TEXT BY SHION YAMASHITA,PHOTOGRAPHS BY KIKUKIO USUYAMA,HAIR, MAKE UP AND STYLED BY TOMOMI FUJIKAWA AT FIGUE

「ファッションにも仕事にも“こだわり”を強くもたないようにしていて、信頼する人がすすめてくれるものにトライしてみようという余裕も出てきました。普段は心地よくて疲れない、自分が見て気持ちが上がるような服をチョイスします。食べることは大好きなのでこだわります(笑)」
俳優であり、歌手でもある原田知世は、2022年にデビュー40周年を迎えた。透明感のあるやさしい声で、それぞれの曲の歌詞の主人公を演じるように歌い、どの曲も自分の色に染めてしまう。『恋愛小説4~音楽飛行』と題された最新アルバムは、ザ・ビートルズやカーペンターズなど世代を超えて愛されてきた1960〜70年代の名曲から選び、原田自身も気に入っているナンバーが彩る洋楽のカバー集だ。歌を通して自分の色を出すために、どのようなアプローチで曲と向き合ったのか。
「まずは英語の発音に口をならす練習をして、それと同時に今回選んだ曲を世界中の人がカバーして歌唱している動画を視聴しました。プロだけでなく、アマチュアの方もギター一本やピアノの弾き語りなど、いろんなアレンジで歌っていて、ひとつの曲にもいろんな表現があるのだなとすごく勉強になりました。たくさんのヒントをいただいて、本番のレコーディングで自分ならどう歌うかが、徐々に見えてきました」
発声法を学んで、新たな“声色”を見つけたことも大きい。
「ボイストレーニングの先生との出会いがあって、基本的な部分をレッスンしていただきました。喉の使い方というのは、プロの方に教えていただくと、そんなに無理をしなくても声は出るということを知って、自分の身体なのに使いきれていないことがいっぱいあると実感しました。そして裏声と地声の間の“ミックスボイス”という声の出し方を教わり、歌の表現の幅が広がりました。この声をより安定させたくて、先生のレッスンがなくても自分で練習をしています。50代になって、歌の重心を下げるというか、軸がしっかりありつつ、しなやかな動きのある表現というものを、歌においても、人としても目指しています」
ゴルフとの出合いも自身の可能性に気づくきっかけとなった。
「50歳からゴルフを始めました。歳を重ねるとともにできることが減っていくと聞いていたのですが、ゴルフを通して、練習を積み重ねることで、本当に少しずつですが去年の自分とは違う変化があって、できることも増えるということを初めて知りました。それで、歌でもまだ何かできるかもしれないと考えたんです。自分の伸び代を感じることは、生きているうえで大きな楽しみです。これからも、自分の可能性を信じてみることが大切だと思うようになりました。今日できることを味わいながら、その一つひとつを大事にしていきたいです」―山下シオン
原田知世(はらだ・ともよ)
●1967年長崎県生まれ。1983年『時をかける少女』で映画デビュー。近年は映画『星の子』(2020年)、日本テレビ『あなたの番です』(2021年)、テレビ東京『スナック キズツキ』などの話題作で主演を務める。歌手としては、今秋、好評のラブ・ソング・カヴァー・シリーズ第4弾となる『恋愛小説4〜音楽飛行』をリリース。
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