期待の若手デザイナー、
モリー・ゴダードの凱旋

Molly Goddard, a Young Design Star at Home at the V&A Museum
地元ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でショーを開催したデザイナーのモリー・ゴダード。ショー開催の数日前、懐かしい"古巣"を彼女が訪ねた

BY KIN WOO, PHOTOGRAPHS BY JAMIE STOKER, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 ややあって、モリーが足を向けたのはウェストン・キャスト・コートだ。そこに収蔵されている、世界でもっとも有名な彫刻の精巧な複製品を見て回る。ミケランジェロの「瀕死の奴隷」像やドナテッロの「ダビデ」像の前で立ち止まった彼女は、こういった彫刻が今回のショーの会場セットのインスピレーション源になっていると説明してくれた。彼女の母であるセットデザイナーのサラ・エドワーズがつくった巨大なオブジェは「輸送するために梱包された彫刻のよう」だという。

モリーがとりわけ興奮したのは、陶磁器が飾られているセラミック・スタディ・ギャラリーだ。精緻な小像や優美なデルフト焼きがいっぱいに並んだガラスの陳列棚を敬虔な表情で見つめながらいう。「こういう、ものすごく手が込んでいて、でも実用的でないものが好きなんです。どんな人たちが作ったのかなって想像するのが好き」

画像: ミケランジェロの「ダビデ」像の前に立つモリー。ここウェストン・キャスト・コートにある3つのダビデ像のひとつで、残りの2つはドナテッロ作とヴェロッキオ作のもの

ミケランジェロの「ダビデ」像の前に立つモリー。ここウェストン・キャスト・コートにある3つのダビデ像のひとつで、残りの2つはドナテッロ作とヴェロッキオ作のもの

画像: セラミック・スタディ・ギャラリーには、18世紀以降のイギリスやヨーロッパ産の陶磁器が陳列されている。 どれが一番好きかは選べない、とモリー。「だって全部好きなんだもの」とつぶやいた

セラミック・スタディ・ギャラリーには、18世紀以降のイギリスやヨーロッパ産の陶磁器が陳列されている。
どれが一番好きかは選べない、とモリー。「だって全部好きなんだもの」とつぶやいた

画像: 精緻で優美なつくりの陶磁器。モリーが愛するのはその高度な職人技術と強いこだわりで、それは彼女自身のクリエーションにも言えることだ。「すごく手の込んだつくりの、実用的でないものが好きなんです」

精緻で優美なつくりの陶磁器。モリーが愛するのはその高度な職人技術と強いこだわりで、それは彼女自身のクリエーションにも言えることだ。「すごく手の込んだつくりの、実用的でないものが好きなんです」

この日、モリーが着ていたのは鮮やかなオレンジ色のスモックドレス。自身のブランドの2016−’17年秋冬コレクションのものだ。それにスニーカーを合わせた彼女は、驚くほどリラックスしているように見えた。最近、ビジネスパートナーでもあるボーイフレンドのトム・シックルと、マヨルカ島で休暇を過ごしたからだろうか。そのシックルを除けば、モリーは自分のブランドに関する仕事を家族とともに行っている。母がショー会場のセットをつくり、グラフィックデザイナーである父がそれをサポート。妹のアリスは、モデルのキャスティングとスタイリングを担当している。

画像: 42のルック、35人のモデルを使って一日に4回開催する大規模なショーのプレッシャーにもかかわらず、モリーは比較的、落ち着いて見えた。「服のこともモデルたちのこともよくわかっているもの。だからショーはストレスにならないし、ハッピーだわ」

42のルック、35人のモデルを使って一日に4回開催する大規模なショーのプレッシャーにもかかわらず、モリーは比較的、落ち着いて見えた。「服のこともモデルたちのこともよくわかっているもの。だからショーはストレスにならないし、ハッピーだわ」

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