BY LINDSAY TALBOT, STILL LIFE BY FLORENT TANET, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
ダイヤモンド研磨職人を父に持つアルフレッド・ヴァン クリーフと、宝石商の娘、エステル・アーペルが結婚し、1906年、パリのヴァンドーム広場にてヴァン クリーフ&アーペルを創業。30年代初期には留め具を一切見せないミステリーセットと呼ばれる画期的な新技術を開発し、またたく間に王族やハリウッドスターのお気に入りに。そのひとりがマレーネ・ディートリッヒで、メゾンを象徴するデザインのひとつは、彼女のために生み出された。1937年に誕生した“ジャルティエ”ブレスレットである。
エステルの弟でメゾンの創業にも携わったルイ・アーペルが、マレーネから所有する宝石をいくつか渡され、何か特別なものを作ってほしいと頼まれたという。“ジャルティエ”は、モダンなデザインのプラチナ製ブレスレットで、バックルのついたベルト風の二連バンドにバゲットカットのダイヤモンドがパヴェ状に敷き詰められ、その上にクッションカットのルビーを配したアシンメトリーな輪が覆いかぶさる(ジャルティエとはフランス語でガーターベルトのこと)。ヒッチコック監督によるスリラー映画『舞台恐怖症』(1950)で、マレーネがこのブレスレットをつけているのは有名な話だが、翌年のアカデミー賞授賞式でも、身につけて登場している。
そして今、この“ジャルティエ”をふまえてデザインされたのが、新作“アルシュソレール(太陽のアーチ)”ブレスレットだ。オーバルカットのマダガスカル産ピンクサファイア41個(計57.98カラット)が列をなし、コーラル、ダイヤモンド、モーヴサファイアとともに8の字を描く様子は、朝焼けや夕焼けに染まる空のようだ。「ふたつのジュエリーデザインは互いに響き合うのです」と語るのは、メゾンのプレジデント兼CEOのニコラ・ボス。「“ジャルティエ”は、手作業によるクチュールの世界観を体現しています。“アルシュ ソレール”は、無限を意味するシンボルやアナレンマ(一年間、毎日同じ時刻に同じ場所で太陽の位置を観察し、その軌跡をなぞる曲線)を思わせます」。これこそまさにタイムレスというものだ。
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ヴァン クリーフ & アーペル ル デスク
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