身にまとうものには、その人の思いや考え、ときに主義や信条や、生きる時代の空気までも映し出されるもの。自他ともに認める稀代のモード愛好者、ファッションライター・栗山愛以が、自らの装いや物欲の奥にあるものを、ゆるゆると紐解き覗き込む

TEXT AND ILLUSTRATION BY ITOI KURIYAMA

 2023-24年秋冬のミュウミュウには驚かされました。ツインセットや膝丈スカート、フーディといったおなじみのアイテムを用いているのですが、アンダーウェアを透けさせたり、ストッキングのウエスト部分を見せたり、はたまたボトムはパンティ一枚だけだったりと、大胆なスタイリングによって全く違った印象になっていたのです。そして、それを纏っていたのはぼさぼさヘアにオーバル(楕円形)型のメガネ、という真面目そうな人物でした。

 パンティ一丁はちょっとハードルが高いですが、その他は新鮮なのでミーハーとしてはぜひ真似したい。予算的に手持ちも駆使するとして、まず何を手に入れたらそのムードに近づくか。検討した結果、あえてオーソドックスなメガネをかけてスタイリングのはずしにする、というポイントに的を絞ることにしました。ちょうど年季が入ったメガネを買い替えたい、と思っていたところですし好都合でもあります。

 そこでまずウェブサイトをチェックしてみると、それがメガネではなく、ブルーライトカットの透明のレンズのサングラスであることが判明しました。そしてブラウンのフレームしか掲載されておらず、入荷はまだのよう。そんなに使うかしら、ブラウンよりはブラックの方が好みだな、などと躊躇しているといつの間にか見当たらない。手に入りにくいとなると一層欲しくなってくるのが人情で、パリコレクションの取材が迫る時期だったこともあり、パリで巡り合ったら絶対に買う!と気持ちが盛り上がっていったのでした。

画像1: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.8 ミュウミュウの楕円形サングラス

 9月末から10月初めまで滞在したパリでは日中はショーや展示会の取材、ホテルに戻ってからは原稿執筆、という多忙な毎日でなかなかショッピングの時間が取れなかったのですが、ある日、展示会に向かうルートの途中にミュウミュウの路面店が。迷わず飛び込んだところ、お目当てのサングラスがディスプレイしてあったのです。が、店員さんによれば「透明レンズは売り切れた」とのこと。その頃には伊達メガネ感覚で使うイメージを膨らませていたのですが、仕方なく黒いレンズのタイプを試着することに。意気揚々と鏡の中の自分を見ると、あれ、何か思っていた感じと違う…?一瞬ひるんだのですが、次のアポイントも迫っているし、ここを逃すともう出会えないかもしれないと即座に判断。力強く「買います」と宣言したのでした。

画像2: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.8 ミュウミュウの楕円形サングラス

 試着した時のあの違和感は何だったのか。ホテルに帰り、四角形気味の顔の形に合わないのかとネットで検索してみたところ、「曲線的なオーバルのフレームをかけるとバランスがとりやすくおすすめ」とあり、オーバル型は「顔に馴染みやすく、老若男女を問わずおかけいただけます」とのこと。そこで顔に対してレンズが小さく、コミカルに見える瞬間があったような気がしたのはちょっとした角度とかだったんじゃない、いつもビッグフレームのサングラスをしているから慣れの問題じゃない、などと自分に言い聞かせてパリコレ期間中はかけ続けたのでした。

画像3: 我、装う。ゆえに我あり。
栗山愛以、モードの告白
Vol.8 ミュウミュウの楕円形サングラス

 きっとこれは、世間一般に言う「似合っていない」という現象を指すに違いありません。でも、私は好きなのにそんな理由で諦めたくないのです。気になるけどキャラじゃないから手を出さないといったものはたくさんありますが、いけそうだと思ったのに試着したらちょっと違った、という程度なら、何とかして自分に引き寄せたい。いろんな方法を駆使し、時間をかけてものにしていくつもりです。

栗山愛以(くりやまいとい)
1976年生まれ。大阪大大学院で哲学、首都大学東京大学院で社会学を通してファッションについて考察。コム デ ギャルソンのPRを経て2013年よりファションライターに。モード誌を中心に活動中。Instagram @itoikuriyama

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