴァネッサ・カービー)は、ミステリアスかつ冷たく冴えた華やかさで魅了 ©2023 PARAMOUNT PICTURES.

前作から引き続き登場するホワイト・ウィドウ(写真右/ヴァネッサ・カービー)は、ミステリアスかつ冷たく冴えた華やかさで魅了
©2023 PARAMOUNT PICTURES.

 イーサンとフィアット500に乗り、コミカルかつ壮絶なカーチェイスを繰り広げる新たなヒロインはグレース(ヘイリー・アトウェル)。さらにイルサ(レベッカ・ファーガソン)、ホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)、パリス(ポム・クレメンティエフ)らも爪痕を残す。そしてなんと言っても砂漠を馬で駆け抜け、目も眩むような断崖絶壁からバイクで飛び降り、疾走する列車の上での死闘をスタントなしで繰り広げるトム・クルーズの闘志に胸熱! コロナ禍と配信の影響で苦境に立たされている映画と映画館のために走り続けるクルーズ。本作のPART TWOが公開された暁には、ぜひとも彼にオスカー像を手にしてもらいたい。

画像: 映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』ファイナル予告 youtu.be

映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』ファイナル予告

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『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
7月21日(金)全国公開
公式サイトはこちら

国民から敬愛された女性政治家の生涯を丹念に描く『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』

画像: 後半生のシモーヌを演じるのはフランスの実力派、エルザ・ジルベルスタイン © 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA

後半生のシモーヌを演じるのはフランスの実力派、エルザ・ジルベルスタイン
© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA

 フランスでシモーヌ・ヴェイユといえば、今年のアジア地域のヴァカロレア(大学資格試験)でもテキストが使われた哲学者と、5年前に亡くなった政治家の二人が有名だが、本作で描かれるのは厚生大臣や女性初の欧州議会議長を歴任した後者のシモーヌだ。3人の息子を育てながら、判事から政治家に転身。1970年代までフランスでは人工中絶に刑事罰が下されていたが、男ばかりの国会で女性たちの声を果敢に訴え、1974年に中絶合法化を叶えた法律はヴェイユ法と呼ばれている。

画像: 若き日のシモーヌ役のレベッカ・マルデールのみずみずしい演技が光る © 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA

若き日のシモーヌ役のレベッカ・マルデールのみずみずしい演技が光る
© 2020 – MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA

 刑務所の環境改善やエイズ患者救済など、弱き者の側に立って闘い抜いた不屈の女性政治家の原動力となったのは、第2次大戦末期、16歳で送られ、両親と兄を失ったアウシュビッツ収容所での壮絶な体験だった。死が隣り合わせの日々にあっても、か弱き人を守ろうとした最愛の母イヴォンヌの姿を目に焼きつけ、その母を奪った戦争を憎み、戦争を生まないために欧州統合を目指した。若き日のシモーヌの聡明な瞳を伝えるレベッカ・マルデール(『スザンヌ、16歳』)や、シモーヌの人生哲学の拠り所となった母イヴォンヌ役のエロディ・ブシェーズ(『野生の葦』)らの好演が光る本作は、昨年のフランスの最大のヒット作。監督は『エディット・ピアフ 愛の讃歌』など伝記映画を得意とするオリヴィエ・ダアン。

画像: 『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』予告 youtu.be

『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』予告

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『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』
7月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国順次ロードショー
公式サイトはこちら

レスリー・チャン没後20年を経て、色褪せない佇まいが美しく蘇る『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』

画像: 京劇の名作「覇王別姫」のストーリーや立ち回り、楽器の音色が、激動の時代を生きた主人公たちの哀しみを一層と際立てる ©1993 TOMSON (HONG KONG) FILMS CO.,LTD.

京劇の名作「覇王別姫」のストーリーや立ち回り、楽器の音色が、激動の時代を生きた主人公たちの哀しみを一層と際立てる
©1993 TOMSON (HONG KONG) FILMS CO.,LTD.

 中国の名匠 陳凱歌(チェン・カイコー)が香港の大スター 張國榮(レスリー・チャン)を招き、1925年から50年にわたる中国史に翻弄された狂おしい愛の物語を描いた『さらば、わが愛/覇王別姫』。1993年にカンヌ国際映画祭史上で初めて中国映画に最高賞パルム・ドールをもたらした珠玉作が、4Kの輝きとともにスクリーンに蘇る。

画像: レスリー・チャンの没後20年という今年、美しい4Kの映像で再会できる貴重な機会が到来 ©1993 TOMSON (HONG KONG) FILMS CO.,LTD.

レスリー・チャンの没後20年という今年、美しい4Kの映像で再会できる貴重な機会が到来
©1993 TOMSON (HONG KONG) FILMS CO.,LTD.

 娼館で働く母によって女の子のように育てられ、京劇の養成所に捨てられた少年は、兄弟子を慕って厳しい修行に耐える。成長した二人は、京劇の古典「覇王別姫」の項羽と虞美人を当たり役として人気スターに。「覇王別姫」の配役そのままに、小樓(チャン・フォンイー)の生涯のパートナーでいたい蝶衣(レスリー・チャン)の切ない愛と、その蝶衣を演じるレスリーのほとばしる色香。蝶衣の恋敵となる娼婦役コン・リーが滲ませる圧巻のしたたかさと深い情。そして実生活でも文化革命に巻き込まれ、父を告発することを強いられ下放された経験を持つ監督チェン・カイコーが、文革の劫火に焼かれる苦しい人間模様を狂おしく浮かび上がらせる。初公開から30年、レスリー・チャンの没後20年を経てなお、新しい気づきと感動を運ぶ名作に酔いしれたい。

画像: 映画『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』予告編【7月28日(金)公開】 youtu.be

映画『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』予告編【7月28日(金)公開】

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『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』
7月28日(金)より角川シネマ有楽町、109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開
公式サイトはこちら

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