BY LAURA MAY TODD, TRANSLATED BY CHIHARU ITAGAKI
バリーのクリエイティブ・ディレクターである45歳のシモーネ・ベロッティは、23年間のキャリアの大半は裏方だった。2022年10月にルイージ・ビラセノールの下でこのスイス・ブランドのデザイン・ディレクターになったときも、経験豊富で人望の厚い彼は、ストリートウェアブランド「ルード」の創業者が30歳で173年の歴史を持つメゾンを指揮するのを支えるはずだった。だが、ビラセノールが約1 年でバリーを去ると、ベロッティが脚光を浴びることになった。「うれしいと同時に驚いたし、それにちょっと緊張もしました」
生まれたのはミラノから約32㎞ほど北、家具の生産で有名な街・ジュッサーノ。父親のロマーノは家具職人、母親のブルーナは夫を助け、真ん中のベロッティとその姉妹であるロベルタとエマヌエラの面倒をみた。「工房の機械音や羊毛の香りを今も忘れられません」。のんびりとした子ども時代だったが、13歳のときに父が49歳で急逝。「それからはあまり楽ではなかったですね」
18歳でミラノの服飾学校イスティテュート・セコリに入学し、ファッションデザインとパターンメイキングを学ぶ。卒業後に大手メゾンでのインターンを目指す同級生たちとは異なり、彼はマルタン・マルジェラやヴェロニク・ブランキーノなど個性の強い独立系のデザイナーに惹かれていた。「アントワープ派の美学に魅力を感じたんです」
→②以降に続く
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