BY MEGAN CONWAY, PHOTOGRAPH BY FUJIO EMURA, TRANSLATED BY MAKIKO HARAGA
ルイス・コンフォート・ティファニーが1893年に玉虫色のファブリル・グラスを発表した当時、ステンドグラスの技法は中世以来近代化されていなかった。ティファニーのガラスのランプや窓は米国の装飾美術のアイコンとなり、彼は1902年、父親が60年以上前に開いた宝石店「Tiffany & Co.」のデザインディレクターに就任した。彼の代表作《ウィステリア・ランプ》──デザインは当時の工房の責任者、クララ・ドリスコル─に着想を得たネックレスが、現在、2年以上の歳月をかけて制作中である。枝垂れ咲き、薄紫に輝く花は、ファブリル・グラスの絵画的色彩と自然主義のアール・ヌーヴォーのマリアージュだ。
同ブランドの「ブルー ブック 2022:ボタニカ」には、バゲットカットのダイヤモンドとサファイヤがチャネルセットされたリボンで花房を結んだ《ウィステリア・ネックレス》が登場する。まさにデコルテにまとうコサージュだ。藤の花のボリュームと繊細な色を再現したのは20人を超えるスペシャリストたち。3Dプリンターで蠟ろうの精巧な模型をつくり、検討を重ねた。大きさやかたちの異なる250石ものストーンをプラチナのセッティングに合うようにカットするのだ。この作業が制作の行方を左右する。
一片ずつ異なる花びらをつくるために、チーフ・ジェモロジスト(宝石鑑定士)のヴィクトリア・ワース・レイノルズは、カルセドニーの原石を36石買い集めた。この石が織りなす乳白色から青紫のグラデーションとディープ・ブルーサファイヤを使い、花のうつろいを表現。露を思わせるペアシェイプダイヤモンドもあしらう。「天然石で描いた絵画なのです」とレイノルズは言う。実物の花のようにひとつひとつの石に軸をつけ、互いにつなげているから、しなやかでつけ心地は快適だ。「末永く受け継がれていってほしい。制作中のものも美しいですが、人がまとうことで魔法のように輝くのです」
PHOTO ASSISTANT: KAY THEBEZ
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