BY KIN WOO, PHOTOGRAPHS BY JAMIE STOKER, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
ややあって、モリーが足を向けたのはウェストン・キャスト・コートだ。そこに収蔵されている、世界でもっとも有名な彫刻の精巧な複製品を見て回る。ミケランジェロの「瀕死の奴隷」像やドナテッロの「ダビデ」像の前で立ち止まった彼女は、こういった彫刻が今回のショーの会場セットのインスピレーション源になっていると説明してくれた。彼女の母であるセットデザイナーのサラ・エドワーズがつくった巨大なオブジェは「輸送するために梱包された彫刻のよう」だという。
モリーがとりわけ興奮したのは、陶磁器が飾られているセラミック・スタディ・ギャラリーだ。精緻な小像や優美なデルフト焼きがいっぱいに並んだガラスの陳列棚を敬虔な表情で見つめながらいう。「こういう、ものすごく手が込んでいて、でも実用的でないものが好きなんです。どんな人たちが作ったのかなって想像するのが好き」
この日、モリーが着ていたのは鮮やかなオレンジ色のスモックドレス。自身のブランドの2016−’17年秋冬コレクションのものだ。それにスニーカーを合わせた彼女は、驚くほどリラックスしているように見えた。最近、ビジネスパートナーでもあるボーイフレンドのトム・シックルと、マヨルカ島で休暇を過ごしたからだろうか。そのシックルを除けば、モリーは自分のブランドに関する仕事を家族とともに行っている。母がショー会場のセットをつくり、グラフィックデザイナーである父がそれをサポート。妹のアリスは、モデルのキャスティングとスタイリングを担当している。