バリーのクリエイティブ・ディレクターであるベロッティを形作ってきた物、人、そして場所

BY LAURA MAY TODD, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI

「フィアンセのマルティーナ(・ゼルネリ、36歳)が撮りました。2015年夏にふたりの初旅行でベルリンに行き、ブルータリズム様式の教会内にある現代アートを扱うケーニッヒ・ギャラリーで。マルティーナとの出
会いはグッチです。彼女はブランドイメージ部門勤務だったけど、みな、そこを怖がっていました。何事も彼らの承認が必要だったから」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

 バリーのクリエイティブ・ディレクターである45歳のシモーネ・ベロッティは、23年間のキャリアの大半は裏方だった。2022年10月にルイージ・ビラセノールの下でこのスイス・ブランドのデザイン・ディレクターになったときも、経験豊富で人望の厚い彼は、ストリートウェアブランド「ルード」の創業者が30歳で173年の歴史を持つメゾンを指揮するのを支えるはずだった。だが、ビラセノールが約1 年でバリーを去ると、ベロッティが脚光を浴びることになった。「うれしいと同時に驚いたし、それにちょっと緊張もしました」

 生まれたのはミラノから約32㎞ほど北、家具の生産で有名な街・ジュッサーノ。父親のロマーノは家具職人、母親のブルーナは夫を助け、真ん中のベロッティとその姉妹であるロベルタとエマヌエラの面倒をみた。「工房の機械音や羊毛の香りを今も忘れられません」。のんびりとした子ども時代だったが、13歳のときに父が49歳で急逝。「それからはあまり楽ではなかったですね」
 18歳でミラノの服飾学校イスティテュート・セコリに入学し、ファッションデザインとパターンメイキングを学ぶ。卒業後に大手メゾンでのインターンを目指す同級生たちとは異なり、彼はマルタン・マルジェラやヴェロニク・ブランキーノなど個性の強い独立系のデザイナーに惹かれていた。「アントワープ派の美学に魅力を感じたんです」

画像: 「ローマのモンセラート通りにある(アメリカ人アーティストの)サイ・トゥオンブリーの家です。毎日グッチのオフィスへ向かうときこの道を通り、この家の窓を見上げていました。60年代に(『ヴォーグ』誌に)掲載された写真を見ると、ローマの彫像があるクラシカルな家で、ゲルハルト・リヒターの絵が置かれ、ネオクラシカル様式の椅子がある─とてもモダンだしエレガントですよね」 HORST P. HORST/CONDÉ NAST/SHUTTERSTOCK

「ローマのモンセラート通りにある(アメリカ人アーティストの)サイ・トゥオンブリーの家です。毎日グッチのオフィスへ向かうときこの道を通り、この家の窓を見上げていました。60年代に(『ヴォーグ』誌に)掲載された写真を見ると、ローマの彫像があるクラシカルな家で、ゲルハルト・リヒターの絵が置かれ、ネオクラシカル様式の椅子がある─とてもモダンだしエレガントですよね」

HORST P. HORST/CONDÉ NAST/SHUTTERSTOCK

画像: 「1990年製『サーブ 900ターボ エアロ』です。アントワープにいた頃、あちこちで見たので、2002年に(ミラノに)戻ってから自分でも欲しくなって。これは3台目で2010年にパレルモで購入。でも乗るのは週末だけ。毎日の出勤には今も自転車を使っています。今朝、グッチ時代の同僚にばったり会ったら『シモーネ、まだ自転車なの? クリエイティブ・ディレクターなんじゃなかったっけ?』って。でも自転車が好きなんです。移動するにも速いしね」 COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

「1990年製『サーブ 900ターボ エアロ』です。アントワープにいた頃、あちこちで見たので、2002年に(ミラノに)戻ってから自分でも欲しくなって。これは3台目で2010年にパレルモで購入。でも乗るのは週末だけ。毎日の出勤には今も自転車を使っています。今朝、グッチ時代の同僚にばったり会ったら『シモーネ、まだ自転車なの? クリエイティブ・ディレクターなんじゃなかったっけ?』って。でも自転車が好きなんです。移動するにも速いしね」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

画像: 「スコティッシュフォールドのイゾッタ(左)と、スコティッシュストレートのコジモ(右)。イゾッタのほうが小さいけど、立場は上です。コジモは、普段はいい子なんだけど音楽を聴いているときは別。注目が自分に向いていないとわかると、スピーカーのところに行って爪をとぎ始めるんです。ドイツ製の特注スピーカーなんですよ。だから音楽を聴くときは毎回、(気を逸らすために)コジモと遊んであげるんです」 COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

「スコティッシュフォールドのイゾッタ(左)と、スコティッシュストレートのコジモ(右)。イゾッタのほうが小さいけど、立場は上です。コジモは、普段はいい子なんだけど音楽を聴いているときは別。注目が自分に向いていないとわかると、スピーカーのところに行って爪をとぎ始めるんです。ドイツ製の特注スピーカーなんですよ。だから音楽を聴くときは毎回、(気を逸らすために)コジモと遊んであげるんです」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

画像: 「住んでいるアパートのエントランスです。ミラノで家を探すとき、にぎやかでローマにいるような場所がよくて、トリノ通り近くに17世紀の建物を見つけました。『なぜ観光客だらけの場所に住むの?』とよく聞かれたけれど、こう答えてました。『ローマの喧騒を思い出させてくれるから』」 COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

「住んでいるアパートのエントランスです。ミラノで家を探すとき、にぎやかでローマにいるような場所がよくて、トリノ通り近くに17世紀の建物を見つけました。『なぜ観光客だらけの場所に住むの?』とよく聞かれたけれど、こう答えてました。『ローマの喧騒を思い出させてくれるから』」

COURTESY OF SIMONE BELLOTTI

→②以降に続く

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