BY JUNKO ASAKA
桜満開の春、都内で最大のトピックスといえば3月29日にグランドオープンを迎えた「東京ミッドタウン日比谷」だろう。皇居外苑や日比谷公園を一望する見晴らしのいい6階のカフェにはじまり、本格志向のプレミアムレストランゾーンを謳う3階、旬のカジュアルレストランを集めた2階……と、予想以上の「食」の充実っぷり。1軒1軒、吟味して選び抜かれたラインナップで、日比谷で働き遊ぶ大人にとって、食とカルチャーのランドマークになるのは間違いなさそうだ。
1階には、朝食から深夜までの終日営業で気軽にワインや軽食を楽しめる“ガストロテック”として人気を集める、NYの「Buvette」が日本初出店。コスメティックブランド「THREE」がショップに併設するのは、コスメ同様“地産地消”や“身土不二”をテーマに掲げるレストラン「REVIVE KITCHEN」だ。グルテンフリーやビーガンにも対応したベジタリアンメニューを取りそろえる。また、六本木「HAL YAMASHITA東京本店」の山下春幸シェフが手がける、炉端焼きと関西うどんをミックスした「NADABAN」や、気のおけないビストロとして人気の代官山「Äta」と新潟のワイナリー「カーブドッチ」がコラボしたシーフードレストラン「Värmen」など、ここにしかない“ハイブリッド”な掛け合わせも魅力的だ。
そんな中、T JAPANが注目したのは、3階のやや奥まったスペースに位置するカウンターフレンチ「Restaurant TOYO Tokyo」。中山豊光氏オーナーシェフがパリで営む「Restaurant TOYO Paris」の日本初出店となる。内覧会の日は、出身地である熊本の地鶏の炊き込みごはんを海苔で手巻きにし、中山シェフみずからサーブしてくれていた。鶏肉のだしのきいたごはんと海苔の香ばしさに、思わずうなる。「この海苔は地元で姉が養殖してるんですよ」と、にこやかに語るシェフ。
カウンターに並んだ熊本産の野菜は手早くバーニャカウダに。「バーニャカウダのソースはぐつぐつ煮立てちゃダメなんです。香りが飛んでしまいますから」。“素材ありき”をこだわりとするシェフらしく、野菜もとびきり新鮮で味も香りも濃い。フレンチというよりはむしろ、フレンチスタイルで提供される和食のイメージだが、そんな定義づけもどうでもいいと思える、シンプルにして心に染みるおいしさである。
中山シェフは、熊本から大阪の料理専門学校、神戸の老舗フランス料理店「ジャン・ムーラン」を経て、94年に単身渡仏。フランスで料理人として働く中で、日本人として改めて日本料理を学ぶ必要を実感し、パリの日本料理店で働くようになる。そこで出会ったファッションデザイナーの髙田賢三氏が中山シェフの味にほれ込み、専属料理人にスカウト。氏が招く世界各国からのゲストをもてなすという重責を担うこととなった。その後、2009年にオープンした「Restaurant TOYO Paris」のエントランスには、髙田賢三氏が描いた中山シェフの肖像画が飾られている。
そしてこのたび東京店を率いるのは、パリで中山シェフに師事し、和とフレンチを軽やかに融合する独特のスタイルを学んだ大森雄哉シェフ。ムダな要素をそぎ落とし、食材本来のうまみを活かすーー言うは易く、行うは難いこだわりのミニマリズムが、中山シェフのふるさと、日本でどう生かされるのか。新しい食のワンダーランド、「東京ミッドタウン日比谷」ともども楽しみでならない。
Restaurant TOYO Tokyo
住所:東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 3F
営業時間:ランチ11:30~14:30、ディナー17:30~23:00 無休
ランチコース¥5,000~、ディナーコース¥15,000~
電話: 03(6273)3340
公式サイト