バリーのクリエイティブ・ディレクターであるベロッティを形作ってきた物、人、そして場所 

BY LAURA MAY TODD, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

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 2024年春夏のデビュー・コレクションで、ベロッティは皮革製品ブランドとしての歴史に着目し、ボンバージャケット、ブレザー、トレンチコート、サマードレスなどメンズ・ウィメンズで大量のレザーアイテムを発表した。このコレクションは同時に清潔感にあふれ、実用的でスポーティというアルプスらしさのあるものだった。「スイスは精密機器、チョコレート、銀行だけではありません」と彼は言う。「理屈で割り切れない面も持ち合わせているんです」

「2年前、リスボンのアンティークショップでマルティーナが買った、17世紀か少し後の銅板に描かれた油彩画。色彩と赤い額縁が気に入っています。ローマに住んで以来、現代アートにあまり惹かれなくなりました。例外もありますが─リチャード・プリンス、シプリアン・ガイヤール、ラグナル・キャルタンソンは大好き─新しいものについていくより、時間をかけてゆっくりと掘り下げるほうがいいですね」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

「子どもの頃、我が家ではいつも何かが起こっていました。父は1階で仕事をしていて、母もとてもクリエイティブで、毎月のように家具の配置を換えていました。近所に友達がたくさんいて、サッカーなどをしていました。父の死後は女性ばかりの家で育ちました。母、祖母、姉妹。母と妹は今もそこに住んでいます」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

画像: この(ドイツ人写真家アクセル・ホーデによる)写真は、ドイツ南部の丘陵地帯で撮影されたもの。美しいマスクを被る伝統の儀式がある地域です。自然と人間が共存しているところが好きで、このマスクはすべてそういうもの(花々などの装飾品)でできています。これ(ホーデの2015年の作品集『Dusk』)をアレッサンドロ(・ミケーレ、当時のグッチのクリエイティブ・ディレクター)に一冊あげたら、とても気に入ってくれました」 AXEL HOEDT,“BUTZ,GROSSELFINGEN,”2012 ©AXEL HOEDT

この(ドイツ人写真家アクセル・ホーデによる)写真は、ドイツ南部の丘陵地帯で撮影されたもの。美しいマスクを被る伝統の儀式がある地域です。自然と人間が共存しているところが好きで、このマスクはすべてそういうもの(花々などの装飾品)でできています。これ(ホーデの2015年の作品集『Dusk』)をアレッサンドロ(・ミケーレ、当時のグッチのクリエイティブ・ディレクター)に一冊あげたら、とても気に入ってくれました」

AXEL HOEDT,“BUTZ,GROSSELFINGEN,”2012 ©AXEL HOEDT

「キャリアの初期に、(ミラノ拠点のオーストリア人デザイナーである)キャロル・クリスチャン・ポエルの下で数カ月インターンをしました。その翌年の2003年、(ミラノの運河地区である)ナヴィッリにある橋で行われたプレゼンテーションは、語り継がれるべき素晴らしさでした。『キャロルはモデルに橋の上を歩かせるのかな』と思っていたら、ひと組の靴が水に浮かび、そしてモデル全員が運河を漂い流れてきたんです。当時は巨大なコングロマリットが(ファッションを)支配しようとしていた時期だったので、独立系デザイナーがこのように表現することを詩的に感じました。彼はすべてが変わりつつあることを知っていたのですね」

COURTESY OF CAROL CHRISTIAN POELL, PHOTO: STEFAN ZEISLER

「英国のフォトグラファー、アラスデア・マクレランがバリー2023-’24年秋冬コレクションのキャンペーン用に撮ったもの(その後、2024年春夏コレクションのショーの招待状に使用)。長い一日の終わり、雨が降り始めて凍えるような寒さのなか、この3人は水中に飛び込んだんです。ある種の静寂がそこにあったことを覚えています。私にとってこのときが、バリーで迎える人生の新章の、本当の始まりだったのです」

COURTESY OF BALLY

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