BY KIN WOO, PHOTOGRAPHS BY JAMIE STOKER, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
ある夏の朝、ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)でのファッションショーを数日後に控えたデザイナーのモリー・ゴダードは、ウェストロンドンのラドブローク・グローブにある自宅を出た。インコに餌をやろうと道草をくったりしながらハイド・パークをぶらぶらと抜け、彼女はロンドン南西部に堂々とそびえるV&Aへと赴いた。
28歳になるモリーは、この世界最大の装飾美術館であるV&Aに子どものころから通っていたという。「ここはロンドンのはずれにあるから、私にはいつも心落ち着く、くつろげる場所だったの」と彼女。この博物館特有の、多彩な展示品のラインナップが魅力だという。中世の宗教彫刻から中国皇帝の財宝にまでおよぶ展示品が、思いがけないインスピレーションを与えてくれるのだ。「このごちゃまぜ感が好きなんです。人々がかつて家の中で使ったり飾ったりしていた、変なものを見るのが好き」
この数日後、V&Aの新設したエキシビション・ロード棟とその中庭のオープンを祝う公式イベント「ファッション・イン・モーション」のプログラムのひとつとして、モリーはここでショーを開催することになっていた。無料で一般に公開される予定のこのショーは、約一週間のイベントのフィナーレを飾るもので、モリーの服がこの博物館に飾られるのは今年2度目になる。同博物館で最近開催された展覧会「バレンシアガ:シェイピング・ファッション」展に、彼女のデザインしたドレスが飾られたのだ。彼女のドレスは、バレンシアガが後続のデザイナーたちに及ぼした影響力を解説するセクションに展示された。