T MagazineのNYチームが、アンダーカバーのファッション撮影のために来日。その撮影秘話と、デザイナー高橋 盾の仕事風景

BY ISABEL WILKINSON, PHOTOGRAPHS BY GABY WOOD, TRANSLATED BY AKANE MOCHIZUKI(RENDEZVOUS)

画像: アンダーカバーのコンセプトは『We make noise not clothes(服ではなくノイズを作る)』。高橋のオフィスにある赤と白のネオンサインは、この理想を表したものだ。東京・原宿の裏通りにある、黒い鉄箱が浮いているように見える建物が彼のアトリエだ。最上階は高橋の仕事部屋。そこで高橋はデザインや、できあがった商品の最終チェックを行う。写真は、高橋とメンズラインであるジョンアンダーカバーのデザイナーたちのミーティング風景。高橋の左手側に立つのは、彼の右腕として知られる女性

アンダーカバーのコンセプトは『We make noise not clothes(服ではなくノイズを作る)』。高橋のオフィスにある赤と白のネオンサインは、この理想を表したものだ。東京・原宿の裏通りにある、黒い鉄箱が浮いているように見える建物が彼のアトリエだ。最上階は高橋の仕事部屋。そこで高橋はデザインや、できあがった商品の最終チェックを行う。写真は、高橋とメンズラインであるジョンアンダーカバーのデザイナーたちのミーティング風景。高橋の左手側に立つのは、彼の右腕として知られる女性

 歌舞伎座、相撲部屋、渋谷のスクランブル交差点など、東京のさまざまなロケーション地を探しまわった末、高橋 盾がデザイナーを務めるアンダーカバーのファッション撮影のためにT Magazineの撮影チームが選んだのは、東京国立博物館にある2つの歴史ある日本式茶室だった。この上野公園に囲まれた一般非公開の茶室は、高橋が2017年秋冬コレクションで発表した彫刻的でファンタスティックな作品の、理想的な撮影現場となった。「この茶室で撮影することで、ある種のコントラストが表現できた」と、T Magazineのクリエイティブディレクター、パトリック・リーは語る。そのコントラストとは、日本の伝統的な様式と、高橋が指し示す未来的な視点の対比だ。

 スタイリングは高橋自らが担当。すべてのモデルに、コレクションで使われたブライトカラーの蜂の巣状のスカートとゴム底のプラットフォームシューズ、建築的なヘッドピースをまとわせた。これは彼がショーで見せたスタイリングの再現で、「貴族」「若者の反逆者」「君主制」など、『ユートピア的社会を形成する10の部族』がテーマになっている。

 このファッションストーリーのために、T Magazineチームは、写真家のフィリップ=ロルカ・ディコルシアを起用した。彼は、入念に構成された、ときに奇妙な写真を撮ることで知られている。その仕上がりを見て、クリエイティブディレクターのリーは「暗黙の物語の中心にいる、静寂のなかに隔離された人物」を捉え、コレクションの背景にある物語を引き立てる理想的な写真になったという。2番目の撮影地は、東京の中心にあり、騒がしく、ネオン・サインにあふれる町、秋葉原。伝統的な茶室とは対照的な場所だ。

 この撮影に関する記事を執筆するために、ガビー・ウッドは6月の3日間、東京に滞在した。彼女はロンドンを拠点にする作家で、ブッカー賞財団のディレクター。そして、機械式人形とロボットの歴史を綴った『Edison’s Eve』の著者でもある(高橋もまた、人形に魅せられたひとりだ。高橋は2009年春夏コレクションで、ギリシャ神話に出てくる単眼のキュクロプス人形をモチーフにした写真集も作っている。その人形のいくつかは、いまも東京のアトリエに飾られている)

画像: ジョンアンダーカバーのデザインチームは、高橋にチェックされる予定の服のリストを見直している。すでにいくつかのモスリン生地(薄地の織物)の半袖シャツを見ていた高橋は、あるものは縫い目をチェックし、別のシャツには裾の縫い目の修正を指示。またほかのシャツには、ヨーク部分の中央にギャザーを施すように言った。そしてすべてのシャツに、生地に合わせてそれぞれ異なるボタンを合わせた

ジョンアンダーカバーのデザインチームは、高橋にチェックされる予定の服のリストを見直している。すでにいくつかのモスリン生地(薄地の織物)の半袖シャツを見ていた高橋は、あるものは縫い目をチェックし、別のシャツには裾の縫い目の修正を指示。またほかのシャツには、ヨーク部分の中央にギャザーを施すように言った。そしてすべてのシャツに、生地に合わせてそれぞれ異なるボタンを合わせた

 ウッドが初めて東京に来たのは15年前。執筆のリサーチのため、ロボット工学の研究所を訪ねたときだ。「今回は、ファッションデザイナーに会うためにここにいるというわけ」。実際のところ、高橋は彼女が抱いていたイメージとは違っていたようで、「彼の想像力はロボット工学の研究所にいる人たちにとてもよく似ていると思ったわ。いい意味で、常軌を逸した風変わりな発明家のようだった」

 滞在中、ウッドは仕事中の高橋と彼のチームを観察した。そして、高橋のたくさんの協力者にインタビューも行なった。ノートに加えて、ウッドはローライフレックスのカメラを携えていた。彼女はここ数年、出会った取材対象者の多くを記録するため写真を撮ることにしている。撮影することで、「実際に、自分が何を見ているかを確かめることができるの」と彼女は言う。高橋の取材で、印象的だったのは「彼の穏やかさ」だとウッド。「これは私自身、なるべく目立たないように息を潜め、場に溶け込もうとしなかったら気づかなかったことね」

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