名品の“最初と最新”ーー
ブルガリの「セルペンティ ウォッチ」

First of Its Kind, Last of Its Kind(For Now) Vol.8 ー Bulgari's Serpenti
時代を超えて人々を魅了する名品たち。第8回は、ブルガリの「セルペンティ ウォッチ」。誕生秘話からあの大スターのエピソード、そして最新作まで、ヘビをモチーフにしたデザインの今昔物語

BY MEGAN CONWAY, STILL LIFE BY JACQUES BRUN, SET DESIGN BY JULIETTE ZAKOWETZ, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

 ヘビをモチーフにしたブルガリの“セルペンティ”は、第二次世界大戦後のイタリアで誕生し、以来74年にわたり、さまざまな形で登場してきた。最初の頃のデザインには、手首に巻きつくコイル状のゴールドブレスレット─しなやかに曲がるガス管をモチーフにしたものだ─のように、うねるヘビを抽象的に表現したものが多い。最近では、毒ヘビの頭を模した三角形の文字盤を宝石が取り囲む腕時計など、ヘビのしなやかな体をより直接的に表現するデザインも見られる。今回、最新ウィメンズ・ウォッチ・コレクションの着想源になったのは、1950~60年代にかけての、ひと目でヘビとわかる大胆なデザインだ。

画像: 1970年代のブルガリの広告より。さまざまなデザインのセルペンティ ウォッチが揃う。中にはエナメルやダイヤモンドがあしらわれたものも PHOTO BY GAIO BACCI-ROMA, COURTESY OF BULGARI

1970年代のブルガリの広告より。さまざまなデザインのセルペンティ ウォッチが揃う。中にはエナメルやダイヤモンドがあしらわれたものも
PHOTO BY GAIO BACCI-ROMA, COURTESY OF BULGARI

 この時代を象徴する有名な逸話は、1962年、ローマの映画スタジオ「チネチッタ」で生まれた。アメリカ人の監督ジョーゼフ・L・マンキーウィッツによる大作『クレオパトラ』の撮影現場で、主演のエリザベス・テイラーがセルペンティ ウォッチをつけている姿をカメラが捉えたのだ。ヘビの頭にダイヤモンドをあしらったブレスレットウォッチをつけた彼女の写真は出回り、ブルガリがローマの宝石店から国際的なブランドへと発展する一助となった──そしてセルペンティは、イタリア流のとびきりグラマーな美の象徴になった。

 新作のセルペンティ ミステリオーシ ハイジュエリー コレクションには、輝かしい60年代のジュエリーを彷彿させるデザインが随所に見られる。ペアシェイプの貴石がヘビの目となり、うろこには手彫りを施したターコイズなどのハードストーン。パヴェダイヤモンドのあしらわれた時計ケースと文字盤は、蝶番式で開閉するヘビの口中に収まり、二股に分かれた舌がチラチラ出ている。極薄のヒマワリの種ほどのサイズの機械式ムーブメントを搭載したことで、より軽くスリムなボディが実現。時計ケース自体を口中から取りはずせ、ジュエリーとして単品使いも可能な仕組みだ。

画像: ブルガリの新作「セルペンティ ミステリオーシ ハイジュエリー シークレットウォッチ」より。時計ケースの素材はピンクゴールド、ブレスレット部分には、ダイヤモンド、ターコイズ、ペアシェイプのルベライト。ブレスレットウォッチ(参考商品)/ブルガリ ブルガリジャパン TEL. 03(6362)0100

ブルガリの新作「セルペンティ ミステリオーシ ハイジュエリー シークレットウォッチ」より。時計ケースの素材はピンクゴールド、ブレスレット部分には、ダイヤモンド、ターコイズ、ペアシェイプのルベライト。ブレスレットウォッチ(参考商品)/ブルガリ
ブルガリジャパン
TEL. 03(6362)0100

「今、私たちは均整のとれた美しいセルペンティを作る機会に恵まれました。新たな技術と素材が、それを可能にしたのです」。同メゾンのウォッチ製造部門でエグゼクティブ・ディレクターを務めるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニはそう語る。「とはいえ、オリジナルよりも美しいモデルを生み出すことはできないでしょうね」。ブルガリは、そのもっとも魅惑的なデザインに立ち戻り続けるのだろう。何度も繰り返し円を描くように、まさに自らの尾を飲み込んで円環になったヘビの姿のように。

PHOTO ASSISTANT: ANTOINE SIBOUN

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